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Eyes22 鬼ごっこ 前編

カッコ悪いとのツッコミと自分も直さなければと思ってはいたので、全話名称変更をしました。


固定スキル→ベーススキル(BS、後に必要な部分を略語に修正)

固有スキル→オリジンスキル(OS、後に必要な部分を略語に修正)

5月27日


昨日はあの後、何か変わったことがあったと言えば、食事の席にレイアとフィアーユの二人がいたことだろうか?


食事の買い出しが出来なかった為にまた、スーパーへと足を運ぼうと家を出ようとしたら、二人が玄関先に待機していたのだ。




こんなことなら、デリバリーか宅配サービスでも頼んでおくべきだったと後悔しても、後の祭。


これを見越して、あのタイミングでのレイアの襲撃だったのでは、と少し勘繰ってしまうぐらいだ。


本来なら、昨日の一件で時間を使ってしまったために、早々に買い物を済ませ、秀一が雫に教える時間を短縮し、料理を作る予定だったのだが、二人に我が家のキッチンを占拠されてしまった。



何とも殺伐とした雰囲気の中、とんでもないことをフィアーユが口にしたことは今でも忘れない。


『雫さん、あなた()で今まで生活をしていた女性でしょ?殿方に料理も振る舞えないの?まぁ、今の世の中なら、男性も料理ぐらい作れて当然でしょうけどね……かといって、あまつさえ、しゅうにだけその準備させるなんてどうかしてるわ。これからは私達が用意するからね』


とまたもやフィアーユが爆弾を置き土産に残していってくれた。




とはいえ、今はそれどころではない。


タッグバトルについて、考えなければならない。レイアとフィアーユに関しては、今は隅においておこう。


「今回の戦闘での雫さんの特性は、スピードを活かした連撃です。合気術を活かす面もあるでしょうが、二人を相手にして、隙を見せずにそれができるかと言う問題点があります。今回は絶対に勝たなければなりません。でなければ、二人ともランクが下がってしまいます。危険な可能性はなるべく排除していきましょう。」


『前衛、後衛はどうするの?』


「雫さんは、自分がどちらに向いていると、直感で思いますか?」


『……後ろかなぁ?まだ、秀くんと違って実戦経験はないから』


「そうですか……まぁ、相手二人も実戦経験はないでしょうから、戦闘において警戒すべきは連携よりもオリジンスキルかと思います。」


『だよね。』


『ちょっといいかしら?』


とレイアと一緒にお茶を飲んでいたフィアーユから茶々が入る。


『フィアーユ、何でしょう?』


呼び捨てにした事に対して、雫の目尻と耳がピクッと動いた事を秀一は感じ取っていたが、明らかに年下なのに、さん付けで話をするのもおかしいのでここは押し通す。


『あんまり、連携について軽視するのは、軽率な判断だと思うわ』


「そこまで、軽視するつもりはありませんが……根拠は?」


『あの連中は常日頃から連携を行っていると思った方がいいわ。連携と言うよりも連帯責任の方が正しいかしら?GEでは当たり前かも知れないけど、簡単にしゅうや雫のように独り暮らしを許されてないわ。基本的に共同生活よ。囚人とまではいかないけどね……』


「戦闘で連携を行っていなくても、何となくの挙動で対応ができてしまうと言うことですね。」


『まぁ、そう言うことね。実際の所、絶対数がAEの方が多いのだから、そういう部分で補うしかないのよ。』


「AEの方が多い?GE1に対してAE1では?」


『しゅう、あまり言いたくはないけど、義母さんからの情報だとあなた一人に対して十三人だそうよ……意味わかるでしょ?』


「………………確かに、そうなりますね。」


厳密な人数を覚えてはいなかったが、よくよく考えてみれば確かにそうだった。


関連したほぼ全ての人間が対象か。政府が止めろというわけだ。


質問に答えてもらえるのは、ありがたいが昔の事はなるべく思い出したくはない。


『とにかく、連携に関しても、注意すればいいんだね。』


「そういうことになりますね。フィアーユ、新参の相手に対して、情報を得た状態で闘うのはフェアじゃないかもしれませんが、四の五の言ってられません。対抗策があれば、教えてもらえませんか?」


『今回だけよ。敵だって死に物狂いなはず、だって負け星二つだからね。向こうにもこっちにもいい経験にはなるでしょうけどね。う~ん……』


少しだけ首を傾げる。その姿は、やはり僕らよりも少しだけ幼くは感じる。


『むっ……しゅう、失礼なことを考えないっ!……そうね、特にいい案と言うのはないけれど、こっちがされたら嫌なことをするってとこかしら?どんなことをされたら、闘いづらい?』


