伍 メイド長side
今回は主人公視点では御座いません。
私が初めてあの人を見た印象は子供のようだった。
まるで新しい玩具を買って貰ったかのように目を輝かせていたからです。
それに加え見た目も幼く見えました。
しかし、その考えは一瞬で消えました。
あるバカによって、
彼の名はラサール・ルーカス。ルーカス家の三男だ。
彼は王国騎士でありながら問題行動が目立つ人間でしたが実力は騎士の中では3番目くらいには強かったはずでした。
「俺は王国騎士のラサールだ!!いまの発言は国家反逆と見なす!死ね!!」
そう言って突然剣を抜き彼はあの人に襲いかかりました。
それが間違いだとは気がつかずに
あの人のその後の行動は異常でした。
遠くにいるとはいえ剣を抜き走ってくる人がいるにもかかわらず冷静に国王様に質問しました。
隣の勇者様は驚いた顔のまま動けずにいたのに。
しかし、勇者様の反応は正常だと私は思います。
どんなに強い人間でも突然には弱いからです
。
しかしあの人はそんな突然にも一瞬の動揺も見せずに、あまつさえ剣を抜き走ってくる者に背を見せました。
異常以外の何物でもありませんでした。
しかし彼の異常性はこれだけではありませんでした。
それは一瞬、
あの人の前に来たラサールは剣を振り下ろそうとした止まりました。いえ、そう見えただけです。
何故なら、
「お前がな」
ラサールの喉にあの人は蹴りを入れていたからです。
長年この城で住込みをしていましたがこれ程までに鮮やかな蹴りは見たことありません。
それは一種の芸術のようでした。
そして彼は流れるようにラサールが手放した剣を空中で取りラサールの喉に剣を突き刺しました。
その顔は笑っていました。
無邪気な子供のよう。
私は、いえここにいた者全員に寒気が走りました。
その実力に、その精神に。
それだけではありません。
「ねえ」
私たちの中に、ストン と
「勇者じゃないから弱いとでも思った?」
畏れを彼は落としました。
「人を殺せないとでも?」
彼を中心に空気が冷たくなり
私達はその場から動けなくさせました。
「甘いよ、甘ったるい」
私は彼が同じ人間だとは思おうとは考えなくなりました。
「自分だけが殺す側だとでも思ったのかよ」
彼は、そう、鬼です。
「そんなわけナイダロ?」
人間を殺し、喰らう、鬼。
そして、人間を守り、救う、鬼。
「そうと持ってたのなら」
亜種族を殺し、それを守ろうとする人族をも殺す、ソーレンス王国。
「殺されたッテ仕方ナイヨネ」
それをも殺す鬼。
私は畏れを感じました。
無邪気な鬼
キョウラク様に。
自然と私は頭を垂れていました。
畏れとは何だろう?
そんな疑問が有ります。




