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オーダー -封印の鳥篭-  作者: 朧塚
17/24

#004 黄金の遺跡 3

『黄昏の大祭壇』。


 地元の住民達からはそう呼ばれている。

 何かの文化の遺物なのだろうが、その研究は進んでいない。

 次元共通語が通じない区域だ。翻訳本も持ってきても、この地元の住民の言葉はよく分からない。ただ、遺跡には近付くな、という強い警告は行われる。

 この辺りは、昔から忌み嫌われていたらしい。よく近付いた人間がいなくなるのだと。

 メンバーは、近隣の村人達からは、充分な情報は手に入った。

 能力者の大きな功績の一つは、あらゆる文化、国家間において、更に多次元世界において、共通の言語を創った事だ。それは、世界中に、多次元世界中に広がっている。おそらく、この功績を行ったのは、神に類する力を持った者だろう。

 白いハトが、遺跡の入り口に止まった。

 まず、テラリスが遺跡を探索する事となった。

 援護として、オブシダンが、自分の獣達を送った。



「罠らしきものは、特に確認出来ないな」

 テラリスは通信機にて、他のメンバーと通話していた。

 彼の持つ通信機は、各々に電脳上でメッセージを送信、受信出来る機械だった。リアルタイムで、それが可能だ。たまに、不調を起こして、雑音が混じるのが玉に(きず)だが……。

<何か生命の気配は無いのかしら?>

 花鬱がメッセージを送信する。

<今の処、特に無いですね>

 テラリスは返す。

<もう俺様が突撃していいのか?>

 ゴードロックは相変わらず、血気盛んだった。

 テラリスは、遺跡に描かれた文字を解読しようとしていた。

 トーテム像のようなものも並んでいる。

 彼は入口付近にまで近付いていく。

<何か嫌な予感がするわ。テラリス、戻った方がいいかもしれない。後は無人兵器として機能する、私の獣達に任せて>

 オブシダンがメッセージを送信する。

<もう少しだけ入り込んでみます>

 テラリスはみなに告げる。



 テラリスは、仲間達を出し抜く事を考えていた。

 フルカネリの力を手にしたい。それが彼の目的だった。

 そもそも、メビウスなどのようなものに仕えていても、前途は有望では無い。ならば、もっと権力に焦がれるべきなのだ。彼はそのように考えていた。

「ピラミッドの内部とかって、こんな感じだよなあ……」

 彼は一人、呟く。

 周辺に罠が無いか、自らが召喚したハトを飛ばして、感知していく。

 後ろには、オブシダンの豹型の獣達が待機していた。

 ハトは震えていた。

 テラリスは、自らの軽挙妄動に気付く。……手遅れだった。

「ああ、クソォオオオオオオオォッ!」

 彼は悲鳴を上げて、遺跡の外へと引き換えしていった。

 濁流のように、その液状のものは、彼と、オブシダンの獣達を襲っていく。



 双眼鏡を手にしながら、遺跡から離れた場所で、栄光の手のメンバーはその光景を眺めていた。

 遺跡の入り口に、深緑色の液体が流れていき、小さな河を作っていた。

 中には、テラリスがいた。彼の全身が液体に絡め取られている。そして、徐々に彼の身体は、服は、溶解していき、テラリスは苦しみと救援の声を上げながら、内臓をブチ撒けて、骸骨化していき、ついには緑の液体と同化していった。オブシダンの獣達も同じ末路を辿った。

 栄光の手のメンバー達は、それを見て唖然としていた。

 きっと、大災害で、自らの家や街が、一瞬にして押し潰されたら、こんな感覚に陥るのではないだろうか。

 ゴードロックは怒り狂っていた。

「ああ、ふざけやがって、また仲間が戦死……、ああ、クソがぁあああぁっ!」

 彼は、ミキシングの時と同じように、我を失っていた。

 どうやら、緑色の液体は生きているみたいだった。

 軟性の身体を震わせながら、また、遺跡の奥へと戻っていく。



 ベレトは、更に遠い場所から、小型望遠鏡を使って、その光景を眺めていた。

 そして、露骨に蔑みの視線を送る。

「馬鹿だな。しかし、『グリーン・スライム』か。それもかなりの大型の……」

 ベレトは、自分だったら、引っ掛からないのに、といった顔をしていた。

「グリーン・スライム?」

 傍らにいたデス・ウィングは訊ねる。

「知らねぇのかよ? アメーバ状の生物で触れたものを溶かすんだよ。おそらく、別世界から持ってきたんだろ」

「ああ、文献で見たような。私も一つ欲しいな。瓶の中に詰めて売ろうか」

「売ってやれ。いっそ、買った奴を喰う仕様したらどうだ?」

「いいな、それは。だが、悲惨さをより良くする為に、購入者ではなく、購入者の家族や友人のみを喰らう、という仕掛けを仕込んで売った方がより面白いだろうな」

 デス・ウィングの言葉を聞いて、ベレトは腹を抱えて笑った。


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