英雄少女?(1)
さて。
ラビという一人の存在を中心に語ってきた、この短い物語もとりあえずの大詰めである。
リモコンだったはずが本物の女の子になってしまったり、色々と全国区で名前が売れてしまったり、何というかネタまみれな感じの日々を過ごしてしまったわけだが、それでもラビの基本は変わらない。つまり毎日のようにロディアーヌの町をパトロールして、そしてアンテナにピピンときた時に行動に移る。それが一年前も今も変わらない彼女の日常といえる。
『こらぁぁぁ、そこの暴走車!待ちなさーい!』
ラビという存在のおかげもあり、最近は目立つような凶悪犯もめっきり減ったロディアーヌ市。もっとも、たったひとりのヒーローで悪が根絶できるわけもなく、いつまでたってもそれなりに忙しいラビである。特に、いろんな意味で市民権を得てしまった今となっては、居合わせた警察やルークと堂々、手を組むような事も増えた。
と、そんな解説の間にも事件が起きたようである。
何やら暴走車を追いかける警察車両の群れ。そのひとつの屋根に、ぽてんと小さな影が乗った。
「なに、大捕り物なんて珍しいね、何者?」
「あれ強盗だよ!逃走中!」
「ありゃりゃ。手、貸したほうがいい?」
「できれば!」
「おけ。じゃあ、私先回りして南部通りから挟み撃ちにするよ。追い込める?」
「ぜひ!」
「わかった!」
ラビが身軽にどこかに飛び去ると、警察車両から他の僚機に指示すが飛び始めた。
『全員に伝える、南部にブーツの飛び入り。繰り返す、南部にブーツの飛び入りアリ。すべての僚機は三方より現場に急げ、三方より現場へ。以上!』
ブーツの飛び入りとはラビを示すキーワードである。
連絡を受けたすべての警察車両は動きを変え、犯人の車を南部に追い込むように展開を開始した。
さて。
そうとは知らない犯人の車の方は、センサーを見ながら全力で逃走中だった。
彼らは各種センサーを誤魔化すよう手配済みであり、準備はまさに万端だった。警察の裏をかくだけでなく、ルークも、そして高機動ドロイドを探知するセンサーまでも駆使しており、決まった動きをしないラビへの対応まで行っていた。つまり、イレギュラーでもない限りはまず負けない要素が揃っており、よほど運が悪く無いと負けはありえなかった。
だがそれでも、彼らのリーダーは決して油断しなかった。
リーダーは、数字に出てこないプロの恐ろしさをよく知っていた。熟練した職人の超人的な技量や現場対応のプロの切れの良さ、そうしたものは額面上の計算を余裕で上回る。計算通りにいかないのが人間の凄さであり、恐ろしさであるという事をリーダーはよく理解していた。
だが。
「とにかく逃げるんだ。少しでも確率の高い方にかけ、決して冒険はするな。でないと」
「リーダー!」
「な……!?」
あえて言えば、彼らはそれでもなお、足りなかった。
「やっほー!」
「て、鉄拳ラビ……ばかな、センサーには!」
「あー、高機動ドロイドセンサー使ってたんだ。ごめんね、私、迷彩かかってるから」「……」
ふと気づけば、噂の鉄拳ラビが彼らの車の上にいた。
どうやら彼らの命運は尽きていたようである。
「……」
身一つで政府軍とすら戦った噂のヒーローに首根っこを押さえられ、それでも抵抗する者がどれだけいるだろうか?
