プロローグーもうちょっとだけ続くんじゃ
「はぁ…あーいい湯だったー」
その後…まあエビフライにはソース派醤油派タルタル派など価値観の衝突など色々あって騒がしい夕食も終わり、風呂から上がって部屋に向かっていた。
(愛希の様子が変だったな…)
仕方がないとは思うが、きっと他の二人と違って全く知らされていなかったことで混乱しているのだろう。それは俺もだが、まあ兄の本能のお陰で何とか平常でいられている。俺は何があろうとも愛希のバカ兄貴だ。例え義兄妹だとしても。だから、安心しろ、とそう言ってやった。
『…ばかあにき』
少しだけでも、何か気力のようなものを取り戻させてやれたようなので…まあ良しとしよう。
「さて…それじゃあ寝るかね」
のそりと俺は布団にもぐる。そして、柔らかい何かに顔を沈める。
「あぅ…だ、大胆…なの、ですね」
「うむ寝る前のテンションというのは意外に高いもんだ深夜だからな」
「そうですか…えっと真一さんは電気は点ける派でしょうか点けない派でしょうか」
「ちゃんと消さないと寝れない」
「そ、そう、ですか…それでは…」
「おい待て」
ぬ? と俺はバタンと開かれたドアの方を見遣る。明かりがさしこんだ辺りを見ると…あれ? いつのまにいたんだ霞さん。
「あ…あんたたち早速何してんのよ! と、隣なんだから聞こえ…聞こえ」
「何だ愛希? どうして顔を赤くしているのだ」
「バカ兄貴は何で無駄に冷静なのよ!」
「そんなことを言われてもだな…」
俺は霞さんの方を見る。薄い生地の白っぽい着物(?)を着ていて結構体のラインが出ている。すると気付いた。しなだれかかるようなその姿勢で、肌の白さとか下半身の流線美とか…今俺が鷲掴みにしてしまっていた豊かな胸元とか。
「きゃ…う…ん…!」
誘われるように動かしてしまった。ヤバいぞ結構興奮しちゃってるぞ俺ぇ
「ぬぅ…我を差し置くとはいい度胸ではないか」
響く声にはっとなる。そこにいたのは明日香だった。助かったと内心つぶやいた。
「はっはっは! 初日ということで遠慮しなければと気遣いも無用の長物であったようだな」
とんっと、明日香は跳び、俺の腹の上にダイブして馬乗りになった。
「おい明日香。ちゃんとパジャマのボタン留めないと…風邪引くぞ」
「そこじゃねえよ! そして当たり前のように掛け違えたボタン外そうとすんな!」
「ぬ…世話を掛ける…いやそれよりもだ真一よ。この状況はつまり夜はこれからだ、と解釈して構わぬのだろう?」
「うーむ…まあ明日も学校だがまだ大丈夫な時間ではあるだろうな」
「ならば夜を徹しよう! ふふふまずは…まくら投げからだ」
「ぐほぁ!」
枕のポテンシャルを舐めていたと言わざるを得ない結構強烈な一撃に悶絶する。
「ははははは!」
が、初めて見た明日香のこの上なく無邪気な笑顔を見ているとしかたがない、と俺の血が騒ぐ。全くもって…帝崎明日香は不思議な人物だった。
「うぉっしゃあやったらぁ!」
「真一さん援護いたします」
「ぬ、霞め小癪なことをだが面白い! こうでなくてはなぁ!」
「あーもう! 何だこれ! 何だこれぇえ!!」
こうして、俺達のはじめての夜は更けていくのであったまる