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ただのトラック転移で異世界観光  作者: 都築優
भारत गणराज्य (Republic of India) currency:India Rupee(INR/Rs) rate:1.5/JPY
21/35

一人遊び

 プリーでは一週間ほど過ごした。

 主に療養の為だ。


 高いビルがない。道の両脇には掘建て小屋のお店が並んでいる。

 その道路も舗装されている場所はほんのちょっとしかなくて、土埃の舞う砂利と土の、瓦礫も牛糞もわからないようなダートが続いていた。

 オート力車の呼び込みはガイドブック通りコルカタよりも穏やかで全然しつこくない。

 断ればすぐ諦めてくれる。


 都心にいる牛や鶏と比べて、田舎にいる奴は不潔さを感じないのは不思議な事だ。

 野良犬は相変わらず道で寝ている。

 暑いのでみんなやる気がない。


 宿まで2キロ程の道のりをてくてく歩いていたらスクーターに乗ったおっさんに話しかけられた。


「日本人か? ああ分かってる、日本人がいつも行く宿に向かってるんだろ? 遠いぞ、乗せてってやろうか」

「えー? 何で」

「えへへ、その代わりちょっとうちも見ていってくれないか。うちも宿をやってるんだ」

「うん分かった」


 直感だが、悪い奴じゃなさそうだ。

 二人乗りでそこに向かう。背負ったシートバッグが重いのでウィリーしそうになりながら。

 その宿に入ってみるとなかなか綺麗だった。


「150ルピーだ、泊まっていってくれないか」

「Wi-Fiは使えるの?」

「もちろんだ!」

「決めた!」


 パスポートのコピーがいると言われてそれを近くのプリントセンターで5ルピーで印刷する。

 いわばインドのフェデックスキンコーズだ。建物はあばら家で、昔の駄菓子屋のような雰囲気。他にエアテルとかいう携帯のSIMも取り扱っているようだ。

 ボロボロの小さなスキャナ付きプリンターで、何枚も失敗しながらやっとコピーを手に出来た。


 それを渡して無事にチェックインをすると、それから部屋にこもって薬草の堪能を始めた。

 部屋は二階でシャワーは別室。ダブルベッドに真っ赤なシーツ。

 テーブルと椅子も置いてあってそこそこ広い。

 後々に聞いたらプリーには政府公認のガンジャショップがあって激安価格で買えるらしいがこの時はそんな事全く知らなかった。

 引きこもってたまにご飯を30ルピー程で食べに出る。


 宿のおっさんはWi-Fiのパスワードを教えてくれなかった。


「Wi-Fiはプラス50ルピーだ」

「そんな事言ってなかっただろ、じゃあいらん!」


 パソコンを出してソリティアで遊ぶ。

 7000円くらいで大阪は日本橋で買ったボロボロのネットブック。ドライブはなかったので2000円の64GBSSDをぶち込み、OSはlinuxをインストールした。lubuntuのバージョン14.04LTS、コードネームはTrusty Tahr、頼れる塔爾羊(ヤギ)。wineを入れてあるので糸だって使える。

 何より一番大事な点は、これ位なら壊れたり盗まれたりしても諦めが付く所だ。


 タイで追加投資してメモリも2GBにしたが全然早くはならなかった。ブラウザが落ちる回数が減っただけだ。


 HPmini5103というモデルで、見た目はなかなかいい。CPUも一応は2coreでHT、ハイパースレッディングテクノロジーも可能な64bitOS対応品なのだがAtom N550という重くて遅い省電力タイプ。なのにアイドル状態のcore i3と消費電力が変わらないという、図体は大人で頭脳は子供の逆コナン君みたいなかわいい奴だ。


