橘霞の策
懲りずに霞さん視点に移ります…
「それで霞さん。何ですか話って」
「単刀直入に申し上げますが愛希さん。今のあなたは不自然です」
私は愛希さんの目を見て、言います。
「不自然って…私は」
「愛希さんが真一さんとの関係を変えたい、と。そう望んでいるのは分かります」
それは、きっと今の私にはない強さなのでしょう。
私は、自らの居場所を探すために、自らを消して、何かを得ることを避けてきました。
眩しくない、と言えば嘘になります。しかし、だからこそ、間違っているのではないか、とそう叫びたくなるのです。
「ですが、不自然でしかないのです。それは、愛希さんと真一さんが今まで築いてきた関係の延長線からわざと外れようとしているからです」
「何で、霞さんはそんな…」
「私は、妹にも姉にもなれませんでした。ですから、妹であることを自ら放棄しようとしてしまっている愛希さんに、それでいいのか、と。そう問いかけてしまいたくなるのです」
私と愛希さんは違う。そう思っていました。けれど、それが勘違いで、今、愛希さんは、放っておいてはいけないのではないのかと、そう、考えてしまったのです。
「だって…ダメだったじゃない! そんなの、意味ない。私はそんなの…望んでない。今のままじゃ、今までじゃ、ダメな…」
「…本当に、そうなのですか?」
「っ!」
愛希さんは何かを言おうとして…結局、止めてしまいました。
「すみません。もしも、愛希さんと真一さんだけの話であれば、そうやって育む形もあったのでしょう。破綻しても、お互いを見失いことはなかったのでしょう」
ですが、愛希さんのやり方は周りが見えていない。真一さんが心を傾けていることに、そう、甘えてしまっている。
さて、とはいえ私が愛希さんを押し退けて駆け引きで真一さんを奪う、などという姿は私自身にも思い浮かばないことは事実です。私が言える言葉はそう多くはないでしょう。ですが、
「最後に一つ。御忠告を」
あまり華凜さんを甘く見ないことです。
愛希さんと別れた私は、明日香さんの元を訪れ、ある提案を申し入れました。
「お主から訪ねて来るとは珍しいものだと思ったが…」
「ダメ、でしょうか?」
明日香さんは難色を示します。
「いや、お主の気質に合わんと思ったが…何だ? 愛希と仲違いでもしたか」
確かに、勢い、というか不機嫌な気分を引きずったまま自分でもどうかと思う考えを提示している、という部分はあります。
「そうか」
明日香さんはケラケラと笑います。さて、少し恥ずかしいですね。
「察するに、明日香さんが受け入れがたいと思う部分というのは、受け入れてはいけないという意地、の部分が大きいと思うのですが」
「そうだな。それは否定しない」
「ですが、抑え込もうと反発すればするほどそれに一度踏み入れてしまった時の反動は大きいのです。そう、貞淑な人妻が不倫に嵌ってしまうように!」
「…お主…いや、何も言うまい。ふむ…そうだな。正直なところ、あの男の策に乗るようで面白くもなかったところだ」
「では、よろしくお願いします」
そうですね。とりあえず、明日の朝、ですか。




