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ZERO 第一部  作者: 栂屋総一
ZERO 第1部 栂屋総一編
2/37

#2 栂屋総一の休日

 「ふぅー。」


 タバコに火を点け、思いっきり煙を吐き出す。


 年末年始の激務がようやく落ち着き、帰宅時間は通常と変わらぬ21時頃。


 家賃50,000円のワンルームが僕の城。駅からは遠く、近くに生活用品を買うスーパーなどもない。


 ましてや、隣人が美人の女子大生などでもない。ちなみに隣人は美人の『猫』を飼っている男子大学生…。


 それでも僕がここを決めたのには理由がある。


 それは内装がコンクリート打ちっぱなしだったからで、そこに一目惚れした。壁紙が黄ばむ事を気にせずに喫煙出来るのは、愛煙家の僕にとってはこの上ない喜びだった。


 Toys roomへの就職と同時に親元を離れ、始めた一人暮らし。

当初は様々なことが新鮮で炊事、洗濯も含めて1人の自由と責任を満喫していたが、徐々に親のありがたみを知ることとなり、今は自分の出来る範囲内での生活をしている。


 もちろん今晩もコンビニ弁当。


 彼女でもいれば、温かい夕飯には困らないだろうなと思いつつ、今や女房同然の電子レンジで弁当を温める日々。


 「熱っ!」


 プラスチックのフタがパンパンに膨らみ、蒸気でちょっとした火傷をするのも日常茶飯事。


 どうも、電子レンジの「自動あたため」は、ちょうど良い具合に仕上げるのが難しいらしい。


 ペットボトルのお茶を飲み、コンビニ弁当を割り箸を使って頬張り、膝を立てながら、パソコンでお気に入りの動画を見る。


 これぞ独り身の男の一人暮らし。独身貴族などという言葉も結婚制度の廃止により、無くなってはくれないだろうか?


 これが僕のプライベートタイム。


 食事の後片付けは全てゴミ箱行き。


 そして、簡単にシャワーを浴びてベッドに横になる。


 ロボットのように決まった流れだったが、その中で人間らしさと言えば、僕は時々、夢を見る。


 そして、その中でも時々、悪夢を見ることがある。


 内容はよく覚えていない。


 ただ、自分が物語の主人公だという事は確かだった。


 次の日が久々の休日という事もあり、早めに寝床に入ったのだが、そういう時に限り、あの悪夢で目が覚めてしまう。


 ――また、あの夢か。


 頭上のデジタル時計を見ると0時00分00秒と表示されていた。


 こういう悪いタイミングでの、奇跡的な偶然は、不吉でしかない。しかも、恐らく寝入ってから30分ほどしか経っていないはずだが、とても長い間夢を見ていた気がする。


 改めて時計を見たが日付はちゃんと昨日の次の今日で、丸一日寝ていた訳ではない。


 よく言われている事だが「夢」という言葉は二種類ある。

 ――将来、実現したい願い。

 ――寝ている間に見るもの。


 前者は「夢は見るものじゃなく叶えるもの。」


 僕は後者に対してはこう言いたい。


 「夢は見るものじゃなく、見せられるものだと」


 悪夢を見たいなんて、1度も願ったことは、もちろんない。それでも、こうして現れるということは、きっとどこかの誰かが僕に悪夢を見せているに違いない。


 寝起きでそんなことを考えていたが、連日の激務の疲れは、また僕を眠りへと誘った。


 ―――しかし、僕は気付いていなかった。また眠りを妨げる存在がゆっくりと近付いていた事を。


 ピピピピピ


 部屋に響き渡るアラーム音。


 眠りを妨げたのはあろうことか僕自身だった。


 「あぁぁぁ。アラーム解除するの忘れてた…。」


 それから、昼頃まで寝付けずに、結局休みは一日中寝るだけで終わっていったのだった。

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