二人で顔を見合わせ、考えてみる。


『戦力の分断かな?どうにかして障害物とかで一瞬の隙を作るとか?』


「そうなると、スピードが上回っている雫の動きになりますね。雫さんはスピード特化ですから、パワーは多分、僕の方が多少上なんだと思います……」


『まあまあ、いい線いってるかな?逆に分断されないように注意しておかないと、分断しようと思った側が切り離されて孤立するわ。分断された相方は蜂の巣ね……』


蜂の巣か……刹那の十数回の連撃を耐えきる自信はない。最悪の場合はセルフサクリファイスに使うか。


『しゅう……止めなさいとは言わないけど、普通の闘い方を覚えなければ、いつかはじり貧になるわよ。』


「そのつもりですよ。あればかり頼っていたら、すぐに対応されかねませんからね。」


『わかってるならいいわ。』


「前衛が僕の役で雫さんは後衛で隙を見て切り離し……これでいきましょう。」


『わかった……』


『一つ忠告しておくわ……アナタのオリジンスキルは、攻撃力、速度だけを見れば、多分同ランク内最強よ。けれど、乱発を繰り返していれば、いつかは死ぬかもしれない……』


僕の意志を確かめているのかもしれない。そのスキルを所持している自覚はあるのかと……


『その覚悟はしておきなさい。それが出来ないのなら、オリジンスキルを使わないで勝つ方法を探し続けることね。』


「もちろんです。ところで、フィアーユ…お願いがあるのですが…今日は暇ですか?」


『なによ…突然』


少し怪訝そうな顔をする。あまり考えていることなく、即座に発言をする難しさ。フィアーユ相手には、ノータイムで話をしなくちゃいけない……なかなかに大変だ。


「暇ならですが、今日の僕らの訓練相手とそのあと雫さんをパートナーに僕と対戦してもらえませんか?」


『特に何かしなきゃならないことはないから構わないわ……オリジンスキルは使用しても構わないのかしら?』


「スキルの継続的使用は辛いかもしれません。ですが、出来れば、どちらもフル使用でお願いします」


『ベーススキルは、攻撃力だけかなり抑えれば良いって感じかしら?速度は雫のスキルがあるから抑えないでいくわ。防御力はコントロール出来ないから除外ね』


「はい、それでお願いします。雫さんも納得いかない部分もあると思いますが、お願いします」

『なんでって思うけど、理由があるのね。ただ………………何でもない』


「レイアも構わないかい?一緒に訓練に参加して欲しいんだけど……」


『ん??』


いきなり話を振られて口に含んだ物をモゴモゴしていた。


「はい、お茶を」


『ング、ゴックン……ありがとうニャ。で…何の話ニャ?闘いに参加するってことニャ?』


「えぇ…そう言うことになりますね。」


敢えてレイアを選択した意味はレイアとのわだかまりを払拭したかったのが大きな理由の一つである。


『あちしは闘いになると、手加減できないニャ……それでもいいかニャ?』


耳と尻尾が垂れ下がってしまっている。うん、わかりやすい。いいバロメーターだ。


「一応、ランク確認させてもらえますか?」


『ニャ?黄玉だニャ。』


闘いだと思ってしまうと本気になるってことか…そう言えば、走り出したレイアは止まらないってフィアーユが言ってたっけ。闘いを想定するから悪いのかな?


「う~ん……発想を変えましょうか。みんな、突然ですが、鬼ごっこをしましょう。」


『『『鬼ごっこ!?』』ニャ?』


みんなから避難の嵐、もちろん、そんなことは想定済みだ。


「えぇ、その代わりスキルをフルに使用した本気のおいかけっこをね」


『そう言うこと……』とフィアーユは納得してくれたが、レイアと雫の頭には??が浮かんでいる。


「フィアーユ側が鬼で僕側が逃げる……二人ともが捕まったらアウトでそこからまたリスタート」


『逃げる側からの妨害はありで、鬼側に触れる意思がなければ、逃げる側が妨害の為に触れた場合、それはタッチしたことにはならないということね。』


「そのルールで大丈夫なら、一番効率がいいと思います。」


『『???』』二人の頭はこうなっていても当然である。


フィアーユは、秀一の思考を読んで話をしているし、秀一はフィアーユが自分の思考を読んでくれると思いながら話をしているのだから、二人に理解できるわけがない。


「えっと、詳しく話しますね。つまり、通常の鬼ごっこであれば、逃げる側が鬼の体に接触した時点でアウトになりますが、今回の場合は、逃げる側が故意に接触した場合は、ノーカウントということになります。鬼は自分で捕まえにいった確証がない場合には、ノーカウントということです。」


