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Eyes16 イレギュラーバトル

PT履歴を確認すると、30000PTの追加を確認する事が出来た。教官の言っていた通り無茶はすべきじゃないと、自分に言い聞かせた。


次の戦闘は、雫さんの戦闘日に合わせる。当たり前のことだが、その為の事前準備の戦闘だ。


『シュウ、じゃあ行くか。』


「そうですね。Emergencyだしておきますか。」


『あ?何の話だ?救助信号はだしてんだ、問題ねぇだろ。』


救助信号?やはり日本語だ。Emergency callじゃない時点で、何かおかしいということに気が付いた。


以前、榊原先生が言っていた。特別製という意味を考え、後で質問にすることに決めた。色々と不可思議な点が多すぎる。


「わかりました。雫さん達もこちらに向かってきているようですし、行きましょう。」


『何とか動けんのか?』


「多少痛くったって、動けなくったって動かしますよ。初動の幻痛と言いますか、それ自体は治まっていますし、痛み自体は、先程の敵から受けたダメージのみのはずですから、大丈夫です。それに心配させてしまっては元も子もないですからね」


口から出まかせ幻痛などではない。本当に痛みが秀一に跳ね返ってきている。


遠くから二人が走ってきているのが見えた。今回のフィールド範囲が広かったというのもある。そう簡単には合流は出来ない。


動かずにいたら心配されてしまう。こちらから接近しなければ……


『しゅうく~~ん!!』『リーダーー!』と近づきながら呼びかけてくる。


「いきましょう。」『あぁ、そうだな』と顔を見合わせて、重い身体を引き摺る。平静を保つ事を忘れないように………





今日の戦闘はこれにて終了。満点とは言えないが、満足のいく結果にはなった。


『大丈夫?怪我したの?』駆け寄って来る雫さんをまずは安心させなければならない。


「多少、完全には防御しきれなかったダメージが残っていますが、思ったほど、深刻ではなさそうです。」


と努めて笑顔で微笑んで見せる。自分の後方を確認すると、今日の対戦相手のAE発症者が搬送される所だった。


『だからつって、あんまし無茶しすぎんのも考えもんちゃぁ考えもんだな。……まぁ、お疲れ』


そう言いながら、あっけらかんとした顔の空矢さんに肩を叩かれた。


辛勝とまではいかないが、一歩間違えば、完治不可能な脳への障害や下手すれば死亡という可能性を容易に想像できた。


内心ホッとしている自分がいるのは、ここだけの話。


「こちらこそ、無理なお願いにご協力ありがとうごさいます。」


『気にすんな、勝ったんだからいいじゃねぇか。それに俺は今回の二勝でランク昇格だ。それなりに収穫もあったしな。お互い様だ』


回りを見渡すと、戦闘を終えたばかりの人たちが徐々に引き返して来ていた。


『ここで話してても仕方ねぇ、一旦、外に出んぞ。』


入れ替えの人達が来る頃には、時間がまだあるが、なるべくはやく捌けておいた方が無難だろうと足早に地下フィールドを後にした。


次の戦闘も共闘。地下で闘うことになるのは、間違いない。



地形の確認をしておきたかったがそれどころではなさそうだ


榊原先生に許可を貰い、バンクにアクセスをかけてみよう。全てのことは把握出来なくとも、多少は役に立つ情報はあるだろう。




地下から地上へ出ようとする直前。突如、警告音がけたたましく鳴り響いた。


非戦闘中のGE各員にと言う緊急メッセージが自動で開示された。




緊急通達


1330 闘技エリアにて、暴走者発生、余力のあるものは直ちに集合せよ。場所は中央塔周辺。


