生きるべし
状況を整理すると、今見習い冒険者がしなれればいけない行動は2パターンある。
1つ目は安全な場所に逃げること。
2つ目は魔物と戦うこと。
だけど、どうしてこんな安全な、尚且つ邪除けの結界の張られた場所へ魔物が襲ってきたのか。ちょっと頭のいい奴なら分かるだろう。
オレは後々攻略サイトを見て知ったのだけども。
犯人は先生方だって。確かに、魔物が襲ってきたらそれなりに冒険者は身構えるし、確かな実戦、経験にもなる。先生方の狙いは多分ここにある。
それよりもオレがディア先生の元へ向かったのには理由があった。話せば長くなるのだが。ここでディア先生の猫もどきを倒すと、ファイター限定のイベントが始まるのだ。それをクリアするとゲームをなかなか有利に進めれるアイテムがランダムでドロップする。
リクはそれがどうしても欲しいらしく、オレように魔法をありったけかけてくれた。勝算なんて1割もないのに。
寮と比べると、校舎の屋上は静かだった。
だけど先生はオレに休みなんてくれなくて。猫もどきの爪とオレの剣の打ち合いが続く。剣ってこんなに重かったのな。メイジを選んだリクが羨ましい。すでにもう肩が壊れそうで。
猫もどきの右爪を剣で抑えていると、控えていた左爪がオレの顔を狙ってきた。鋭利な爪を寸止めで交わしたところで、肌を生暖かいものが伝ったのに気づく。右手で頬を触って見てみると、それは血だった。
そういや、この世界で初めて血流した。やっぱり痛い。授業でも耳にタコができるくらい言われた教訓にこんなのがあった。
『その一、生きるべし!』
冒険で命を落としても誰も弔ってくれない。だからまず死ぬなって言ってた。本当に嫌になったら、魔物を狩る以外に他にも街には仕事がたくさんあふれてる。転職したっていいんだ。先生はそんなことも言っていた。
オレ自身。死ぬかもしれないと思った今、身震いが収まらない。だけど、平凡な学生を送るよりは断然楽しい。こんなスリルもあっていいかもしれない。
このまま両方の体力を削るだけの長期戦に持ち込んだら、不利なのはこっちだ。
オレは最後の賭けにでた。