リアルにトラックで転移
KIX:関西国際空港から激安航空券で一万ちょい。
マレーシアは最寄りの異世界の中でもそれなりに近い方だと思う。
俺も他と違わずトラックによって転移した訳だけど、別に轢かれたからじゃなくて一年くらい運転、配達を続けて地道に貯めた。
西に遊びに行ってお浄土でインド語とか英語とか勉強して経典を持ち帰るというのがひとまずの目標だろうか。
そう、目的地はインド。だが直接行くより経由した方が安いらしいのでこうなった。
豚とかカッパはまだいない。
夜。時間は10時を過ぎた頃。
単身、手荷物のみでKLIA:クアラルンプール国際空港に着いた。預け荷物が出てくるのを待たなくて済むのがメリットだけど武器や装備が持ち込めない。
なので今襲われたら、
>逃げる
回し蹴り
お金を払って勘弁してもらう
くらいしか選択肢がない。
ハッサンでもない俺の回し蹴りがどこまで通用するか、試してみたくなくもない。いや出来れば遠慮したい。
だが他の転移者の話を聞くと、クアラルンプールは治安が良くてほとんど日本と変わらないそうなので大丈夫だろう。
イミグレーション、要は転生者だか転移者だかを振り分けて管理する場所だ。そこを日本国ギルド発行の身分証で通過する。
指紋を電子機器みたいので取られるだけで、楽勝だった。この国は入国書類も書かなくていい。
空港を後にして、初めにしなければいけないのはここからセントラルというその名の通り中心街まで移動するミッション。
宿は前もって、ホステルワールドというサイトでその隣のチャイナタウンに予約している。
異世界は初めての体験なので、慎重に行きたい。
時差も1時間しかなくて、安全安心。こんなのはチュートリアルみたいな街だ。
選択肢がタクシー、電車、バスとあって順に安くなる。
ここはバス一択。
通貨はリンギットというらしい。100円が大体4リンギット、100リンギットが2500円くらいの計算だ。
よく分からない値段だったら百倍して半分にしてもういっぺん半分にして円の感覚に直す事にした。
バス代20リンギットなら二千円の四分の一で500円くらい。
そこそこ高価い。でも電車はその倍くらいするらしい。
しかし遠い。
そして寒い。
エアコンの吹き出し口が俺の真上だけ壊れていて、風を制御する蓋がすっぽり外れている。
こんなのは異世界じゃきっとよくある事なのだ。むしろクーラーとか贅沢じゃね?
しばらく我慢してたけど結局荷物からTシャツを出して吹き出し口に詰めた。
隣に座ってるおばちゃんが暑そうな顔をするのを無視。
60キロも離れていて、1時間以上かかった。
道はいい。立体交差と直線が殆どで、信号も全然ない。車線も広くて多くて対向と分かれていて相当飛ばせる。
バイクが多くて、たまに逆走している。
そしてバスの運ちゃんもなかなかアグレッシブでトロい車を煽る煽る。
あとは時々ある段差でぴょんぴょん跳ねるくらいで、あとは日本と変わらない。
異世界感少なめでお送りしている。
無事セントラルの駅前に着いたが、フライトが30分も早く着いたにもかかわらず、もう電車がない。夜の12時近かったので仕方ないっちゃ仕方ない。
駅員さんに、フォーチャイナタウン!? と聞くとタクシー使え、と。
残念ながらこの異世界転移で自動翻訳は機能していないようで、マレー語か英語だけでコミュニケーションしないとダメだった。
で、チート能力の出番が来た。
駅で無料のWiFiが使えたのでスマホのマップでチャイナタウンを見ると、2キロも離れていないじゃない!
歩くわ。
ぼったくってやろうってオーラがぷんぷんの雲助タクシードライバーには嫌悪感しか感じなかった。
どうせ手荷物のみなのでそこまで重くもない。
高速道路みたいな広い道を強引に、マップを頼りに進む事に。
で、橋のところで野犬に遭遇した。
野犬は吠えて仲間を呼んだ。
>逃げる
別に目は血走ってなかったから多分狂犬病の奴じゃない。
もしそうなら噛まれたら最悪の場合死ぬ。ワクチンたかい。
落ち着いて、安全距離を保ちつつ、ゆっくり移動する。
もし襲いかかって来たらカバンで殴るくらいは出来る。
回し蹴り? 今サンダルなんでちょっと。
群れにバイバイしてチャイナタウンの駅に着いたら宿はすぐそばだった。
※予告※
初の日本人転移者との邂逅、明かされるもう一つのチート能力、そしてマクドナルドの本当の発音とは!?
次回『異世界は辛いらしい』真の旅はここから始まるッ!、