初見殺しのディア先生2
校舎の中は想像以上に静かだった。寮の方は獣や人の叫び声、ガラスや木材が壊される音で引っ切り無しに騒がしいのに。
オレはある人物を探して、一つ一つ教室を見て回る。先生は二階の一番奥の部屋に居た。
深呼吸して冷静さを取り戻す。でもしないと、いきなり奇襲をかけるところだった。冒険者が罪のない人に危害を加えるなんてマナー違反だって授業で習ったばっかだ。
「月が綺麗ですね、ディア先生」
それまで窓の外を覗いていた彼は、ゆっくりと此方へ振り替えった。
「勘がいいねキミ。どうしてここが分かったの」
そりゃもうゲーム経験者だったから。なんて言えない。他に理由があったとすれば、それは彼の職業柄になってくる。
「建物全体が見えるのは、ここからが一番だと思ってさ」
先生はオレの言いたいことを悟ったように笑みを見せた。
「アンタの職業はトレイナーだ」
だから、一人でこんなところにいる。トレイナーは魔物をペットにして戦う。そうやって魔物をこんな安全なところに誘導したんだ。ましてや要もなしに学校に奇襲をかけてくる魔物なんていない。と、言いたかったのだがそれもディア先生の攻撃でかき消された。
「先生、喋ってる最中に攻撃するのマナー違反ですよっ」
大きさも形も、猫とライオンの間の子みたいな魔物がオレ目掛けて飛び込んできた。ライオン譲りの鋭利な爪がオレの喉元を目掛けて。
間一髪で攻撃を交わして懐から剣を抜く。と、先生は声を上げた。
「キミがこんな所に居たら、寮にいるキミと同じ新米冒険者は魔物の餌になっちゃうよ」
まあ行かせないけど。と付け足す先生。
「そっちはリクがやってる」
ああ、例のメイジか。なんて頷く先生。
「なら、こっちはこっちで集中して遊べるなっ」
なんて胸を張ってみたが、こっちには元から勝算なんて2割もない。
そうこうしているうちに、また右から飛んできた猫もどきの攻撃。オレはそれを剣で防いで廊下へと逃げ込んだ。
ここからのオレの行動はシナリオにはない。リク曰く、この初戦だけは命を落とす可能性はないっていってた。だから今回だけは勝てんじゃないのーと。
猫もどきが付いてきているのを確認して、自分は屋上へと向かった。