『攻撃を受けないようにする訓練だね?』


「そうです……それと自分の味方を護る訓練も兼ねていますので……つまり、自分から触れる分には問題ないんです。相手から触られなければいいんですよ。……ところで、レイアは鬼ごっこってやったことある?」


『やったことないから、よくわからないニャ……』


「とりあえず、僕と雫さんを捕まえればいいんだよ。ちょっとわかりにくいと思うから、やりながら覚えてくれるかな?二回目は僕とペアだから、その前に詳しく教えるよ」


『捕まえるだけでいいニャ?倒さないニャ??』


「えぇ、僕と雫さんを捕まえるのが、レイアの仕事です」


『わかった、出来るだけ頑張ってみるニャ』


『じゃあ、どこかのフィールドを貸し切った方がいいわね。義母さんに連絡してみるわ』


とその言葉に反応して、雫が秀一に尋ねた。


フィアーユも雫が、一体何を聞きたいのかわかってはいたのだが、スキルの事については、雫に話していない為、あまり突っ込んだ心の中を掘り下げるつもりはないようだった。


『秀くん、秀くん、フィアーユが言ってる、母さんって一体誰?』


「榊原あかり博士ですよ」


『は?だって……え?』


「本当のお母さんではないですよ。育ての親代わりってやつらしいです。詳しくは教えてもらってないですけどね……」


『そういうこと……そうよね。じゃなきゃ………』


何となくではあるが、雫の言いたい事は理解できた。前に言っていた日向の意見と同じであろう。


『フィールド一区画、貸し切れたよ……時間の指定があるから二時間くらいかな?市街地のフィールドだけど問題ない?』


「えぇ、それで構いません………あっ!そうだった。空矢さんに連絡しなきゃいけなかったんだ。ちょっと待って下さい」


本日も空矢との訓練になっていた事を昨日の一件からすっかり忘れていた。目の前に積み上げられた問題に悪戦苦闘していたのが明白だ。


『しゅう、ちょっとまって………それってギルドメンバーよね?』


「そうですけど、それが何か?」


頭を捻って、虚空を見つめ、また榊原先生と話し始めていた。


『ギルドの話なんだけど、私がどこかに所属すると問題発生するのかな?別にいい?……ん?エラーの子達?……そうね、多分、時間があまりなくなっちゃうと思うから、一か所に集めてくれる?まとめて相手になるから……』


エラーの子達?まとめて相手になる?何の話をしているんだろうか?


『問題ないなら、所属するね。手続きはこっちで済ませるから安心して……うん、うん、じゃあまたね』


通信を終えたフィアーユがこちらに向き直ってすかさず口を開いた。


『時間がないわ。しゅうが所属してるギルドが集まってる所まで連れてって』


「いいんですか?というか空矢さんがなんていうかわからないですけど……」


『気にしないで、殴ってでも入るから』


「暴力沙汰だけは勘弁して下さいよ…」


『大丈夫よ。隙を付けるのはしゅうだけだから……』


「……わかりました。どうなるかわかりませんけど、連絡を取ってみますね」


『お願いね、よろしく…』


尻すぼみになるところを見ると、あまり自信がないのだろうか?そう思いつつも、空矢へのチャンネルを開いた。


十数秒程の待ち時間、怒号が僕の耳にだけ届いた。


『しゅう!!てめぇ、どこで油売ってやがんだ!』


僕が悪いのは、一目瞭然だ。だが、ダメだ…聞く耳を持ってらっしゃらない。



「チャンネルフルオープン」



『は?何だって……あん?…………って…おいおいおい!何だってあんたがそこにいんだよ!』


思った通りの反応をありがとうございます。フィアーユはやっぱり強いらしい。





三十分後、僕等は、いつものカフェにいた。


『そういち、何か、文句ある?』


こわっ!威圧的!優しくない!あれ?これが本性?


『しゅう、後で話があるから…首を洗って待ってなさい。』


手遅れだった。感情が駄々漏れだった。顔に出した訳じゃないのに、考えていることを読まれて、この反応は結構辛いものがある。


そこまで、本心で思っていたわけではない。


フィアーユの目が本気だったのが、秀一には見えてわかったからだ。


だけど、出逢ってから、僕にこんな視線を向けたことがあっただろうか?