 ひたすらソリティアで時間を潰す。

 療養なのだから仕方ない。

 腹痛や発熱はほぼ回復していた。

 しかし実はこの時、新たに痔を病んでいた。


 原因は水下痢と、おそらくは薬草のせいだ。


 薬草が本当は身体によくてむしろ健康になるなんて話もあるが、この点だけは譲れない。

 痔になる。

 そういえばたぬ吉ポン太くんもゴアで痔になって手術しようとしたと話していた。しかし費用が高額過ぎたので諦めたらしい。

 だいぶ出てきてしまい、悪化して、鬱血して、座るのもままならない状態だったという。日本で保険を使って治すそうだ。

 目が赤く充血するのも薬草の作用なら、肛門の粘膜がそうなるのも自明の理だ。

 煙を喫って咳き込むのを我慢する時に腹筋に力を入れるのも良くなかったのだろう。


 オロナインを塗って優しく体重を掛けないように保護するが息をするだけでひりつく。


 涙目になる。


 日本でなった時は温かいお風呂に入るのが一番の回復法だった。

 それも長風呂。患部を温めて血流を促し、鬱血を引かせるのだ。

 すると一週間程で炎症が引いて行く。


 だがここはインド、しかも安宿。水のシャワーしか出ない。

 ただでさえ暑いので温水なんて無駄設備は全然用意されていない。


 うだるような熱波の中、半裸で部屋に篭り肛門の痛みに耐えながらソリティアをする。

 一体何がしたいんだ、お前はインドくんだりまで来て。

 自問自答しかけてやめる。

 それは聞いちゃあいけないよ。

 今は傷が癒えるのを待つ時だから。


 部屋は屋根に直射日光が当たるせいかどれだけファンをぶん回しても暑い。

 コンクリート造りの建物は熱を保持するので夜になってもずっと暑い。

 インドの本気を楽しめる素敵な宿だった。

 二日程して、出ようとすると引き留められた。


「何でだ。何が気に入らない」

「だってWi-Fi使えないじゃん嘘つき!」


 と言うと、


「分かった、パスワードを教えてやる」


 とやっとインターネットが使えるようになった。

 もちろん追加の50ルピーなんか払う気はゼロだ。

 プリーの日本人宿は300ルピーらしいので、ざっと半額。ただし向こうは朝食夕食チャイ付きだ。それを差し引いて、暑いのに目をつぶればまあ安い。

 どうせ移ったって寝て暮らすだけだ。

 どこだって変わらない。


 jyoti prakash mohapatraくん22歳の話をしなければならない。

 彼は宿の主人の兄弟らしくて、紹介されると日本語を知っていると自慢気に話しかけて来る。


「イッツメチャメチャテイスティアンドヤスイヤスイネ」


 みたいに喋る。


「ウィーキャンメイクスシ、マグロフロムオーシャンアタラシイ」


 どうやら食事を作ってやるから金を払えと言っているらしい。分かりにくい上に鬱陶しいことこの上ない。


「オンリーワントゥエンティサカナタベル、エニーアザレストランタカイアタラシイナイ」


 120ルピーもぼったくる気でいるらしい。


「あほか要らんわ!」


 うんこまみれのビーチに気分転換にタバコを吸いに出る度に、たむろしているjyoti君とその友達に集られる。

 砂浜を歩いていると付いてくる。


「アイキャンエイゴオシエテヤル、インディアランゲージオルソー、ドゥユーノーヒンディー?メチャメチャベンリアンドイージーアユオーケー?」


 英語と半端な日本語がそれこそメチャメチャに混ざりあって分かりにくいことこの上ない。

 砂浜に座って一服していると、彼は勝手に身の上話をし始めた。


 要約すると、大学でバイオロジーを勉強中、父が交通事故で死亡して夢を諦めざるを得なかった。


「へー、苦労してんやねー」


 適当な相槌を打つと彼は遠い目をして、でも今は現実を受け入れた。仕方のない事さみたいな事をメチャメチャ頭の悪そうな喋り方でメチャメチャのたまう。

 こっちまで頭が腐ってきそうだった。


 そして、ピンクの安っぽいミサンガみたいな腕飾りを出して来て、プレゼントすると言うのだ。

 何と言うのか忘れたが、『俺のものはお前のもの、お前のものは俺のもの』みたいなヒンディ語を教えてくれながら。


 何だそりゃ。


 だ、だって僕男の子だよぅ、とでも言えと言うのか?


