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婚約者が突然現れたのだがどうすればいい?  作者: 山崎世界
帝崎明日香編:出会った日から
15/51

エピローグ:タイトルを回収します

期待を裏切ることになるかもしれませんが少なくともこの話ではくっつきませんあくまでどうすればいい?というお話です

 言うなれば、帝崎明日香は狭間にいる。


『生憎と…我には恋などというものはよく分からん』

 しかし、あまりにも冷静過ぎる声で以て、帝崎明日香は答えた。

『だが、それは、それほど重要なものか?』


 そう、あれは紛れもなく、問いかけだったのだ。

 俺が多少、何かしたとしても、それは多少でしかない。幼いころの俺のしたことというのは、結局の所、わけのわからない何かでしかなかった。それは今でもそう変わりはしない。

 もっと…たとえばおとぎ話の英雄の様に絶対的な何かを指し示すことが出来ればきっと…

「いかんなどうも」

 俺としたことが色々と考えすぎている。それは俺らしくない、という以前に


『どう…して―――!!』


 許しがたいことだというのに。

「よし」

 大事なことはとりあえず一つだ。ひとつ声に発して、心に刻みつけることとしよう。

「俺は明日香のことが好きだ」

「…な…!?」

 あれぇ? おっかしいなぁ…明日香が目の前で固まっている気がするぞー…うーん…気のせいだな!

「そんなわけがあるか」

 こつん、と頭を叩いてくる幻影であった。

「お前…どうやってここに!?」

「ノックはしたぞ」

 呆れた様に、冷徹に答えてきた。

 状況を整理してみよう。ここはどこか? 俺の部屋である。夕方、創生氏と会い、そして夜、寝る前に一人になり、考え事をしていた。それだけの話である。

 さて、問題なのは何故、明日香は今ここに来たか、ということだが…聞ける雰囲気じゃないな。

「…まあいい。お主が大体にしてどうしようもない人間である、というのはようやっと分かってきた」

 明日香はこれ見よがしに深いため息を吐いてきた。

「それはありがたいことだな」

 そうだ。俺のことを天下無敵の主人公様だと思われても困る。

「お前もどうだ? 声にして吐き出すって行為は結構、気持ちがいいもんだしすっきりするぞ」

「そうだな…何かこう…何かを叫んでしまいたい誘惑に駆られているのだが…」

「吐き出しちまえよここにはんなもんを責める人間なんていないぜ」

「…いや、それでも止めておくとしよう」

 そうか。いやそれでこそ、帝崎明日香なのかもしれない。

「それでだ明日香。こんな夜更けに何の用だ?」

 見れば明日香も寝間着姿であった。

「さて何の用であろうな」

 聞き返してきたよ。珍しいな…と喉まで出かかってきたが留めた。

 俺はまだ、こいつのことを偉そうに評せる程、何もかも知ってるわけじゃない。

「ただそうだな少し話がしたいと思ったのだ」

 そして、俺に、俺だから出来ること、したいことというのはおぼろげながら分かってきているのだ。

「ああ。構わんさ」

 それが、いつか許されないことだとしても。俺はそんな風に、何も考えずに答えるのだ。


※※※

 それは、あの日の続きの出来ことだった。

『それじゃあな』

 別れ際。俺達はそれぞれ、背を向けようとしていた。

『まて!』

 彼女は、帝崎明日香は叫んだ。

『なんだ?』

 親達は立ち止まる。

『~~~』

 声にならない声を上げたかと思えば、明日香は俺の腕を引っ張って、少しだけ、二人の時間を引き延ばした。

『われは』

 そして、始める。

『これから…がんばる』

 俺は聞いた。拙いそんな言葉ばかりでも。精一杯受け止める。そうしたいと、そうしなければならないとそう思った。

『だから、がんばったら…おぬしにとどいたら』

 

    われと…いっしょになってほしい


※※※


 ぱちりと。はっきりと目が冴えた。今まで見てきたのは夢であって、しかし、忘れていた記憶だったと。そう心の奥底が訴えた。

「あー…」

 そうだったのかと。

「あれは…うん。そういう意味だよな」

 詰まる所、俺達は何かに強要されたわけではなくて、自らで選んで、今、こうして一緒にいるのだ。まあ未熟な俺達は色々なものに後押しされてたりするのだが

 ふと、半身を起こした俺の寝間着が引っ張られているのに気付いた。

「ん~…」

 そして俺の腰に巻き付いてきた。その正体は明日香だった。

「えーっと…うんまあいいか」

 確か…そうだった。色々特筆すべきでもないような話をしていたりしたが、やがて時計の短針も上を向くくらいになったが。しかし俺達は離れようとしなかった。

 やましいことなどあるわけはない、と。俺たちは二人、一緒のベッドに入った。

「…くぅ…」

 穏やかで、無垢な寝顔だった。その頭を、ゆっくりと撫でる。起きたらきっと出来ないようなことをしかし思いきり試みる。


「われは…がんばったぞ」


 暫し、心臓が止まった。

「おぼえ…」

 いや…違うか。

夢の中みたいに混沌としていて、何もかもが許される。そんな、この場限りの、言葉ですらないような何かだ。

 そもそもだ。


『お前もどうだ? 声にして吐き出すって行為は結構、気持ちがいいもんだしすっきりするぞ』

『そうだな…何かこう…何かを叫んでしまいたい誘惑に駆られているのだが…』

『吐き出しちまえよここにはんなもんを責める人間なんていないぜ』

『…いや、それでも止めておくとしよう』


 明日香は強い。それは強くあろうとしてるから。幼いころの約束になんて縋らない。弱音なんて吐かない。

「…」

 あの時、言葉を叫んだあと、あれはどういう意味だったのかと問う機会はなかった。返事を聞くことも無く、すぐに去って行ってしまったからだ。

 応えは要らなかったのだ。あれは、いうなれば決意だった。倒れそうになった時に手をつく壁の様なもの。抱き留める必要などないし、そもそもそんなことは求めていない。

 だから、応える義務はない。

 しかし、応えてはいけないという決まりもない。

「まあ…俺もお前と出会って、別れてから色々とあったりして、そう何もかも思い通りに出来るわけではないことを知ったんだが…」

 長い前置きに苦笑する。

 ただ、俺も明日香に近づきたいのだと。そう思ったのだ。

「うん。俺もお前と一緒にいたい」

 ただ、それだけを口に出した。

分かりにくいかもしれませんが明日香なりのプロポーズだったりします。主人公はあえてはぐらかしているというか何というか…

次回から霞さん編が始まる予定です。時系列的には普通にこの後のお話になります。


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