『わぁった、わぁったよ、ギルドに入ってくれるてぇのは、こっちとしちゃあ、確かに大歓迎だ。だが、しっかりした理由が知りてぇ。これだけに関しちゃあ、無返答だきゃあ止してくれ』



フィアーユが秀一に視線をうつすとメッセージが届いた。


P:ここで真実を話してもいいの?



ん?P?ってなんだ?



P:それは今度教えるわ。


秀:真実って何です?


P:話せる内容じゃないんだけどね…どうしようかな。義母さんを巻き込もうかな。この一件に義母さんが関わってないわけじゃないしね。


秀:語れない内容であれば、仕方ないと思いますが、あとで聞いても大丈夫ですか?


P:秀が今現状で何のことかわかっていないんだったら、話せる内容じゃないわ。その内、わかるから放っておいても大丈夫よ。


そのうちわかる?一体どういうこと?


『依頼を頼まれたのよ』


と空矢に向かって話し始めるフィアーユ。秀一に語る事はもうないとばかりに回線は遮断された。


『依頼だぁ?いってぇ、誰からだ?』


『私に指示出せるのなんて一人しかいないでしょうが……』


『……そりゃあそうか、そんなら、しゃあねぇな…あの人にゃあ、俺らも助けられてっからな』


フィアーユは敢えて名前を語りはしなかったが、それだけ榊原が力を持っていることがわかる。


『で?秀一と一緒にいたってぇのは、いってぇどういうこった?』


『一エリア貸し切って鬼ごっこをするためよ。』


『はぁ!?貸切で鬼ごっこだぁ!?』


『まぁ、訓練のためだけどね』


『鬼ごっこで訓練か……』


空矢は腕を組みつつ、十数秒程思案していた。


『連携取るためなら、どつきあうより、理に適ってるっちゃあ適ってるのか……』


「はい。そう言うことなので、今日の訓練はそちらをメインにやるという話を先ほどまでしていました。遅れた事と連絡をいれずにいた事申し訳ありませんでした」


とフィアーユは頭を下げそうにないので、秀一が頭を下げた。


『気にすんな。コイツに逆らえるのは、バラちゃんぐれぇなもんだ。頭をあげな』


手をヒラヒラと動かし、別に気にしてないと秀一謝罪をとかせた。


『それより、俺等もついていっても構わねぇか?それだけ広く借りれんなら、空きスペースもあんだろ?他のメンバー連中の訓練調整を少しやらせてやりてぇ』


『別に構いませんよ、一エリア貸し切ってはいますが、そこまで広い範囲は使用しないはずです。』


『そりゃあ、助かるぜ。流石はES最強と権力保持者だな。』


やはり、フィアーユは最強だったのか……それにしても、榊原先生のここでの権力はやっぱり強いんだな。


秀一自身には、そういったステータスがない為、こういった事でフィアーユや榊原が色々動いてくれるのは正直助かるのだが、何故、自分の為にここまでしてくれるのか?と思わない訳ではない。


