帝崎明日香の始まり
回想です地の文の視点が変わります
そう、あれは十年ほど前、近所の遊園地に出かけた時のことだ。
『…』
誰もが彼女のことを遠目に見た。見ているだけだった。子供ながらに恐ろしく、睨みつけるような視線に、誰もが目を逸らした。
両親が嫌いで仕方が無くて、離れようとして。そして、望みどおり離れたというそれだけの話なのに…まるで、迷子の様に寂しくて。心細かった。赤く、暗くなっていく世界が、ひたすら恨めしかった。
『どうかしたのか?』
しかし、そこに声を掛ける影があった。
『おぬしにはかんけいない』
『かんけいなくはないな…なんてーのか…その…ねざめがわるい』
『…?』
何を言っているのか、分からなかった。
『いいからいくぞ』
『なんなんだ…なんなんだおぬしは!』
そして、その影…男の子は、その手を引いて、観覧車まで連れてきた。
『ぇ…』
『お願いします!』
係りの者がドン引きしてるのも無視して、二人は、観覧車に乗り込んだ。
『…おぬしわれがこわくはないのか?』
沈黙に耐え切れない、という風に彼女は声を掛ける。
『ん? そりゃこわいけどさ』
『だったら…!』
『しかたないじゃねえか。ほうっておけなかったんだから』
仕方ない? 仕方ないと言ったのか。自分の周りは、変えようのないことばかりで、仕方のないことばかりでけれど、それを認めたくなくて周りを睨みつけていた少女は
『だったら、こわいのくらいはがまんすればいいだけだしな』
しかし、何かを言おうとして、何も言えなかった。
目の前の彼は少しだけびくびくとしていたのに気付いた。ずっと…しかしそれでも前に進もうとした。
強がりだ。自分だって強がってばかりいる。けれど、彼との違いは何なのだろう、と問いかけた。何故、目の前の存在はこんなにも安らぐように…強いなぁ、と。そんな風に感じてしまうのだろう、と。
『なあ…そのおめんとっていいか?』
『…だめだ』
そして、何でこんなにも目をキラキラさせていられるのだろう、と。
『…』
少女は、ずっと考えていた。
『そっか…えっと…みえるかな?』
『なにがだ』
『ぅお!? びっくりするからいきなり近づくな』
はぁはぁ…と慌てる様に飛び退く様に少しだけしてやったり、と。ほくそ笑んだ。
『ここからみれば、おやたちみつかるかなってさ』
『ふむ…そうか』
しかし、彼女の瞳は、光を取り戻した世界に、見惚れるばかりでただ空返事をするばかりだった。
そして、いつか、二人は迷子ではなくなって。それぞれの帰路についた。




