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光からの贈り物  作者: 337
第四章 光からの贈り物 ~宝物を乗せて~
26/28

4-5

「もう疲れた~」

「ゆうあも~」

 二葉とゆうあが大きな石の上に寝転ぶ。

 かれこれ1~2時間くらいは川で遊んでいたからな。そりゃあ疲れるだろう。僕も結構疲れたし。

「もうそろそろ飯にでもするか?」

 廉哉の提案。

 時間的には3時を少し過ぎたあたりだろうか。まあ若干速い気もするけれど、日が落ちたら暗くなって何にもできなくなっちまうからな。

「いいんじゃないか」

「うん、私も賛成」

 僕と智癒は賛成。

「で、お二人さんは」

 死にかけの二人に廉哉が訊く。

「いぎなしー」

「ゆうあもー」

 ということでご飯を作り始めますか。

「お前たち身体冷やす前に着替えておけよ」

 廉哉からの忠告。

「後少し休んでから」

「休んでから」

 で、十分後。

「あたし達は今から着替えるから覗くんじゃないよ」

 僕たちを指差す二葉。

「じゃないよ」

 行動ごと真似するゆうあ。

「はいはい、そんなことしませんよ、命が惜しいんで」

 よろしいと言った感じの反応。

「レンも!」

「…覗かねぇよ!」

 一瞬智癒の方を見て間が空いたような気がする。

「えっち」

 頬を染めた智癒が去っていく。それに続いて二人も行く。

 で、隣の廉哉に視線を移すと何やらもがいている、陸に上がった魚のように。

「かわいすぎるだろー」

 川良すぎるだろ? 確かによかったけれど、そんなあばれるほどか?

 そんな不審者を横目に着替え始める。




「コウキッチン出張版!」

「出張版!」

「ここに来てまでそれするの?」

 二葉から不満の声が漏れているけれど気にしません、すべて聞き流します。

「今回は何と、アウトドアとなっております。いつもの狭いキッチンとは違って広々として開放的ですね」

「ですね!」

「外だからな」

 廉哉の言葉も流していきましょう。

「一先ず何をするよりも先に、火を用意しましょう。火がなければ何の料理もできませんからね」

「からね!」

「もう川遊びしたろ」

 廉哉の冷たい突っ込みにもめげたりしないぞ。

「といことで火をおこしましょう。まずこの焼き台の中に火を付けてください、廉哉」

「れんや!」

「ここでまさかの俺!?」

「はいそうです」

「そうです!」

「まぁいいか」

 火をつける準備を始める。

「十分後」

「十分後!」

「あんた達飽きないの?」

 二葉から注がれる冷やかな目線。

「このようなサバイバル環境の中で最も重要となってくるのは何でしょうか? そう水ですね」

「ですね!」

「自問自答乙でーす」

 もう突っ込みにすらなっていない、廉哉の適当さ。

「いくら綺麗だからといっても、川の水を直接飲むと言うことはあまりお勧めしません」

「しません!」

 遂には突っ込みがなくなった始末です。

「そこで必要なのはにふつ殺菌ですね」

「ですね!」

「そんな突っ込めよ、みたいな顔しても俺は突っ込まねぇからな。てかそれがやりたかっただけだろ! しゃふつだろ、煮沸消毒。そんな漢字に変換しなきゃいけないような面倒くさいボケするな!」

