#34 ルインのところ
戸惑う僕を無視して、社長は独り言のように話続ける。
「私はただピアノを弾きたかっただけなのに、何よみんなして好き放題言って。私が何したって言うのよ。」
──お母さん、私が何をしたの?
──ほら、こんなに上手にピアノ弾けるようになったよ?
──見て?コンクールに出て、優勝したんだよ?
「栂屋くん?あなたに私の気持ちが分かる?ねぇ?言ってみなさいよ!」
目を見開き、僕に襲い掛かってきそうな社長に僕は後退りをした。
「琉生ちゃん?大丈夫よ。もう大丈夫よ。」
突然の声に振り替えると、そこには幸田真美の姿があった。
「あんたのせいよ!!!!」
雨宮琉衣の叫び声が部屋中に響き渡る。
幸田真美はそんな雨宮留以を抱きしめる。
「大丈夫。もう大丈夫。大丈夫だからね。琉生ちゃんは天才なのよ。もう一回やり直そう。」
叫び散らす雨宮琉衣 、彼女を必死でなだめる幸田真美、そして僕は身動きひとつ取れずにいた。
「栂屋さん?何してるの?すぐに出ていってくれる?」
幸田真美に敵意むき出しの表情でこの場から立ち去るように指示され、圧倒されっぱなしの僕の後ろから聞き慣れた声。
「真美施設長?これはどういう事ですか?」
──え?真琴?どうしてここに?
「真琴ちゃん?どうしてあなたが?」
僕以上に驚く真美。
「真美施設長?ルインって誰なんですか?」
真美の質問を無視して、質問をする真琴。
「え?ルイン?ルインはどこ?あの子のピアノが聴きたい。」
真琴のルインという言葉に反応した琉生が、抱き締めた真美の手を力付くで振り切り、部屋を出ていき──琉生ちゃん?待って──と、真美も続いて、部屋を出た。
取り残された僕と真琴。
「え?何で真琴がここに?」
「そんなこと、どうでもいいでしょ?」
「いや、でも…。」
「でも、じゃないの!ほら、行くよ?」
「行くって、どこに?」
「何言ってんの?決まってるじゃない。さっきの琉生さんの言葉聞いたでしょ?」
──半狂乱の社長の言葉から察するに。
「ルインのところか…。」




