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ただのトラック転移で異世界観光  作者: 都築優
อาณาจักร ไทย (Ratcha Anachak Thai) currency:Baht(THB/฿) rate:3.0/JPY
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やるか逃げるか

英語の授業が忙しくってーと言い訳。

本当は怠けているだけです。

ごめんなさい。


 奥深くにシムカードを突っ込まれて出てこないタブレットを前に嘆くフランス人と、しれっとしているインド人。

 原因を作った俺は一体どうしたら……。


 ま、いっか。

 悩んでも仕方ないし。


 すぐに気持ちを切り替えた。

 悲しそうなフランス人、名前をアランと言うらしい。アランドロンのアランだそうだ、自分で言っていた。彼が明日買ったところにもう一度行ってみるよと言ったので、


「分かった。俺も行くわ」


 さすがにそれは責任があるので、付いて行くことにした。

 本当に治るのか一晩どきどきしながらビールを買ってきて飲んだり辛いラーメンを食べに行ったりなかなかに辛い時間を過ごした。

 熟睡して翌朝、8時過ぎくらいにアランが用意をしてるので、


「まだやってないでしょ」

「バスがすいてるから」

「まあいっか」


 で、バス停まで行く間に物乞いとガチバトルを始める、アランは飽きさせない。


「お前みたいな奴にめぐむ金はねえ!」

「お前みたいな奴ってどういう事だ、訂正しろ! 謝れ!」


 彼は観光客を食いものにする現地人が本当に嫌いなようで乞食にダーティワードを吐きまくる。乞食も激おこでバス停まで延々と付いてきてひたすら文句をいう。


 きっとアランはタブレットが壊された怒りを別の所で発散、八つ当たりしてるんだろうと俺は苦笑い。

 乞食がやっと去って乗ったバスは運良く無料の奴だった。政府の方針なのかもともと安い運賃を、ラッシュのなか徴収するのも徒労だしとタイにはたまに無料の奴が走っている。

 20分ほどでビル街について、買ったお店はまだやってなかったのでふらふら歩き回ってアランのうんちくを聞く。

 あのビルがあーでここの店が美味くてどうこう。


「コンビニに入ってジュースを買おう」

「いいね、俺は腹減った」


 アランに急かされて何も食べずに出たのでカップ麺でもいいから食べたかった。

 異世界と言っても東南亜細亜近辺の王国にはセブンイレブンがある。

 ただ、セブンイレブンしかない。

 それに高額紙幣だとお釣りがないから売ってくれなかったり、トイレも貸してくれないし、お酒が時間制で販売不可だったりとあまりコンビニエントではない。

 それでもお湯もくれるしトムヤンクン味のカップヌードルは辛くてとても美味しい。

 カップの中にフォークも入っているのだが、最初に食べた時は気付かなくて、やけに硬い具があると思ったものだ。

 食べているともう店が開いたようで、アランに急かされる。


「待ってよ、すぐ食べるから」


 熱いし辛いし、大変だった。


 そのビルには電気製品やパソコン関連、携帯電話、スマートフォン、違法合法コピーソフトウェアのお店が集中して入っていて、いわばタイ王国のビックカメラかヨドバシだった。

 スマートフォンショップに行くとアランが事情を話し、店員さんがドライバーを取り出してタブレットを分解した。

 銀色のカバーを外したらすぐにシムが出た。

 あっけなかった。


 満面の笑顔のアラン。


「ホッとしたよ」

「俺もだよ」


 この時ばかりは本気で胸を撫で下ろした。

 そしてアランは声を小さくして、


「でもさ、あのインド人が更に奥に突っ込んだんだぜ?」

「だよね」


 と笑い合った。

 じゃ、俺ここ見たいからまたね。アランと分かれると、パソコンのお店を探した。

 こんな所くんだりまで来たので、どうせならついでに、だ。

 出発前に買ったおんぼろネットブックのメモリを増やしたかったから、魔導通信器具に型番を控えて保存してあった。

 ジャンク屋みたいな店に、600バーツであった。

 片面に8枚のLSDが乗っているRAMは認識しないので4枚のものにしてくれ、と英語にして伝えるのが大変だった。


 負けてというと、店員のお姉さんは電卓を出して来て、


「580バーツまでならいいわよ」


 俺はクリアを押して中心にある釦とゼロが二つ並んだキーを押す。


「500にならない?」

「それは無理だわ」

「んじゃ550」

「OK」


 でもレートと現地価格で考えるとどうなのだろう。転移前なら2000円位で買えるパーツだ。レート通り三倍にしたら1650円。でもミネラルウォーター500mlが7バーツで買える現地感覚なら10倍くらい、5500円もする計算。

 悩んで、取り敢えず500バーツ札を出して、残り細かいのがなかったのでしぶしぶ100バーツを出そうとすると、


「あなた中国人? 韓国人?」

「えっ? 日本人だけど」

「分かった。仕方ないわね、500でいいわ」

「本当?」

「ああ、あと相性問題とかで使えなかったら持って来たら、取り替えてあげるわよ」


 何でか分からないけど負けてくれた。





※予告※

旅人の原風景。

ぎらつく大剣を腰に下げて男は果てしない冒険を夢見る。


次回『聖剣フィロソフィー』人は何を求めて旅をするのかッ!

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