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Run away! 2

台風みたいな君に僕は怖気づく。

作者: 貴幸

「アカラギくん、おはよう。」



「おはよう。」



誰かはわからないけど一応こたえる。

顔を見ず携帯を眺めているからわからないのは当たり前だが。

はやく卒業して、働きたい。

というか今は帰る時間なのにおはようなのか。



「アカラギくん、あのさ。」



さっきと同じ声だ。

さすがに気になって隣を見る。


…誰だろう。



「あの、誰ですか。」



沈黙。



「あ、さっき自己紹介したばっかりなんだけどな…!井上香織だよ。」



「井上さん、何か用でも。」



ちゃっちゃと終らせたい。

はやく帰りたい。



「あのね、アカラギくんと話した事ないから話したいなって。」



「ナンパするなら他の男にした方が良いと思いますよ。」



俺はリュックをしょった。



「ナ、ナンパじゃないから!アカラギくんっていっつも携帯いじってるよね、スマホ中毒?」



「うん、そう。じゃあ。」



「あああ待って待って!」



「うぐっ!」



容赦無くリュックの上のぴよんとなってる紐を引っ張ってくる。



「わかったよ…じゃあ五分ね。」



「アカラギくん優しい!」



お前が怖いだけだよクソババア。

俺は諦めて椅子に座る。

隣に座ってきた。



「何、みんなと話したい系女子なの?良い人系女子?」



「いや、アカラギくんって暗いオーラはなってるのに人と話す時、すごい笑顔でしょ?面白いな〜って。でも今私と喋ってる時こんなに不機嫌そうなのは何故?」



はやく帰りたいからだよ…



「そうゆう性格なんです。」



「敬語やめてよ、同い年でしょ?」



お前の方がおばさん、と言いかけた口を止める。



「そうですね。五分たったので帰らさせていただきます。」




「ねぇ、明日も来るでしょ?」



絶対行かない。








「なんでだぁ…」



「アカラギ、どうしたの。」



ヒロキが声をかけてくる。



「明日行きたくなかったのに、明日に限って行かなきゃいけない日だった…」



「アカラギが行きたくないなんて珍しいね。」



ああ、珍しいさ。

今まで人と濃密に関わらないよう心がけでも他に話しかけられたら笑顔で応答する爽やか静か系を目指していた俺には人間関係で行きづらい日なんてなかった。



「あのクソババア…。」



「アカラギ、女!?女なの!?」



「ガキは黙ってろ…。」



遅めにいって女と交わらない席に行くしか無い…。



「ねぇ、アカラギ名前は!?」



「……忘れた。」









「あ、アカラギくん!こっちこっち!」



遅くにいった。

席はところどころ空いている。

そしてベストポジションの隣を用意していてくれた人が一名。

他はベスト悪ポジションといえる。

勉強をしたい俺にとってベスト悪ポジションは私語と言う魔の騒音。絶対に耐えられない。



「…すいません。」



用意してもらった席に座る事にした。



「アカラギくんこの後暇?」



「ごめん、子守があるから。」



「え!?そ、その年で子供!?」



あぁ、めんどくさい。



「はい、そうです。」



「みたいな〜…」



「…帰ります。」



「着いて行きます。」



何故女子は男子からの追尾を訴えられるのに男子は女子からの追尾を訴えられないのか。









「ただいま。」



「おかえ………」



ヒロキが持っているテレビリモコンを下に落とす。



「お前壊れるだろ。」



「お邪魔します…」



「あっ…あっ…」



ヒロキのコミュ障が発動した。



「アカラギくん、でかくない!?あなたいつ初めてを」



とりあえずヒロキの誤解をとかなくてはならない。



「ヒロキ、紹介する。ストーカーだ。」



「嘘つけ!彼女だろ!!」



「ストーカーだ。」



ストーカーを見ると少し怒った顔をしていた。



「ストーカーじゃないです!」



「ほらー!!」



「ヒロキうるせぇ!」



イライラする。

はやく帰ってほしい。

マンション入口の前でどれだけ俺が彼女に「帰ってくれ!!!」と言ったか。



「ヒロキくんって言うんだ、井上香織です。」



「は、はい…」



「ところでアカラギくん、奥さんは…」



「ヒロキは俺の子供じゃないです。」



目を丸くしてこっちを見た。



「…捨て子です。」



「ア、アカラギくん…なんて良い人なの…」



イライラする。

何が良い人だ…。

そうやって褒めて、自分は何も絶対にしようとしないくせに。



「あの、帰ってくれませんか。あまり居られると困るんです。」



「お、おおおおお茶をどうぞ…」



手をぷるぷるさせながらお盆にお茶をのせヒロキがきた。


ヒロキイイイイイイ!!!



「じゃあお茶をいただいてから…」



俺はヒロキの首の後ろを思いっきりつねった。



「いってぇな!!!アカラギ何すんだ!」



「お前のせいだからな!!」









「すっかり暗くなっちゃった。」



「気をつけて帰ってください。」



まさかお茶で二時間滞在するとは思わなかった。



「今度くる時はケーキとか買って来るね!」



ヒロキの目が輝く。

食べ物に釣られるガキめ…。



「アカラギ、おくってやれよ。」



確かに外はかなり暗い。

これは送らなきゃ本当に危ないかもしれない。



「駅まで送ります。」



「え、いいの?」



「暗いのは危ない。」










何も会話もなくただただ歩く。

少し肌寒い。

秋だ。



「アカラギくん、大変なんだね。」



「そうゆうのやめてくれませんか。」



堪忍袋のおがきれた。



「何が目的なんですか…?普通初めて話す人にこんなにしつこく付きまとわないでしょ…!?」



前を向いたまま彼女は言った。



「五ヶ月も前からなんだけど。」



「は?」



「一目惚れして五ヶ月もずっと話すタイミング伺ってたんだけど。」



…あれ?これ、告白?

俺の足は止まり手に汗が握られる。



「…え、あの。」



「やっと話せて、それだけで嬉しくて今日舞い上がっちゃったんだけど。」



相変わらず俺は頭の整理ができない。



「返事は…」



「無理です。」



「へ?」



拍子抜けた声が彼女からでる。



「普通、考えさせてとか…そうゆう…」



「五ヶ月も前からとか、話しかけれたとか知らない。俺はあなたのことなんとも思えないし付き合ったり結婚したいとも思えない。ましてや今こうやって帰るのもめんどくさいって思ってるほどだから、無理です。」



ハッキリと言ってしまった。

彼女は笑おうとしているが笑えないというような顔をしている。

だって俺は人を殺したり、自殺したりするような人間なんだ。

彼女は俺を五ヶ月も見てきて、知り尽くしているようで何も知らない。



「アカラギくん…ひどい…」



少し彼女は俯いた。

まさか、泣いてる…のか…!?

俺にふられただけで…!?



「…でも、諦めないって言ったら怒るかな?」



顔をあげた彼女は笑ってた。

そして俺の頬に口づけをした。



「な…!!!」



「ここまで送ってくれたらもう大丈夫だから!じゃあまた授業のある時ね!!」



そう言って足早に帰ってしまった。

キスなんてされるのは初めてなのではないだろうか。

本当に台風みたいな人だ。

わけもわからず俺は黙りこくるしかなかった。







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