妹じゃないから
ユニーク1,000突破ありがとうございます!えーっと…頑張ります!
「ねえねえしんいちおにいちゃん。手つないでいい?」
「ああいいぞ…むしろ霞さん。後ろからそっと袖を掴んだりしないでいいですよ」
「…お気づきでしたか」
放課後、霞さんが夕食の買い物に出かけるということで華凜ちゃんが手伝いを申し出た。さて、となると俺も見て見ぬ振りをすることも出来ない、ということで俺達は一緒に近所のスーパーに向かっているのだった。
「申し出は大変嬉しく思いますが、さすがに通行の邪魔になってしまいますので」
華凜ちゃんに聞こえない様に、という配慮は分かるものの耳に近づきすぎて少々こそばゆいです。たまに当たる唇の感触が妙に鋭敏になってしまいます。
「大丈夫ですよ。少しうら寂しくなってしまいましたが今こうして歩いているだけでも心安らいでいるのです」
にこりと微笑む。そこに無理の色はなく、本心からそう思ってくれているようだ。
そうこうしている内にスーパーへとたどり着き、買い物籠とカートを俺が引っ張り、買い物を始める。
「さて、今日の晩御飯は何かな?」
「そうですね華凜さんが食べたいものが好ましいのですが」
「せきにんじゅうだいだね」
華凜ちゃんはうーんと唸る。
「それじゃあじぶに」
「なるほど治部煮ですか…鶏肉でよろしいでしょうか?」
また渋いメニューが来たな。今時の小学生これくらい普通なんだろうか。それとも士道家の嗜好だったりするんだろうか。
そして華凜ちゃんは霞さんに耳を借りて、屈んだ霞さんに耳打ちしていた。
「何なんだ?」
「いえ。大したことではありませんよ。ただお手伝いをしたいらしいです」
「うぅ」
「恥ずかしがることなどありませんよ。そうですね華凜さんがお手伝いをしてくださるのならもう一品追加してもいいかもしれません」
華凜ちゃんは恥ずかしがるようにして、店内を駆けた。しかし、見ると人参やゴボウなどが並ぶ野菜コーナーに走っていて、健気に手伝う気持ちが伝わってくるのだった。
「華凜さんはいい子ですね」
「そうだな。霞さんもいいお姉さんしてましたね」
「そうでしょうか。そうだったら嬉しいことですね」
霞さんは遠いものを見るようなしんみりとした声で答えた。その声で思い出した。
霞さんは、姉と妹がいるが姉に甘えることも出来ず、また妹に甘えさせることも出来なかった。だから、自らを希薄にしてしまった。
「私は大丈夫ですよ。姉と妹とはわだかまりがあるわけでもありません。姉でもなく妹でもない私を、真一さんは肯定してくれましたから。華凜さんは華凜さんで大好きです」
ただ、と霞さんは俺の顔を見つめ、黙る。
「…なるほど少しだけわかりました」
「何をだ?」
「さて、何でしょうか」
これ以上話をする間もなく、華凜ちゃんは野菜を持って買い物かごに入れてきて、俺はその頭を撫でた。その様子を眺めている霞さんの目線に、俺は気付かなかった。




