#13 紙約束と神約束
「あれ?社長は?」
真琴と美穂と会い、ルインについて社長に聞こうと思っていたが、出勤していない様子。
「栂ちゃん、知ってる?いよいよ、結婚禁止令が施行されるみたいだよ。」
社長がいるいないに関わらず、雄二はいつも通りのマイペース。
「そうなんだ。」
僕はそもそも結婚に興味がなかった為、そしてルインについて進展出来ない焦りから、愛想のない返事をしてしまい、それに雄二は敏感に反応した。
「え?栂ちゃんはこのニュースに興味ないの?」
「え?あ、あぁ。結婚願望とかなくてさ。」
「そうなんだ!俺はさ彼女が年上で、結婚を夢見てたような人だから、もう凹んじゃって大変なんだよ。」
「結婚って神約束だろ?いや、紙約束か?」
なんて、僕が笑い飛ばすと
「でも、子供は欲しいじゃん?」
「結婚しなくても作ればいいんじゃないの?」
「そっか。」と言って、雄二は何やら考え込んでいる。
僕は結婚禁止令を推奨している訳ではない。
ただ、結婚に夢を抱くなんて、有り得ないとは思っている。
結婚して良い事はあるのか?
みんなが結婚するから?
結婚しろって言われるから?
暗黙のルールみたいになってるような気がして、ちょっと嫌気がさす。
「ところでさ、雄二はルインって知ってる?」
「あ、あのCDの人だよね?」
「そう。何か知らないか?」
「全然。聞いたこともないよ。」
僕もネットなどで調べたが、全く情報がない。
「社長に聞けばいいんじゃない?」
――いや、だからその社長に会えないから――と言いかけたが、お互いに業務に戻った。
僕の頭の中で「ルイン」という名と共に「あのCDのメロディ」がグルグルと巡る。