『そういち、ギルド加入申請許可は任せていいかしら?』


『自分で……いや、何でもねぇよ。副長不在だから、フィアーユおめぇやってくれるか?』


『は?お断りよ。私は平でいいわ。しゅう、あなたがやりなさい』


「へ?入ったばかりの僕が何故ですか?」


『いつか、その理由がわかるわよ。』


フィアーユは解答をくれず、何とも投げやりな返答を寄越した。


秀一も空矢も顔を見合わせるが真意が掴めずに微妙な雰囲気が流れた。


和気藹々といつも話をしているギルドメンバーですら、フィアーユの姿に発言できるものは、一人を除いていなかった。


『フィアーユ~、だめだよぉ、皆がドン引きしちゃってるよぉ』


間延びした日向の声に周りの空気が少しだけ弛緩した。


『ひなた……そこまで威圧的にしたつもりはないのだけれど……』


『空矢さんにたてついてるだけでぇ、皆がフィアーユを恐がってるよぉ……』


『…………みたいね。ふぅ、別に喧嘩をしに来た訳じゃないわ。そこは安心してちょうだい。そういち、あなたもなにか言って頂戴…』


『おっ、おう』


空矢はフィアーユにタジタジでいつもの威厳はどこへやらといった感じ。


『仕方無いわね』と空矢に握手を求めた。


流石に場を収めることには、格の違いなど関係ないと伸ばした手に素直に空矢は受け答えた。


お互いに握った手を離し『これから、よろしく』とニコヤかに笑いあっていた。


『貸し切った時間は14時から16時までの二時間よ。』


『そうか…ちっとはえぇけど飯は……』


空矢の言葉を遮るかのように少し強めの声をだした。


空気が先ほどよりも軽くなったとはいえ何時ものように、大声で話していたわけではない。


フィアーユの透き通った声が店内に響く


『レイアっ!』


室内には入らずに外にいた番犬改め、番猫が勢いよく入り口の扉を開いた。


『ニャっ!長話は終わったニャ!?』


退屈だったんだ、とわかるように『長話』と言い切れるところが素晴らしい。


その姿に絶句するもの、目を丸くするもの、恍惚するもの様々な奇異の目をレイアに向けた。


『マスター、厨房借りるわよ』


その言葉に動じる様子はなく、声の主に一礼すると


『フィアーユ様、どうぞお使いください』


『レイア、いらっしゃい…』『ニャ!』


その言葉を残し、フィアーユとレイアとともにマスターも厨房へと消えていった。


ギルドメンバー全員が『え?食事はどうすんの?』って顔をしているがフィアーユはそんなのお構いなしだ。


「ちょっと様子を見てきます」と空矢さんに伝え、雫さんには目配せをしておく。





何となく予想は付いていたが、厨房を覗き込むと中華鍋を振り回すフィアーユと大鍋で大人数のスープの支度をし始めているレイアを発見した。


やっぱり、そう言うことか…こんな時こそ雫さんを呼ぼう。


メッセージを雫へ送信する。



秀:雫さん、雫さん、ちょっと厨房まで来てもらえますか?


雫:え?秀くん、どうかしたの?


秀:あの、見てるだけでも勉強になると思うんで、お願いします。


雫:勉強?ぅん……わかった。



厨房からホールまでそれほど距離が離れているわけではない為、直ぐに雫が厨房へと来た。


「雫さん、僕の手伝いをお願いできますか?」


半戦場と化しつつある中を覗き見て、言わんとしている事を理解してくれた。


『あっ、そういうことか……わかった!』


と素直に頷き、少しオドオドしつつも僕の後ろについてきた。


「フィアーユ、レイア、必要ないかもしれませんが、僕等も手伝います」


『しゅうはやっぱり気がついちゃったか……助かる。お願いするわ』


『フィア、これでいいかニャ』とフィアーユに味を確認してもらいながら、サクサクと作業を進めていた。


「ところでマスター、食材は何を使ってもいいんですか?」


『今から使う食材全てをフィアーユ様に買い取っていただくという形になっております。どうぞ、ご存分に…手伝うことがあれば、何でもお申し付け下さい』


とマスターが頭を下げた。


こんな事してもいいんだろうか?それにしても、やることが豪快だなぁ。でもそんな所もフィアーユらしいか。


「フィアーユ、何を使ってもいいのかい?」


『なんでも、お好きに。こっちの援護は良いから何か好きな物を作って頂戴。』


フライヤーに手をだし、フライパンを操りつつ、こちらの声に受け答えする。


「了解!」


勝手気ままにやるのもどうかと思い、二人の手元を覗き見てみると主食が少し少ないのかな?と判断し、洋食をメインとしているここでパスタをチョイスする。


「では、パスタで主食を用意します。」


『任せて大丈夫ね?』


「二人で何とかしますよ。」


『ぅん…頑張る!』


この人数分を作るのは骨が折れそうだ。でも雫さんが覚えてくれるだろう。適応能力はそんなに低くない。直ぐに対応してくれるはずだ。


「よし!じゃあやりますよ!!」


『ぅん!任せて!!』


ギルドメンバーはどんな顔をするだろうか?


そんな顔を想像しつつ、戦場へと雪崩れ込んだ。

いつもお付き合いありがとうございます。鬼ごっこまだじゃねぇかってっ突っ込みあると思います。前編ですのでご了承ください。


名称変更等がまだまだ必要です。


特にランクに関してなのですが、いい案が浮かばず、現状でも色による呼び方になってしまっています。作者も正直ダサいなと思っています。いつかは変えるつもりでいますので、申し訳ありませんが、今しばらくお待ちください。


次回更新日は10月25日08時を予定していますが、もしかしたら早まるかもです。よろしくお願いします。

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