つい二、三分前の話だ。そのメッセージに逡巡していると


『っ!!落ち着いたと思ってたら、軍の連中へましやがったな!!』


メッセージを確認したのか、空矢さんが全力疾走で僕らから離れ中央塔へと向かおうとしていた。


「空矢さん!!」


『死にたくなけりゃあ、ついてくんな!!』


「どういう意味ですか!!」


無意識に自分の身体が動いていた。今は、空矢さんについていくしかない。


あんな緊急通達を送ってくるなんて、本当にトラブルがあったに違いない。


雫さんがついてきているのが、確認できたため、雫さんに緊急回線を開く。


「雫さんはついてきちゃダメだ。戦闘に制限がかけられてて、力の発動が出来なくなってる。只の人間がいっても、やられるだけです!」


『えっ!なんでそんなことになってるの!』


「榊原先生が緊急措置をとったと言っていました。限界日まで闘えないようにと……」


『そんな…………』


「大丈夫です。何とかしますから!絶対に安全圏まで退避してください!……申し訳ありません、接敵まであまり時間がありませんので、回線を切ります!」


『……まっ、待っ……』ブツッと回線を遮断した。


(すいません、雫さん……アナタにここで死なれる訳にはいかないんです)


ビル群が立ち並ぶフィールドを走り続けていると、突然空矢さんが全力疾走をストップする。


「空矢さん!!敵は……くっ!……」


『認証!!』



迷っている暇はないのか!!


「仕方無い!!」


3D表記されたバトル開始を僕も承認する。


フィールド形成が開始される。僕と空矢さんと禍々しい気を放っている血染めの女性が一人、少し離れたフィールド外に血だまりが出来ていた。


瞳の色彩が明らかにおかしい。通常ならば片方のみに現れるESが両眼に現れている。しかも青玉と紅玉だ。向けられた視線には、人の気配は感じられない。獰猛な肉食獣とでもいえばいいだろうか。


『秀一!度胸は認めるが、増援は期待すんな!誰か来てくれりゃあいいが、時間が掛かる。それにあれとは誰も闘いたくなんかねぇ!』


「敵なんですか!?」


『ちげぇ、アイツはGE発症者だ、ちっ、話している暇はあんまねぇ!!いくぞっ!!』


「『リンク、バースト!!!!』」


女性の身体がブレる。


『がああああああぁっ!!!』


これは、僕と同じ!?本能的に近くにあった建造物から身体を離す。


間一髪で回避に成功したが、僕がいた位置にあったコンクリートは、一薙ぎで抉り取られ跡形もない。粉状になったコンクリートが空を舞う。


離れた位置に退避できたのか、空矢さんから回線が繋げられた。


『無理はすんな!相手を人間だと思うな!遮蔽物に隠れながら、距離を何とかとれ!!』


「わ、わかりました、やってみます!」


距離を離しに掛かるが相手の速度が速すぎ、なおかつ、こちらの速度がそれほど速くないため、虚を突いて逃げようにも、難なく追尾されてしまう。


彼女から放たれるすべての攻撃が一撃必殺。逃げ切る事は出来そうにない。空矢さんから何度か回線が開かれるが、注意をそちらへ向ける事は絶対に出来ない。


ほんの少しの不注意で僕は死ぬ。これは確定事項だ。この技は、セルフサクリファイスと同系列の業であることは、間違いない。


つい先程までこの力に頼り、戦闘を行ってた秀一だからこそ、回避が可能であり、理解する事が出来た。他の人間では初動すら掴むことは出来ない。


恐らく、先程の戦闘で目が慣れて、動体視力が一時的に人間離れしてしまった部分もある。


数発の攻撃が触るか触らないかの紙一重の所で交わしている所為か、服は既にボロボロ……彼女の正気だった頃の訓練の賜物なのか、狙ってくるのは、一撃必殺の急所ばかり、威力が僕のスキルよりも段違いだ。