「いらんいらんいらん! 全力でノーセンキューだ、アイメチャメチャヘイトブレスレットだコノヤロー」


 婦女子ターゲットのBL要素を加える為に、ここでポッとかしたふりをしておくべきだったか?

 後悔はしていない。


 ついでにタバコを一本たかられた。

 俺のものはお前のもの、と。

 帰る途中にjyoti君の家の前を通ると、チャイをくれてやるから待てと言う。

 そして次に彼は夢を語りだした。


「ワタシニュードリーム、チャイカフェレストランハジメルゼア」


 途中でイライラが限界に来て、せめて英語だけで喋れと怒鳴りつけて了承させたが、しょっちゅうメチャメチャだとかヤスイだとか挟むのをやめる気配がなかった。


 これこそが多重亜言語話者の障害か。まともなコミニュケーションの取れる気がしない。ヒンディならちゃんと喋れるんだろうか、それも少し怪しい。


 苦心して解読すると、彼の新しい夢はここでチャイ屋さんを始める事だが、その為には政府の許可を得る為に2000ルピーもの大金が必要なのだそうだ。


 どこのブスが騙されるねん、と思ったがその型に嵌めるトークとやりくちにどこか手慣れたものを感じたので、もしかしたらあほの転移者の何人かはこの噴飯ものの茶番劇に落とされたのかも知れない。異世界は広いのだ。


「すてき! jyoti君、私応援するわ! 2000ルピー位なら私今持ってる。これを使ってその夢を叶えてちょうだい、とか。

 どこのスウィーツやねん!」


 俺の感じている苛立ちと嫌悪は彼には伝わらない。


「お前バカだろうけど、本当にそれしたかったら頑張ってお金貯めろよ。俺だってトラック運転してすごい節約して転移したんだから。

 まあお前がカスなら何を言っても無駄だろうけど」


 日本はメチャメチャお金持ちの国だから、お金を稼ぐのはメチャメチャ簡単だろうみたいな事をまだほざくのでいい加減無視した。


「お前何喋ってんのか全然分かんねーわ」


 窓枠に座って大分待つとチャイが出てきて、睡眠薬が入っていないかチビチビと味見しながらそれを飲んで帰った。


 翌日、いい加減レストランにも飽きてきたのでお魚カレーを作れと彼に言うと150ルピーだと言う。


「何で値上げしてんだよ」


 魚が高いからでもメチャメチャ新鮮で、美味しいのでそれ位掛かって当然だ、と彼は言う。


「じゃあいらねーよバカが」


 やれやれ仕方ないというように彼は言う。超訳すると、


“分かった、頑張って120で何とかしてみる。夕食の時間まで待っていてくれ。あと俺のお母さんは昔ホテルで料理人をしていたんだ、日本語だってペラペラさ”


 クソ不味かった。

 夕方彼の家に向かうともうすぐ出来ると言われ家の中で待つ。

 その間に、日本語を勉強しているんだ、とノートを持ってきて見せてくれる。

 

 何のお絵描き帳だろう、落書きにしか見えない。たどたどしい字でかろうじてひらがなに見えなくもない文字と、上にヒンディが書いてある。


 それを読み上げる彼に適当な相槌を打ちながら料理の出るのを待った。


 やっと出てきたお魚カレー、テーブルも何もなくて地べたに直接皿を置いて食べる斬新なスタイル。

 せめて板切れでも敷こうよ。

 そしてそれはこの世のものとも思えない不味さだった。彼がこんな性格になってしまったのは、虐待ともいえるこの食生活がその一因だったのではあるまいか。誰でも作れるようなチャパティもガシガシで不味い。しかも120ルピー取っておいてこれか。

 30も出せば美味しいエビのカレーがお腹いっぱい食べられるプリーの町だというのに。

 頑張って半分ほど食べて、


「ありがとう」


 と、とりあえずお礼を言うとまた、超訳


“水臭え事言うなよ、俺の物はお前の物、お前の物は俺の物じゃねーか”


