お昼だよ!全員集合
「皆さま初めまして。橘霞と申します」
当たり前のように転校生として霞さんが紹介され…まあ明日香のインパクトが色々強すぎたというのもあるが特に騒ぎにもならず受け入れられた。
そして昼休みである。とりあえず食堂に移動し、弁当を広げる。
「真一さん。はいお弁当です」
その白魚のような指で以てゆっくりと弁当の包みを解き、箸と共に差し出す。
「遅くなったな」
明日香は購買に行って来たようだ。
「ぬ…これは…」
「バカな…! カツとじパンにふわふわたまごパン…それにこれは幻のナポリパン…!」
友助と俺は驚愕せざるを得ない。それは学園の間で噂として人々の口端に上り、やがて実在すら疑われるようになったという。
心・技・体。知略に武力。全てに優れた者でなければ、競い合うことすら許されぬという戦場に、日夜、戦士たちは戦い続けるという…
「いやいやあんた達何なのそのノリ」
愛希が溜息を吐く。まあ確かに、明日香関連になるとたまに考えがバトルものっぽくなっている気がしないでもない。
それはそれで楽しいから別にいいんだが。
さて、それはさておき昼食の時間である。弁当は二段重ねで一段目にはおかかを挟んだ海苔弁仕様で、二段目はおかず。おかずには卵焼き以外魚の照り焼きや煮物など妙に茶色い。少し薄味ながらも自然に箸が進む。どれが特に美味いというのもないがどこかほっとするようなそんな味だった。
「どう…でしょうか」
「うん美味いよ」
「そうですか。お口に合ってよかったです」
にこりと穏やかに笑う。んー…何だろうな。少し老けた様な気がする。
「…美味しいの?」
どこか恨めしそうに聞いてきたのは、愛希だった。
「…食べたいのか?」
明日香が普通に購買でパンを買ってきていることからも分かるように、霞さんは二人には弁当を作っていない。愛希が食べているのは母さんのお手製である。
「べっつにぃ!」
ふんと鼻を鳴らしながら応える。そしてがつがつと弁当を掻きこんだ。
「兄貴こそどうなの? 何ならお弁当の中身交換してあげよっか」
唐揚げを行儀悪く箸で突き刺して掲げながら言って来る。それなりに魅力的な提案ではあったが。
「ふむそうだな愛しい妹があーんって食べさせてくれるなら一考するが」
「あぁん?」
いい女の子がヤ○キーみたいな声を出すんじゃありません
「冗談だ。曲がりなりにも霞さんが手ずから作ってくれたわけだしな。俺は残さずに全部食べる。誰にも渡したくない」
そそくさと弁当を抱えるようにしてやる。まあ真実そこまで気を遣う必要は無いのかもしれない。霞さんに尋ねてみれば、きっと構わないと言ってくれるだろう。ただ…
「…真一さん…」
俺を戸惑いながら見てくる霞さんに対して、きっとこうしてやるべきなのだろうとそんなことを思うのだ。
「ふぅ…」
弁当を食べ終わり、ペットボトルのお茶で一服すると、目の前にパンの袋が飛んできた。
明日香の方をじっと見遣ると。
「…あまり恥をかかせるな」
ぷいっと目を逸らすようでいながらこちらへの注意を怠らない明日香に苦笑しながら、俺はパンの袋を開けた。
「…さて、やはり私達は一度話をしなければならないと思うの」
我が妹は全員が食事を終えるのを見計らうように切り出した。
「ふむ…それはいいのだがな」
「なによ」
友助の声に聞き返したところで、予鈴が鳴った。
「…話は放課後ね」
「よければだが我が妹も参加させてもらえないだろうか」
「分かったわ。そうね華凜ちゃんにも参加する権利があるわ」
そして、第一回チキチキとき☆めき婚約者だって女の子だもん(はぁと)会議ポロリもあるよの開催が決定した。
「そんなアホな催しは決まってない!」