壱
光を越えた先には、
「おお」 「本当に」 「勇者だ」
「これで勝てる」
白いローブに身をつつんだ多くの人がいた
「ここは、」
そう呟いた
「ようこそ いらっしゃいました。勇者様」
目の前に現れたのは、これまた白いドレスを着ている女だ。
こいつが言うにはどうやら俺は勇者らしい。
「それで、どちらが勇者様ですか?」
と、思ったら違う可能性があるようだ。
俺は隣を見た。
そこには学校の制服に身をつつんだ優男がいた。
さっきの声は俺ではなくこの優男が言ったらしい。
俺も冷静ではなかったという事か。
「君の名前はなんて言うんだい?」
優男が声をかけてきた。
「俺か?俺の名前は球磨川享楽。よろしくな優男」
「なら享楽と呼ぼうかな、僕の名前は朝倉直哉。松丘高校ニ年生だ。優男って言わずに直哉って呼んでくれないか?」
「分かったよ、優男」
「だから直哉って呼んでよ」
俺は隣の優男を無視して目の前の女に声をかけた。
「それで、どっちがその勇者様?」
「さ、さあ?どちらでしょうか?」
やっぱり分からないらしい。
使えない女だ。
「取り敢えず、お父様の所に行きませんか?勇者が召還できたら連れて来いと言われていますので」
「お父様?」
お父様って、どこぞの貴族か、貴様は。
「お父様はこの国の王です。そう言えば名乗っていませんでしたね、私の名前はルクールェ・ソーレンス。ソーレンス王国の第一王女です。以後お見知り置きを」
如何やら貴族ではなく王族だったらしい。
面倒くさい。
「よろしくねルクールェさん、僕は朝倉直哉って言うんだ。気楽に直哉って呼んでよ」
こいつスゲー、その言葉使いは最悪国際問だー
「はい、よろしくお願いしますナオヤ様」
大丈夫らしい。
て、言うかさっきの会話を聞いていたんだから名前くらいわかるだろ。
「それで、そちらの方はなんとお呼びすれば?」
俺の名前はさっき言ったんだから聞かなくでいいだろ。
聞いてなかったのか?こいつ。
「俺の事は享楽でいいよ。王女さん」
「はい、分かりました。キョーラきゅ、キョーラクさん。」
そういう可愛い子アピールいいから。そういう奴俺、嫌いだから、言わないけど。
まあ、お隣は違うらしいけどどうでもいい。
それより、
「面倒だからとっとと連れてってよ。王様の所にさ」
こっちは色々混乱してるんだから早く終わらせたい。