 みたいな事を言ってきた。

 不味いのは百歩譲ろう。だがそもそもお前お金取ってんじゃねーか。

 心で怒鳴りつつ日本人の特技、顔では微笑んで、俺は優しく言ってあげる。


「OK、じゃあお礼にそれの日本語教えてあげるよ」


 ジャイアン語録を、ヒンディー語で真剣な眼差しでノートにしっかりメモするjyoti君。

 発音練習では、彼のお母さんも一緒に暗唱してくれた。


「「オレノ、モノモ、オレノモノ」」

「うん多分若い日本人にはうけるよ」


 嘘ばっかり言うインド人に図らずも本心を言わせてしまおうという俺の秘めたる野望が一つここに遂げられた。

 願わくばバカな転移者が次にそれを聞いた時、間違って訂正などしてしまわないようにという事だが、おそらくはそれも望み薄だという気がなんとなくした。


 ちなみにjyoti prakash mohapatraというのは彼が俺にフェイスブックで探せと言って今執筆している同じ魔導通信機のメモ帳アプリに直接入力したものを一文字も変えずにそのままコピペした貴重な文字列で、今回以外は触れてもいない。

 彼に何か御利益があると嫌なので決して友達検索などしないようにお願いしたい。



 さて、皆様お待ちかね、癒しのラブラブわんこタイム。


 宿の前にいつも寝ているラブラドールそっくりの黒犬がいて、こいつがメチャメチャ人懐っこい。

 俺の姿を見つけるやいなや、すり寄ってきて頭や横腹を擦り付けてくる。

 ペロペロ舐めてくる。

 狂犬病が怖いので舐めるのだけはやめさせる。


 宿のおっさんに聞くと、彼女はここいらあたりの犬の間で一番の美人で、モテモテなんだそうだ。

 確かに似た子犬をたくさん見た。


 暑さにダレていつも寝ている犬たちだがただそれだけではなく、ここプリーではそこら中で盛っている。

 寝ている雌犬の近くに不細工な雄が寄って行って交接器の匂いを嗅いだり自分の生殖器を近付ける。すると雌はすっと腰を上げて受け入れる。

 あまりにもあけすけに事は始まり昼日中から道路のど真ん中で繰り広げられる。


「もうええっちゅうねん」


 至る所で、ラブラブわんこ。


 町中で産まれたての子犬がゴミを漁っている。全員がまともに成長出来るとはとても思えない。


「何でこんな所で産まれちゃったんだろう」


 彼の気持ちを代弁したつもりになって言った。しかしそれは正確ではなかった。

 きっと自分の思いを勝手に押し付けて分かったようなつもりになっているだけだ。

 本当は、そう感じているのは間違いなく俺自身なのだ。

 衣食住完備の日本の室内犬は、去勢されて躾けられて変な芸を押し付けられて、それでも幸せなんだろうか。

 ミツバチみたいな服を毛皮の上に着せられて。

 だが、かわいい。

 幸せの相対値なんてないのだ。




 宿のおっさんは昨日から、この部屋は暑くないか? もっと涼しい部屋が隣にあるから移らないかと勧めてくる。面倒臭いからその度に断っていた。

 とうとう観念したように、


「実は今日から下水管の工事をするんだ、水道もシャワーも使えなくなるから、頼むから一日だけ移動してくれ」


 最初からそう言えばいいのに、インドでは何か因縁を付けられて宿代を負けさせられるリスクでもあるんだろうか。

 仕方なしに荷物を纏めて嫌々ながら移動する。別にお金の事なんて言わない。

 あと、追加でWi-Fi代が50ルピー欲しいんだけど、とまだ諦めずに言ってくる。


「No」


 と軽くあしらう。だって最初から言ってたじゃん。何も悪い事はしてない。


 部屋は汚かった。

 だが、前の部屋と比べて格段に涼しい。


「何だこの違い」


 快適すぎる。また戻れと言われても断ろう。広く開いた窓、その外からはラジオだろうか、ウーハーの効いたインド音楽が流れてくる。野良犬も吠えている。山羊も。

 