どうなるかはわからないがやるしかないか……


「セルフ、サクリファイス!!!」


セルフサクリファイスは代償を伴う業である。相手に与えたダメージが何%かは定かではないが、自身の身体に跳ね返ってくるのだ。


今、目の前で起こっていた彼女の業は自我を保てないところとダメージが跳ね返っていないところ以外は、セルフサクリファイスと殆ど変わらない。攻撃に入る前のほんの少しの溜め動作がまんまそっくりである。





身体が軋む、先程の戦闘で加わったダメージがもろに伝わって来る。


『馬鹿野郎!!もう使うなってつっただろうが!!』


注意を引き付ける為、近くに待機していたらしい。軽く溜めを作ってしまった、時すでに遅し、こちらは攻撃モーションに入っている。溜めを作った時点で攻撃をする以外に手立てはない。


「うおおおおおおおおおおおおおおぉっ!!!!」


全力を込めた一撃、彼女は突然姿を現した空矢さんに注目している。


『……!?ぐがあああぁっ!』


堅い!!!でも、貫けないガードじゃない!!!振り抜いた僕の掌打が鳩尾に突き刺さる。


『ぐあああああああああああああああぁっ!!!』


僕の攻撃を受け、彼女の体が何度もビルのコンクリートを突き破り、漸く止まった。


でも、ガードが堅過ぎた………


少し遅れて、僕の体に異変が起こる。車に轢かれた時の様なとでも表現すればいいだろうか、身体が内部と外部から破壊しつくされる激痛が僕の体を駆け巡り……全身から血が噴き出した。