彼らは自分たちの負けを知り、そして肩を落としたのだった。
あの日がそうだったように、このカフェはこの日もずっと変わらなかった。
給仕ロボや保安ロボの数が少し増えたが、世の中の大騒ぎなぞ知った事かとオーナーの禿頭は今日もぴかぴかで、そしてグラスを磨く手つきもいつもと全然変わらなかった。
ただ今日は珍しく噂しあう男たちがおらず、代わりに歌声が響いていた。
この店には小さいがステージがある。特にライブが開かれるわけでなく、気まぐれな誰かが壁にかけてあるナーダという弦楽器を抱えて弾き語る事があるくらいだった。今日もその気まぐれな客がいるようだが、ここしばらくでは珍しいほどのよく目立つ客だった。
黒髪のシンガー、そして銀髪のプレイヤーの二人。
シンガーは立って歌っていた。遠い星の巫女装束を着込み異国情緒全開であり、あからさまに外国人であった。
その傍らに座り、ナーダで名演を聴かせてくれているプレイヤーは、少し赤身がかった銀髪の正装の美女で、これまた外国人であろうと思われる。客は皆カウンターでなく思い思いの座席でまったりとドリンクを手にしていて、女たちの奏でる異国情緒溢れる遠い星の音楽をまったりと聴いている。
やがて曲が終わり、たくさんの拍手が響いた。ふたりの女は静かにおじぎをした。誰かが曲について質問したようだ。
「今の曲は、わたしの故郷の古い歌で『蘇州夜曲』と言います。とても美しい歌で、実は静かな大人の恋の歌でもあるんですよ」
聞けば少女の故郷は遠い遠い田舎の星であり、連邦にも加盟しておらず、それどころか宇宙文明も持っていないという。そして彼女は音楽どころか、もう二百年以上にわたって故郷の人間に会ってもいないのだという。
宇宙文明すらもない田舎の星であれば、おそらく帰る術もないのだろう。定期便も出ていないだろうし。
二百年もの孤独。それは、どんなにか寂しい事だろう。
幸い、傍らにいる女との関係はとても親密のようで、少なくともひとりぼっちではなさそうだった。ふたりは優しく微笑みをなげあっていた。
誰かが曲をリクエストした。そしてまた遠い星の音楽と歌声が流れはじめた。
その頃になると、いつのまにかカウンター席にはラビが座っていた。いつものようにマスターにミルクをもらい、見知らぬ美しい音楽に耳を傾けつつ渋い顔をしている。
「不機嫌そうだね、どうしたんだい?また失礼なマスコミでも出た?」
「いやぁ、今日はナイフギルドのおっちゃんに叱られてねえ」
なるほどとオーナーは頷いた。
どこの土地でもそうだが職人のギルドなんてところはイチゲンさんお断りな雰囲気全開である事が多い。おそらくラビに悪意的な取材をする不埒なマスコミなぞ一発でたたき出されてしまうだろう。
だが、今日はそのラビ自身がギルドの職人に叱られたようだ。何をやらかしたのだろうか。
「いやぁ、私のルーカイザーなんだけどさ、修理に出してたでしょう?」
「ああ。確か、軍の機動要塞相手にケンカ売って壊したんだっけ?」
「うん」
大きいとはいえ、たかがエンジニアナイフで機動要塞とケンカ。普通に考えたら頭を抱えそうな話ではあった。
「症状なんだけどさ、センサーとか計器類がまとめてぶっ壊れてたしブレードに僅かな歪みも出てたのね。で、そこはちゃんと直してくれたんだけど、そこまで派手に壊れたルーカイザーが持ち込まれたのは初めてだって事でね。ま、確かにルーカイザーって呆れるほど頑丈なナイフだし」
「ああなるほど。それで壊れた原因を説明したら叱られた、というわけかな?」
「うん。ルーカイザーは作業用なんだから戦争に使うなって」
「あっははは、そりゃごくろうさん」
「そう言ってくれるのはマスターだけだよぅ」
無理もない話だった。