 じゃあ、ビールでも飲みに行こう。

 インドではお酒はマリファナよりも格段にいけない悪徳だそうだ。しかし合法ではあるので町の隅にバーがこっそり店を構えている。

 詐欺師のjyoti君の友達が場所を知っていると言うので教えてもらう事にした。

 彼はたかる気満々でニコニコだ。

 仕方ない、必要経費の情報料だ。


 薄暗い、牢獄のような場所だった。

 そこで隠れるように飲酒する、心暗い目をしたインド人たちはみんな悪そうだった。

 凶悪そうな雰囲気だという意味ではない。

 俺たちこんな悪い事しちゃってるんだぜ、といういわば闇の飲酒者ダークネス・ドランカー的な中二くさい悪さだ。

 1瓶80ルピーで、赤いキングフィッシャーストロングというビールを2本買った。


 牢獄の一室にあるテーブルと椅子に腰掛け、王冠を開けたビールをジョティ友と乾杯する。そのままラッパ飲みに口をつけて、一息。


 ん、不味い。


 そして環境もとても不快だった。

 床も湿っぽいし、清潔感もない。


 相席になった別のインド人が喋りかけてきて、聞けば何と日本人宿で働く料理人だという。


 実はせっかくなので暇つぶしに一回だけ覗きに行っていた。

 見せてもらった部屋は狭く、ベッドしか置けない程だったし、そこに居た日本人もあまり仲良くなれそうにない雰囲気だったのですぐ帰った。


 実際はどうなんだとその料理人に聞く。


「Like a jail」


 牢獄のようだ、と言われた。

 狭い部屋に時間制の食事、誰もが逃げ出せるけど逃げ出さない。

 そういうものが好きな日本人の性格は何かわかる気がした。

 だがインド人には分からないのだ。


 外で盛る犬。

 籠の鳥。


 俺も何となく行かなかったが、中は安全そうできっと詐欺師の手にも掛からない。

 慣れ親しんだ安心できる苦痛の方が、人は初めての不安な快楽よりもむしろ好んでしまうものだ。

 インド人にとってはこうだし、日本人にとってはそうなのだ。

 お互いにきっと永久に分かり合う事なく、彼はそこで料理を振る舞い続けるのだろう。

 飲み干すとすぐに外に出た。

 ジョティ友のインド人はもう一杯くらい飲もうぜと誘ってくるがうるさいと無視した。

 吐き気が込み上げてくるのは酩酊の所為ではない。

 ビールの後味の悪さと、決して痔のせいだけではないケツの座りの悪さと、自分がどこにいるのかが分からなくなったようで、早く帰ってソリティアを再開しないといけないから。それだけだった。

 帰って魔導通信機にWi-Fiを繋ぐとオリンピックでカンボジア代表の選手がブービー賞だったという下らないニュースが糸だかフェイスブックに流れていた。


 カンボジアには行ってないな、と心のどこかで思いながら眠りに落ちてゆく。

 所属する国籍や言葉を変えたら居場所の見つかる人がいるのだろうか。

 異世界に転移や転生をしたら、そこで頑張ってチートハーレムを作って喜べるんだろうか。

 俺はそんなの詐欺師の嘘以上に悪質で、大嫌いだって気がした。

 どんな駄目犬でも産まれたこの最低の世界を仕方ないのだと受け入れて、どこで野垂れ死んでも構わないと自覚して生きている。

 何を言えどカスならば無駄だろうけれど、今いるここにしか居場所なんてなくて、心の痛みや痔の痛みに耐えながら、糞みたいな神だとか奇跡なんかに甘えないで一人で耐えて、出来るならば解決していくしかないのに。

 だがそれは、きっと自分の状況こそを誰か人に投影して、それを批判していい気になっているだけだ。

 本当はカスとそう感じているその相手は間違いなく俺自身の事だった、それに気づけないでいる……。


※予告※

傷はまだ癒えない。しかし目的の為、旅立ちを余儀なくされた彼の運命の行方。

再出発してすぐのその場所で、とうとうインド人に完全なる敗北を喫する事となる。


次回『魚心水心』怪魚? なにそれ美味しいのッ!?

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