#001 栄光の手 2
「絶滅収容所跡地を店舗に使っている奴は初めて見た」
フードによって、頭をすっぽりと包んだ男は、楽しげにそいつを見ていた。
小柄だが、異様なまでの威圧感を放っていた。
元は青かったが、灰に近い薄汚れたニット服に、色褪せた長ズボンを身に付けた店の主の名はデス・ウィングといった。長い髪に、胸と腰の大きな体型の女だった。汚らしい服装は、まるで自身の容姿を嫌っているかのような印象を受けた。
デス・ウィングは、長くて汚い金髪を弄っていた。
「人間では無い者達が、よく此処に来ますからね。そういう方達が好むような場所が結構、お客様を呼ぶんですよ。彼らは血と死の匂いを欲するから。……貴方と同じような。ああ、でも、他の場所でも、フリーマーケットに使われたりするんですよ。共同墓地とか、地下教会とか、ほら、此処のように沢山の者達を虐殺した場所とかを。店を作る土地は、店の主のセンスが試されますからね」
彼女は唇を歪めていた。新しい客が、何を手に取るのか、興味深そうにしていた。
「それで、何をお求めで?」
「骨が欲しい」
「骨、ですか?」
「俺は骨の収集家だ。あらゆる生物の骨を手に入れているし、あらゆる職業や階層の奴らの骨を自室に飾っている」
彼の二つの眼は真摯だった。
「欲しい骨とは?」
「病原菌に感染した骨だ。それでナイフを創る」
「そうですか。では、×××の都市を食い荒らしたウイルスを補完した瓶とかはどうですか? 犠牲者の死体の部品入りですよ」
「良いな。それが欲しい。骨は付いているんだろな?」
「ええ」
店の奥には段ボールが積まれていて、内装も整えている最中だ。つい、最近、此処に引っ越して、商売を始めた、といった趣だった。
フードの男は、店の中で幾つかの品物を物色すると、それをカウンターへと持っていく。
目当てのモノが見つかり、しばし陶酔しているみたいだった。
デス・ウィングは、ふと、気まぐれを起こす。
「貴方のストーリーに興味が湧きました。私も近くで観ていていいですか?」
「ほお」
男はとても楽しそうだった。
「闇の骨董屋。お前程の者が、俺ごときに興味を持つのか? それは至極冥利に尽きる」
「ええ、楽しいものが観れそうですから」
店の主は、心の中にある黒い感情を、まるで隠そうともしていないみたいだった。
男はカウンターに、数枚のカードを置く。
それは絵柄こそ違うが、全てが死神を暗示するタロットのカードだった。
「名刺代わりだ」
「ありがとうございます。でも、これ、売り物にしていいですか? 血の匂いがするので。欲しがる人がいそうだ」
「……失礼な奴だな。まあいい、好きにしろ、高値が付くかもな」
彼は、特に、気分を害する事もなく、どちらかというと、半ば上機嫌のようだった。
男が店から出ていった後、彼女は死神のカードを眺めていた。
どのカードにも、ベレトという名が書かれていた、彼の名前なのだろう。
職業も書かれている。
怪盗、ベレト、と……。
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