何しろ、大気圏突入にも耐える機動要塞の特殊鋼材をぶちぬき、さらに柄から貫通しているブレードを通して超のつく高圧電流を流し戦艦の電子系を内側からふっ飛ばしたのだ。いくら銀河一頑丈とまで言われる超高硬度ナイフといってもルーカイザーは人間用のナイフである。白兵戦用ドロイドの馬鹿力で運用するようなものではないし、当たり前だが人間仕様のナイフで戦艦の装甲をぶち破る馬鹿者はいない。
しかし、恐るべきは職人たちであろう。
彼ら職人たちはドック入りしたナイフを総点検の末、だいたいどれほどの負荷を与えられ、そして歪みや故障が生じたかも漠然と理解していた。そして全滅した付加機器類と一緒にこれらも手直し、さらに強化まで施してあったという。今度は前より少しは頑丈でしょうというコメントなどつけて。
さらに、それだけの大修理にも関わらず規定通りの保守料金しか受け取ってくれなかったという点に至っては、さすがのオーナーも唸ってしまった。
「いやいや、さすがは我らがロディアーヌ屈指のプロ集団だね。そういや、彼らにルーカイザー寄越せとか中央のブローカーが詰め寄ったらしいけど?」
「きいたきいた、バッカだよねえ。大笑いされて門前払いだったらしいよ」
「へぇ」
ルーカイザーは金を積んだからといって買えるナイフではない。ロディアーヌ職人ギルド謹製であり、元々は身内で使うために商売抜きで作っていたものなのだ。そして今もその影響を色濃く残している。
上から目線で作らせようとしたりすれば、ただではすむまい。
「そもそもさぁ、チャラチャラした流行とか好きな人ならルーカイザー職人なんて質実剛健の極みみたいな仕事やってるわけがないじゃん。いくらなんでも空気読みなさいっての」
「ははは」
そんな会話をしていた時だった。ざわ、と穏やかな空気に不穏な色が混じった。
「ん?」
いらっしゃい、と言いかけたオーナーの口が不穏に閉ざされた。
それは四人ほどの男だったが、店の穏やかさとは明らかに違う空気をまとった人間たちだった。いや、ここはカフェでありその意味では色々な人間がやってくるのだが、そもそも特定の人間を探している時点で客とは雰囲気が違っていた。
彼らはラビを見つけるとドカドカと近づいてきた。腕についているマスコミ関係のタグや手にもつ機材を目ざとくみつけたのだろう。客席の不穏な空気が一気に濃くなった。
「おおいたいた。中央放送です。インタビューに答えていただけますか?」
一応は問いかけのカタチになっているが、口調も態度も全くそうではない。既にマイクらしきものがラビにつきつけられ、男たちはカウンターにラビを押し付けんばかりに包囲する。
「……あんたたち、ここをどこだと思ってるの?」
呆れたようにラビが突っ込んだが男たちは動じない。
「ほほう、女言葉がお上手ですねえ」
どうやらラビが男性であった事に突っ込みたいらしい。
いわゆる『男の娘』を小馬鹿にする者の定番というと、大抵は女の子女の子した装いを盛大にネタにして辛辣に責め立てるものだ。だが肝心のラビはというと今やトレードマークになりつつある旧軍の制服のうえ腰には無骨なルーカイザーナイフ、さらにエンジニア御用達の携帯端末までベルトポーチについている。これまた修理ずみの軍用ブーツと並んで、それはあまりにも無骨で男たちは出鼻からくじかれてしまった。
もっとも、ラビが好きな者ならそれが彼女の「普通」だと知っているから全然気にしないだろう。むしろ、ショートヘアから見える耳についている小さなピンクのアクセサリや、唇にうっすらとリップが塗られていたり、肌の色がいつもより綺麗な事に「かわいらしさ」「女の子らしさ」を見出せたはずだった。それに軍服をまとう体型だってよくよく見ればやっぱり女の子のもので、服装とのちぐはぐさが逆に愛らしさを演出してもいた。男たちの中にラビに対する先入観がなければ、あるいは女の目線をもって入ればすぐそれに気づけたろう。