「うああああああああああああああああああっ!!!!…………あっ…………」


セルフサクリファイスの痛みは幻痛などではなかった。


僕の意識は遠退いていった。






~~~~~~~~~~~






フィールドの手前まで来てしまった。秀くんに絶対に来ちゃだめだって言われた。


だけど、絶対に引き返すつもりはなかった。今、引き返したら絶対に後悔する。何故か、そう確信できたからだ。


いつもの薄緑色のフィールドと違い藍色をしている。


その異変と中にある禍々しい気配にそこから動くことを一瞬躊躇ってしまう。


アクセサリーに触れてみるが、無反応だ。一旦、榊原先生に通信を行い、一時的にでも戦闘許可を得るほかない。


「先生、雫です!!今すぐに戦闘許可を出して下さい!!」


『唐突にどうしたのよ……まさか、あなたたち、暴走しているあの子のところにいるの!?』


「秀くんが先に現場に到着しています。戦闘の音が離れたここまで聞こえます。恐らく、もうすでに闘っているはず……早く解除してください!!」


目上の人に対しての敬語、合っているかどうかは二の次にして、早く秀くんのところへ向かわなければならない。


『戦闘許可は今回だけよ。一時的に解除するわ。無茶はしないで、暴走している子が止まればいいだけ、無闇に攻撃しない事、いいわね!』


秀くんが無事なら私はそれでも構わない。


「わかりました。ありがとです……」


解除戦闘許可を確認しすぐさま、戦闘準備に取り掛かる。


『こっちもフィールドの形成とかで余裕がないから回線を切るわ。本当に無茶はしないで』


「……ぅん!行ってきます!!」


待ってて、秀くん。今行くから………





ドゴォーーーーーーーーーーーーーンというけたたましい音が聞こえてくる。そんなに遠くない。スピードスターを使っての全力疾走。




間に合わなかった…そう間に合わなかった…私は間に合わなかった……



血だまりの中に秀くんは倒れ込み、空矢さんが秀くんに寄り添い心臓マッサージをしていた。




「いや……いや……いやああああああああああああああああああぁっ!!!」


『っざけんじゃねぇよ!!おめぇが死んじまったら、残された人間は一体どうすんだよ!!!』


拍動は戻らない。無反応……


私の頭の中は、真っ白になっていた。


秀くんが死ぬ?想像していなかった。ここはどんなに怪我をしても死なない場所じゃないの?


お願い、お願い、お願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いおねがいおねがいオネガイオネガイオネガイ、お願いだから!!!!!誰でもいい、秀くんを助けてよ!!!!!!!!







目の前が暗転し、突如、私は無意識に現実から目を背けるように瞑った。






………Song For You





えっ?何?これ?あなたのための歌???




これは、スキル!?今、ここにきて何かあるんだったら、何にだって私は縋る!!!




「Song For You!!!!」


意識に勝手に入り込んでくる歌詞。これを歌えってこと?なんでもいい、どうでもいい。思うがままに私は声に出した。




神のみわざ、その例えが正しいのだろうか?



『おおっ!!!なんだこりゃあ!!!!』



歌を開始してすぐ、秀くんの体が宙に舞い上がり、まばゆい光に包まれた。その光の発光に、心臓マッサージを繰り返していた空矢さんが軽く弾き飛ばされる。反動で秀一の身体が横を向きながら浮かんでいく。


中で何が起こっているのかは全くわからない。光の周囲が明滅しながら、周りから光が秀くんのいるあたりへと吸い込まれていく。


脳内に発生していた歌詞が全て消え去っていた。身体に集積される倦怠感を自力で何とか振りほどく。


意識を覚醒させて、目を開ける。秀くんの周辺には、まだ光が集まっている。


すると、そのまばゆい光が一層激しさを増し、秀くんの体へと光は全てのみこまれていった。




『……げほっ、げほっ、がはっ』


秀くんの口から血が吐き出されていた。気管に入っていた血を吐きだしたのだ。


「秀くん!!!!!」


走って秀くんに駆け寄る。意識はしっかりとは戻っていないが、秀くんが戻ってきてくれた。


『おいおい、何の冗談だ、こりゃあ……心臓が止まってたんだぞ……』


唖然としながら、空矢さんがボソリと呟きながら、秀くんと私の方を視線が行ったり来たりしている。


『ぐがあああっ!』


『マジか!!まだ対抗策がついてねぇってのに!!』


フィールド壁が消えてない時点で気がつくべきだった。暴走した女性がまだ朽ちていなかった事を


『待ちなさい、立花りっか!!!』


突如として現れた女性の声に皆がそちらを向いた。


彼女の掌には、一つのシルバーリングがあった。一体彼女が何がしたかったのかは、私にはわからない。


その内、シルバーリングを見つめ続けていた暴走していた女性がもがき、苦しみだした。


『がっ!!ぐっ!!がああああああっ!!』


禍々しかった気が少しずつ晴れている??


『戻ってきなさい!!あなただけが苦しまなくってもいい!!辛いなら私達がみんなでアナタを支えるから!!』


周囲に人影がちらほらと確認する事が出来る。


こんなに人はいなかったはず……あの人についてきたのかな?


『ああああああああ……あぁ…………』


暴走していた女性がその場に崩れ落ち、意識を失った。


思考が追いついていかないが、徐々に異質だった空間が元に戻っていき、気がついた時にはすでにフィールド壁は完全に消失した。


落ち着いたなら、気にする事はそっちじゃない!


秀くんが大丈夫かどうかを確認するのが先決!!


ホッと胸をなでおろした。意識の覚醒は見られないが、心臓の拍動を自分の手で確認し、息をしている事も確認できた。とりあえずは一安心かな?




Emergency callを起動すると、待機していたのか、それほど待たずして、担架が運ばれてきた。


運ばれる場所は、CEエリアのようだった。付き添いが許されたのは、私のみ。


本来は許されることではないが、特別に榊原先生から許可を取りつけてくれたらしい。


私のスキル何であんな事が出来たんだろう?不思議に思いながらも、秀くんの付き添いに同伴した。

いつもお付き合いいただき誠にありがとうございます。


うまく戦闘風景が描けているのかが、凄く不安です。


描写等を多めにした方がよいのではないかという指摘を頂いているのですが、うまく描けていないと思いますので、修正を入れるつもりでいます。


次回の更新は、9月13日予定です。よろしくお願いします。

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