#29 見える異変
「真美施設長、おはようございます。」
「あ、真琴ちゃん、おはよう。」
──別段、変わった様子はないよね。
総一の話からすると、雨宮社長と真美施設長は、二人して嘘を吐いている。
体調不良で出社していない雨宮社長と、星の国で会っていたにも関わらず、会っていないと総一には言ったらしい。
「美穂ちゃん?よろしくね。」
「分かったわ。何かあれば言うわ。」
そして、真琴と美穂も子供たちに異常がないかを調べようと話し合っていた。
──別に子供たちも変わった様子はないわね。
真琴や美穂が意識しても、星の国はいつもと変わらず、子供たちの楽しそうな声でうるさいくらい。
そして、いつものメロディが星の国に流れる。
そう、ルインのピアノが流れ始めると、子供たちは嘘のようにすぐに寝息をたてる。
当初はこれが信じがたい光景ではあったが、今やすっかりお馴染みで、実は真琴や美穂も、この子供たちの昼寝の時間に問題が起こることのないお陰で、リフレッシュ出来ていたのだ。
しかし、今日は違う。
改めて、寝入っている子供たちの様子を観察している。
すると、注意しないと気付かなかった異変が子供たちには起きていた。
「ねぇ?すごいでしょ?」
「もうこんなにも出来るんだよ?」
「見て見て。」
なにやら、寝言が聞こえる。
耳を澄ませて、口に耳を当てるほどの距離でないと聞こえない声だったが、確かに聞こえる。
──自慢?褒めてほしいのかな?
言葉の意味から考えると、実に子供らしく夢を見て、その寝言だと真琴は理解した。
──やっぱり、子供は可愛いな
スヤスヤ眠る子供たちの顔を見て、真琴は癒されていると
「あなたのせい」
どこからか、そんな声が聞こえた。
キョロキョロと辺りを見渡しても、見えるのは子供たち、聞こえるのは寝息と、あのメロディ。
「え?今の何?」
──今、あなたのせいって聞こえたよね。
真琴が心臓の高鳴りを沈めようと深呼吸をしていると、美穂からメールが届いた。
「すぐに来て」
絵文字も句読点もない文面を見て、真琴は部屋を飛び出した。




