コルカタで食べたカレーは甘
投稿が遅くなったお詫びに異世界の動画を載せますね。牛の装飾品がいい味です
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インド人。ざぶざぶと、水の中を歩いて進むコルカタの道。
まあこんなもんだろう、インドなんだし。
車道は完全に水没している。昨日まで続いた長雨の所為だろう、知らんけど。
前を行く自転車のインド人はびしょ濡れだ。これでおっさんでさえなければ。
濁った水。牛のウンコだとか犬のウンコだとかがプカプカ浮いている。
さすがにインド人のように水中を行くのは遠慮して、小高い歩道の水の届かないギリギリのところをスーパーマリオよろしくジャンプとBダッシュで進む。
背負った荷物が肩に食い込む。
2時間ほど、多分こっちがコルカタ市内だと検討をつけた方角に進むが、さすがに途中で不安になってくる。
限りあるチート能力、Wi-Fiが通じないインドだ。16キロをまっすぐ歩ければいいが、迷ったら更に距離が増えてしまう。
さすがに4時間以上歩くのは疲れるかもしれない。
まだ夏で、喉が渇いたのでペットボトルが売っている売店を覗いた。
手持ちは200ルピーそこそこ。
1リッターの水を指差して、そろそろとまず10ルピーから差し出す。
まだか。
まだダメなのか。
もう一枚10ルピー札を出すと、店主のおっさんは首を横に振った。
えっ?
航空機の軌道、マニューバで言えばヨーではなく、ローリングと言えば分かるだろうか。
普通の『いいえ』ではなく、首を水平に回転軸に対して左右に、起き上がり小法師のように降るおっさん。
えっ? ええっ??
ええのんかあかんのか、分からない。そのままペットボトルを取って、でも何も文句言われなかったので20ルピーだったんだと思おう。
違っても知らね。
そのままずっとずっと歩いてやっと水も引いて、川とか歩道橋を渡って団地を過ぎて高級住宅街みたいなところを通って自分が今何処にいるのかここがインドの何処なのか本当は何がしたいのか誰がこれを見てくれるのか、とうとう分からなくなった頃にやっと人に聞くことにした。
「おっさん、コルカタ市内どっち?」
「そんなのええから、このシャッターを開けたいんで手伝ってくれんかのー」
ボロい商店、多分CDとかDVDを売ってる店だ。
「それは別にいいけど」
手伝うと、
「ありがとう。じゃあな」
それだけだった。
別の人に聞くと、
「バス使え」
「いや、歩いて行きたいんだけど……」
「ありえないよ。悪いこと言わないから210番のバスにお乗り」
と、要領を得ない。
サブウェイ、と言っても地下道とか地下鉄という意味じゃなくて普通のファストフード店。日本にもある奴を見つけて、きっとここなら流石にWi-Fiだってあるだろうとあたりをつけて、入ってサンドウィッチを頼む。
「Wi-FiのIDとパス教えろ」
「ないよ、んなもん」
「えー、金返せ」
無駄に80ルピーを消費した、それだけだった。
全くインドは意味が分からない。
それから誰に聞いても何故か、
「210番のバスに乗りな」
としか言われなかったので、もうそういうアレだと。ゲームとかでよくある、なんかのフラグが立ってそれ以外の行動が出来なくなってしまった奴だ。そう思って停留所の角で待って言われた奴に乗った。
揺れる。
クラクションを、たまに止める。
たまに鳴らすのではなくて、たまに止める。
激うるさい。
頭がガンガンするくらいクラクションを鳴らしまくる。
で、なおかつ遅い。
渋滞でもないのに空気を読まずにガンガンくる他の車に、一歩も引かずにガンガン行くバス。
当然、どっちもぶつからずには進めないので、どっちもビビってスローペースで徐行。
結果、劇遅。
歩いた方が早かったと歯ぎしりしながら、バス代17ルピーを車掌さんに払う。
なるほどね。
インドちゃん、君なあ。
覚えているだろうか。
ビショビショに下半身を濡らした二次元アニメ顔のインドちゃん、俺をこんな所まで呼んだ奴だ。
褐色の肌で澄ました顔をして首を水平に振っている。
手を、掌をそのぷりっとした胸の前で合わせて、素知らぬ顔をして。
どうやら、歓迎してくれているようだった。
※予告※
右も左も分からない異世界で、異邦人はただ一人街を行く。甘いチャイと甘くない現実。
次回『あの犬の悲鳴を君は覚えているか』きゃんッ!