だが男たちは所詮女ではないし、そういう微妙なおしゃれを見抜く目線すら持っていなかった。そしてラビに対して「元男のくせに少女の身体でいる変態」という悪意に満ちた感覚を持っていたからこそ、地味でささやかなおしゃれに気づくわけもなく、その軍服のごつさにすっかり騙されてしまっていた。そして可愛い顔も小さな身体も威厳や迫力を一切感じさせなかったので、男たちはすっかり増長してしまった。
「いやぁ探しましたよ。実は是非お見せしたいものがあって来たのですが」
「あんたら客じゃねえんなら帰りな。ここはそういう場所じゃない」
「うるせぇな中央放送だっつったろ?じじい」
オーナーが敢えて穏やかに諭しているというのに、まるで通じていない。マスコミだと言えば何でも許されると思っているのか。
男のひとりが写真らしいものをポケットから取り出し、ミルクを飲んでいるラビの目の前に見せつけるように突き出した。その手つきに既に下品さがにじみ出ている。
ラビは写真など見もせず、ぼそりといった。
「この人ここのオーナーだよ。あんたら出ていけと言われたんだよ?ほら出ていきな」
怒りが微妙に滲んでいる。彼らを味方と認識していない証拠だった。
「そんな事はどうでもいいですから見てくださいよ。これあんたの写真ですよ?」
知った事ではない。
「もう一度言う。今すぐここから退去しなさい。これは警告です」
「はあ?正義の味方だろあんた?市民に手をあげるってのか?」
小馬鹿にしたように男たちが笑う。
「市民?中央放送が?何冗談こいてんだか」
ラビは肩をすくめた。
「最後通牒。とっとと出ていきな。でないと叩き出すよ」
「ほうほう、正義の味方、その実は市民をリンチにかける変態野郎という事ですな、それは……」
だが、ラビが目を細めて『強制執行』に踏み切ろうとした刹那、意外なところから声がかかった。
「あらら、こんなところに連邦さんがいるんだ。何やってんのさ?」
さっきまでステージにいたはずの異国の娘だ。長い黒髪をなびかせ、左手をカウンターに置いて少し首を傾け、じっと男たちを見る。
連邦さん、の言葉に男のひとりがビクッと反応した。同時に、それと呼応するかのように周囲の空気が一気に険悪になった。
ロディアーヌの人間にとって現在『連邦人』は侵略者やテロリストと同義である。慌てるのも無理はない。
「連邦?何を根拠に」
「根拠もなにも。わたし、元惑星アルカイン市民なんですけど?まぁ実際に市民だった期間は短いんだけど、あなたのお顔がアルカイン中央放送に出ていたのも、よぅく覚えてるんですけど?」
くっくくくと楽しそうに笑う。
だがその笑みはラビには、どこかミミを連想させる不吉なものだった。だから男たちと同様にラビも一瞬身構えた。
と、その少女の傍らにさっきまでナーダを演奏していた女も移動してきた。
「お姉様、この連邦崩れたちがどうかされたのですか?」
どう見ても歳下にしか見えない相手に敬語。それは少女が高い地位の持ち主か、あるいは女より年上である事を示している。
女まで彼らを連邦と断言した事で、不穏な空気がさらに強くなる。
「どうもしないわ、ここカフェだもの。それにもうすぐ彼らは連れていかれるし」
連れていかれる?ラビは少女の言葉の意味をはかりかねた。
だが次の瞬間にその意味がわかった。ラビのセンサーに覚えのある反応がきたからだ。
ラビは小さく微笑むと、男たちの方を見て小さく微笑んだ。
男たちは思わず怯んだ。ラビの真意をはかりかねたからだが、
「あら懐かしい」
遠いものを見るかのように笑ったラビの視線の先には、さっき男のひとりが見せた写真があった。
そこに映っているのは、無精髭を生やしたエンジニア姿の初老の男。
「懐かしい?これあんたでしょ?つい最近までこの姿だったって情報だってあるんだよ?」
