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婚約者が突然現れたのだがどうすればいい?  作者: 山崎世界
帝崎明日香編:出会った日から
10/51

違う目線で

えー前話が男が会話するだけだった上に短かったのでもう一話

 通学路。

「明日香。手を繋がないか」

「む?」

「お兄ちゃん! そういうことなら」

「ぬ、華凜ちゃん…」

(そうだな今日は友助もいないことだし…あの仲のいい兄弟だ。無意識でも人肌恋しい心地もあろう)

「えへへ」


 昼休み

「はぁ…はぁ…明日香…お前、毎日あんな戦場に顔を出しているのか」

「修行の一環だと思えばどうということもない」

「購買でパン買うくらいで大げさな…」

「大げさじゃねぇ! ふ…愛希…お前は知らなくていい世界というのが世の中にはあるんだ」

「何かムカつく」


 放課後

「明日香、肩車をしてやろう」

「お主は何を言っているのだ」

 ダメか。

「もういい加減めんどくさいから言うけど何があったのよバカ兄貴」

「うーん…だとしたらどうすればいいのか」

「聞いてねえ…!」

 そう、もちろん俺がこのようなことを言い出したのには理由がある。


※※※


『不審者が一体何を考えているのかは分からぬが明日香殿に関わることとみて間違いはないだろう。であれば、彼女との関わりが重要となる

にもかかわらず、我らを窺い知る気配がないのは警戒しているからだろう。情報を得ることよりも、彼女に近い我々には近づきすぎないようにすることを優先している』

『なるほどな…それで、どうする』

『俺は離れるとしよう。俺一人となり、リスクが減れば接触も試みて来るやもしれん』

『じゃあ俺も』

『いや二人ともでは芸がない。真一は逆に明日香殿により近づいてほしい』

『でも今までだって俺達の周りには来なかったんだろう? そんなことをしたところで』

『重要なのは現状を変え、揺さぶってみることだ。流石に帝崎明日香という人物に対し無視は出来ぬほどに関われば危険を承知で虎穴に入ろうとするようになろう。まあ危険が増すのはこちらも同じだが…改めて問うが続けるか?』

『愚問だぜ親友』


※※※


 などと意気込んでみたはいいものの。仲良しアピールの一環としての肩車はあっさりと断られたしな。さて、どうしたものか

「…何を考えているのかは知らぬが肩車は我がもっとも嫌いなことの一つだ。人の力を借り、自らの足で立つことすら放棄して見える世界にどれほどの価値がある」

「難しいことはよく分からんがそう悪いもんじゃないと思うぞ全国のお父さんと子供がそんなことを一々考えているとも思わんし」

 何故俺は無駄に反論しているのだろうと思う。ただ…それなりに力強い言葉ではあったけどそれでも、どこからしくないな、と。そんな風に思ったのだ。

「そう、か…」

「気に障ったか? 悪い…俺もどうにも未熟者でな」

 全く…今日はこれだけではなく、仲良くしようと色々画策しているのだが。どうにも上手くはいかない。こんなことじゃ…

「……仕方ない」

「む?」

「じっとしていろ」

 何を…という間もなく、明日香は俺の肩に乗ってきた。

「どうした? 真一。お前の望みに乗ってやるのだぞ少しは喜んでほしいのだがな」

 太腿を俺の胸元に卸す。そして、体勢を少し傾けて喉に手を伸ばそうとしてくる。動揺して体勢を崩しかけて、しかし意地で踏ん張る。

「ふふ」

 今度は頭を撫でる。胸も薄く、肉付きもよくはないその体であるが。その慈悲すら感じるような、労うような手つきに。俺は何だかさっきから落ち着かなかった。

「さて、折角だ…少し歩くとするか」

 安堵しながら歩きはじめる。

「バカあに…たくしかたない、わね」

 いつの間にか、愛希は帰っていた。


「大丈夫か?」

 さて、何に対してだろうか。色々な視線を感じはするが、堂々たる明日香の声を聞くと別に大したことはないのだとそう思う。

「大丈夫だ。お前は軽いしな」

 いつも力強さを感じるものの、その体はとても小さくて。軽くて。そんなことに今更気付いた。

「軽い、か…」

「悪い」

 どこか湿り気を帯びたようなその声に、俺は反射的に謝った。

「うむ大丈夫だ。…すでに吹っ切れていたつもりなのだ。この身体のことも…だがやはり未熟であったということに気付いた」

 ふと、明日香は遠くを見た。

「我の体から見える世界は少し低い。そのことを気にせず、妬まずその世界を受け入れればいい、と。我はそう思っていた…」

「そうか」

 それは誇りだ。自らの持つ世界を、精一杯、愛している。だからこそ、明日香は輝けるのだろう。自らの世界が、輝いているから。

「だが、それに固執しすぎていた。意固地になっていたのだろうな」

 ゆっくりと微笑むのが分かる。

「あぁ…ここから見える世界も、こんなにも美しいのに」

 そして夕日に手を伸ばし、掴んだ。

「礼を言うぞ真一」

「俺はそれほど大したことはしていないぞ…それに」

「そうだな今日のお前は何だか気に入らなかった」

 ぐぎぎ、と俺の頭を力を込めて掴んだ。

「えっと…何を怒っておいででしょう?」

 疑う余地も無く明日香は怒っていらっしゃった。

「お主が真心を持たずに我に接していたからだ…何故かは知らんがな」

 バレてたぁ!!!

「だいたいだな……ん?」

 どうしたもんか、と悩んでいたら明日香は急に険しい声を上げる。

「この気配は……まさか」

 明日香は俺の前に舞い降りる。白…いやわざとじゃないんだ。

「あ! 待て明日香!」

 俺は明日香を追いかけた。

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