 凄いなこれがやりたかっただけだと言うことがすんなり看破されてしまった。

「ほら、二葉の奴何がボケだったのかわからなくってボケっとしてんじゃねぇかよ」

 居間どういうことだったのか智癒から説明を受けてようやく得心したようだ。

「ということでコウキッチン出張版これにて終了」

「終了!」

「早っ」

「だってこれがやりたかっただけだからさ」

「さいですかい」

 呆れ返った廉哉。

 この後ちゃんとみんなで協力して、料理を作って美味しく頂きました。


 ご飯を食べ終えてから、後片付けをしていたらいつの間にか暗くなってきていた。こんな暗くなってきた所ですることは一つ。

「花火しようぜ」

「しようぜ!」

 事前に買っておいた花火を袋の中から取り出す。

「おお、やるか」

「やろう」

「うん」

 コウキッチンと違ってみなさんのりのりですね。

 さまざまな花火で遊んだ、メジャーどころの手持ち花火や打ち上げ、噴射、ロケット、コマ、にネズミ。どれも違った楽しさがあった、そして今やっているのはしめの線香花火。

 微かに儚く咲く小さな光を見つめ続ける。そして最後の一本の光が風に揺られて落ちた。

 夏の終わりを知らせる様なしみじみとさせられるものだった。

 さて、この後が僕にとっての本命の時となる。時刻は午後9 時手前。

「天体ショーが始まるぞ」

 待ち遠しく天を見上げる。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「天体ショーって何があるの」

 いきなり何かを言いだしたかと思えばそれだった。

「今日はなペルセウス座流星群が極大を迎えるんだよ、そしてその時刻は9時。丁度今だ。北東の空だからあっちな」

「へぇ、そうなんだ。今日流星群があるんだ」

 はじめてみるから結構楽しみ。

「それがお前の言ってたお楽しみって奴か」

「その通り。ということでみなさん空を見上げましょう」

 促された通り空を見上げる。

 コウの指差した方向は丁度川の上にあるお陰か、気の枝がなくて天まで吹きぬけて見える。

 一瞬流れる小さな光。

「早っ」

 驚くくらいに早くすぐ消えた。

「でもきれいだろ」

 確かに綺麗だと思った。こんなまじまじと空を見上げることはなかったけれど、星がこれほどまでに瞬いていて美しいものだったなんて知らなかった。

 そのまま黙って星を見続ける。

 ずっと上を向いるせいで、首が痛くなって一度回すために辺りを見たけれどコウの姿が見当たらなかった。どうせ暗いからよく見えないだけだろう。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 みんなが頭上に注意が入っているうちに抜け出してきた。本当はもっとみたかったけれど、一つだけ流れ星が見えたので今は満足しておく。

 鞄の中からヘッドライトを取り出して装着する。光の届かない森の中では貴重な明かりだ。弱いだなんて文句は言ってられない。

 いつみんなが僕がいないことに気付くかわからないのでなるべく早く向かう。

 五分程小走りで進んで目的の場所に着く。

 立ち入り禁止と書かれた看板を無視して中に入っていく。

 入っていった場所は、もう使われていない炭鉱。こんな所に用があってわざわざ来た。

 炭鉱の入り口の脇にあるプレハブのドアに手を掛けてみるがびくともしない。壊して入ろうかな、と思ったけれど窓を発見した。しかも鍵が掛けられていなかったなので窓から侵入し、ドアの家鍵を開ける。

 ここにならきっとあるんじゃないかという希望的観測の元建物内を探す。

 そして、目的の物をを発見した。

 炭坑内の地図。

 頭の中で、ごまだれーといった感じのBGMが流れた。これでボス部屋の場所がわかるぞ、とふざけることなく、それを鞄の中にしまう。

 逆に鞄の中からいくつかのものを出す。

 幾つかの空き瓶。

 妖精を捕まえられるね。一人でボケる。

 出し忘れていた花火、持って来たけど使わなかった風船&水風船。

 一先ずそれらを置いてみんなの元へと戻る。




「コウ」

「はい?」

 あぶねぇーどうにかギリギリの所で戻ってこれた。

「これっていつまで続くの」

「さぁ、知らん。そこまでは調べてこなかった」

「もう飽きたし帰らない」

 え? まだ全然見てないんだけど。

「ああいいな、俺ももうそろそろ帰りたくなってきた。首も痛いし」

「じゃあ、お父さんに連絡するね」

 智癒が携帯で連絡を取り始めた。

 いよいよ帰るムードになってきたのでもう少しいようよと言いだすことができず、流れに流されてしう。

 これが現代の若者の駄目な所か、自分にその言葉を浴びせる。

 で、荷物を持って入り口の所までゆっくりと戻っていく。

 2~3分程待っていたら一台のトラックが来た。智癒のお父さんだ。

 朝着た時と同じように乗り込ませてもらってこのまま帰宅する。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 8月18日土曜日、四人で集まっていた。光輝の家ではなくて珍しく二葉の家に。

 普段は五人なのに四人でいる。光輝は何か用があると言ってそれでこの場に来ていないわけだ。

 そして集まった理由は光輝にある。

 なぜか最近というかこの一週間だがやけに乗りが悪いのだ。

 今現在がそうな様にこの場にいない。

 一週間の間四度ほど遊びに誘ったのだが、のらりくらりと言い訳をして拒否されているんだ。こんなことは今まで一度もなかったので、不安に思いみんなで集まったわけだ。

「ゆうあさん、最近の光輝の様子ってどんな感じだ?」

 一緒に暮らしているのだから一番事情に詳しいだろう。

「それがね、お家にいる時は寝てばっかりで構ってくれなくてつまんないの。外に出かける時は、原付に乗って出かけるから二人乗りできなくって付いて行かせてくれないの」

 ああそういえばあいつ原チャの免許持ってたんだっけ。

 この話を聴く限りじゃゆうあさんも同じ様な感じか。

「一体何が原因なのかわかればいいんだけどな」

 みんな黙りこんで考え込む、けれど誰も原因がわからないようだ。

「しょうがないゆうあさん、明日は何が何でも光輝が出かける時は付いて行ってくれ」

「了解です!」

 ビシッと敬礼も決める。

 光輝抜きでこの日もいつも通り適当に遊ぶ。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 こんな所に出口があるのか、地図にも書かれていなかったぞ。