「やっぱりリモコンか?なら本体と話したいねえ。こんなお人形さんなんかじゃなくてさ」
そう言うと別の男が手を出して、ラビの顎を掴み上を向かせようとしたその瞬間だった。
「何をしてるのかしら?」
ひょいと伸びてきた女の手が、顎を掴むその手をたたき落とした。
「何しやがるこの女……!?」
文句を言おうとした男だったが、視線の先にいるレディース・スーツの女を見て凍りついた。そこにいたのがロディアーヌ警察の女署長だったからだ。
「あ、署長さん」
「!」
女署長の素性がわからなかった男もラビの言葉で気づいた。だがもう遅い。
「家主の退去勧告に従わない現行犯、それに公務執行妨害、とどめに婦女暴行未遂の疑いね」
ちらりと横の男に顔を向ける。
「それからあなた。入国管理局から通報と逮捕依頼が来てるわね。銀河連邦から観光ビザで入国してお仕事しているうえに罰金も支払わず、再三の退去勧告も無視しているわね?見つけ次第逮捕して強制退去、それでも従わない場合は重犯罪者として捕縛してよしとなってるわ。というわけで来てもらうわね」
「は?何言ってる何も問題ないはずだぞ、ちゃんと確認しろよ田舎警察が!」
いったい何様のつもりなのか、それとも女となめてかかっているのか。
だが女署長はかけらも動じない。
「問題ない?さぁ知らないわね。そっちがどういうツテで話をつけていたつもりか知らないけど、そもそも連邦人は観光以外の目的では入国できない、入国している者はすみやかに退去するようにという通達はとっくに届いているはずよね?
それを無視して、しかも犯罪行為を繰り返しているわけで……まぁ、あえて法の護り手として忠告するならば、これ以上罪の上乗せはしない事ね。強制送還でなくこの国の刑法に照らした場合、あなたの罪の量だと生きて帰れない可能性が高いものね」
ふふっとわざとらしく笑う。男が例の事件の関係者であろう事などはおくびにも出さず、あくまでも、いち犯罪者として処理するつもりらしい。
険悪になっていた常連の男たちの間に笑いが漏れた。
女署長の背後から次々と警官がやってきて、男たちを拘束していく。
「くそ、ふざけんな!犯罪者を養護すんのか公僕の分際で!」
「あら、聞き捨てならないわね。それってラビさんの事?もしそうならどのあたりが犯罪者なのか教えてくださるかしら?」
「何言ってやがる!こいつジジイのくせに小娘の身体に入ってるじゃねえか!それが犯罪じゃないとか警察官が言う事かよおいっ!」
「彼女はロディアーヌの名誉市民であり治安維持協力者なんですけど?社会に対して功績のある者は高機動ボディや異性のボディであっても使用が許可される、まさかそんな最低限の常識すらも知らないなんて言わないわよね?マスコミ関係者を名乗る以上」
口調こそ普段と変わらないが、女署長の顔には誰が見てもわかるほどハッキリと怒りの表情を浮かべていた。
「もう一度聞くわよ。あなたたち、それを承知の上で彼女が犯罪者だと公の場で罵倒しているわけ?答えなさい今すぐ!」
「……いや、それは」
男たちは困ったように顔を見合わせた。
「答えられないという事は非を認めるのね。では性差別に関する公衆嫌がらせの現行犯も追加して逮捕します。……良かったわね。現時点で連邦に無事帰る道はなくなったわ。それどころか、今までの犯罪もこの国で裁かれる事になるから……はい、おつかれさま」
「!」
警官たちはそろって会釈すると、まだわめいている男たちを捕縛して連れていった。
「畜生ふざけんなオカマ野郎!」
「機械人間しかもオカマ野郎なんかに人権なんてあるわけねえだろ!さっさとくたばれ汚らしいゴミが!」
声がだんだん遠のいていく。
「やれやれ。ああやってわめいた内容ぶんだけ罪科が膨れあがるって知ってるはずなのにね。ああはなりたくないものだわ」
女署長はためいきをついた。