 手に持っているペンで地図に付け足す。

 地図を手に入れてから今日まで毎日ここにきて中の様子を窺って、土地勘を養っていた。もうほとんど中の構造も理解したので立ち向かう準備は万端だ。

 仕掛けも幾つも用意しておいた。

 ゆうあから訊いたハンターシンパシーの索敵方法を頭の中で反復させる。

 熱で場所を特定する。音で場所を特定する。電波で場所を特定する。

 全部に対応できるだけの準備もしたつもりだ。

 撃退方法も揃えた。後は敵さんが脆いことに期待するしかない。

 仮にPRG‐7みたいな対戦車ロケットがあったら未来の機械だろうと一撃で屠ることもできるのだろうけれど、そんなものどう足掻いたって手に入らない。ならこの環境で僕にできる方法で倒してみせるさ。

 意地でもな。




 疲れからか家に帰ってからすぐに寝たためシャワーすら浴びていなかったので今浴びる。

 日付は一日変わって8月19日の日曜日、時間は9時を少しだけ過ぎたあたり。

 軽くシャワーを浴びて脱衣場に出る。

「うおぉ」

 出た先にはゆうあが仁王立ちで待ち構えていた。

 なのでとっさに風呂の中に引き返す。

「今日のお出かけにゆうあも連れてけー」

 デモ行進で訴える時の様な言い方をする。

 流石に最近冷たく当たりすぎていたからな、業を煮やしてこういう運動に出てきたのか。

「とりあえず、パンツを取っていただけないでしょうか」

「ゆうあの要求を飲むまでここからは動かなーい」

 なんか伸ばす所おかしくないか、と思ったけれど、どうやら本気で動く気はないようだ。

「ああ、もうわかったよ、連れていく」

 どの道普通の買い物ももうしないといけない頃だったからな。

「よろしい」

 上から目線の物々しい言い方だった。

「なので早くそこから出ていって下さい」

「はーい」

 素直に退散して行ったようだ。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「なんか最近ご飯が手抜きすぎない?」

「手が込んでいた時がいつあったか?」

 思い返してみるけれど、そんな時は思いだせなかった。

「でも、全部冷凍食品はイヤだ。せめて手料理が食べたい」

「でも、冷蔵庫の中がすっからかーんだから、何にも作れないんだよなぁ」

 朝食は何にするか話していたのだが、こうきが冷凍食品にしようとしたので少しもめている。

 冷蔵庫を開けて中を確認する。

「手料理ならなんでもいいんだな」

 冷蔵庫とにらめっこしながら確認のために訊いてくる。

「うん、いいよ」

「よし、じゃあ、居間で待ってろ。すぐ作ってやるから」

「うん」

 なんか不安な感じがするけど、待つことにする。

「はい、お待ち」

 出されたのはお茶碗一つとお箸。

 お箸は使い方を教えてもらってからしばらく練習したら使えるようになりました。

 白米の上に何か四角いものが乗っけられている。

「醤油を掛けて召しあがれ」

 ゴト、と醤油が追加される。

「これ何?」

「バター醤油ご飯だ、ちゃんとした手料理だぞ」

 これはどう見ても手料理とはいえないと思うんだけど、手料理だとしても限りなく黒に近い灰色とかそういう部類のものだよね。

「うぅ~」

 恨めしい気持ちを込めた視線を送る。

「僕も同じものを食うんだから諦めろ。それに普通に美味いからさ。醤油を多めに掛けるのがお勧め。騙されたと思って食ってみろって」

「うん、わかった」

 あんまり納得は言っていないけど、食べてみる。

 言われた通り醤油を多めに掛けて、バターとご飯を和える。それを口の中に運ぶ。

「ん!? 思っていたより美味しい」

「だろ、まぁこうやってたまに食う分にはいいだろ」

 見た目以上に美味しかったのですんなり食べ切れた。

「美味しかったけど、ちょっと重たいね、これ」

「まぁバターを食ってるわけだからな、それはしょうがないだろ」

 こうきが二人分の食器を流しに持って行って、戻ってくる時にコップとお茶を持ってくる。

「ありがとう」

「どういたしまして」

 こういうことを自然とやっている所は素敵だと思う、一人の人として。

「じゃあ一服してから出かけるぞ」

 お茶を飲み終えに出る。その時にこうきがここで待ってて、ていうから玄関前で待っている。

「はいよ、お待たせ。こいつを出すのに少し手間取っててさ」

 取り出してきたのは中型バイク。

「今日はこれでいくぞ」

「それ、こうきの?」

「いや違うぞ、これは姉ちゃんのだ。まあどうせ帰ってこないんだし乗ったって問題ないでしょ」

「ゆうあが原付乗る」

 なんか大きくて怖い

「いや、無理って言うか駄目だろ、ゆうあ免許持ってないだろ、それに今ここにないし」

 免許が必要なのかそれは残念。

「ほら、メット被って」

 頭に帽子みたいなのを乗っけられる。

「被った!」

「ちゃんと留め具を閉めろよ」

 こうきが首下で何かをする。

「よし、じゃあしっかりつかまっておけよ」

「うん」

「出発」

「出発!」

 ゆっくりと走り出してどんどんスピードが上がっていく。

 最初は怖いと思っていたけれど風を切って進んで行く感覚が面白く感じた。




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