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光からの贈り物  作者: 337
第四章 光からの贈り物 ~宝物を乗せて~
25/28

4-4

「やっぱり、最近二人変わったんじゃない」

「そんなことないよ、いつも通りだけど」

 目標を定める。

「本当なのかな」

「そうだよ」

 息を整えて準備をする。

「あのさ」

「何」

 今だ! ポイを入水させ金魚をすくい上げる。水面に出る金魚、後はお椀に移すだけ。

「レンと付き合い始めたでしょ」

「えっ!?」

 言葉と一緒に金魚も零れ落ちる。

「やっぱりね、なんとなくそんな気はしていたのよね」

「なんでわかっ、あっ」

 ここまで口走っておいて今更押さえても、もう手遅れか。

「うん、そうだよ」

「いつからなの?」

 ゆっくりとどの金魚にするか狙いを定めている。

「森で鬼ごっことかをしてた日からかな」

 ポイを水につけて、救い出そうとしたが水中で破けた。

「あたしが告白された次の日、か」

 穴があいてしまったポイをくるくるとまわしながら眺めている。

 金魚すくいはもう止めて、近くで丁度開いたベンチがあったのでそこに座る。

「別にあたしに告白した次の日に、チユと付き合い始めたこととかに腹は一切立てていないよ、だってあたし、チユがレンのこと好きなんだろうなって薄々だけど気付いてたの」

「えっ」

 こう君並みに鈍感だと思っていたけれどそうじゃなかったんだ、本当は。

「で、ずっと二人が付き合えばいいなぁって思ってたの、だってどう見たってお似合いだもん。それでね、レンに告白されてから今までのことを思い返してみたら、ああ、なるほどって思ったのよ。そうとれるような仕草が幾つもあったなって」

 ふーちゃんは鈍感なんじゃなくて、一途なだけだったんだ。男の子はこう君しか見れていなくって、それで、れん君の気持ちに気がつかなかったんだ。私のことは、私と同じように大切な友達としてみていたからそういう仕草とかに気付かれていたのかな。

「だからね、今あたしは二人が付き合えてよかったねって心の底から思っているの」

「うん、ありがとう。ありがとうね、ふーちゃん」

 思わず抱きしめる、最大限の感謝を込めて。

「じゃあ、今度はふーちゃんの番だね」

「え、あ、うん」

 少し戸惑いはしたけれど決心ができたのか、決意いの籠った視線を感じ取れる。

「あの、お社の左側の方を抜けていくとちょっとした広場、みたいな所にでれるの、そこで花火を見ながら告白してみたら」

「うん、わかった」

「頑張ってね」

 背中を叩いて気合いを注入する。

「うん!」

 そしてこう君を探して人混みの中に消えていった。

「あいつには俺たちのこと最初からばれていたみたいだな」

 目の前に突然誰かが来る。

「うん、そうみたいだね」

 そう相手は当然れん君。

「新たな一面を知って惚れちゃった?」

 少しおちょくってみる。

「俺の心はお前に奪われたつうの。ほらよ」

 アイスを二つに折って半分をくれる。

「あいつらも上手く行くといいな」

 いいながら私の隣に座る。

「そうだといいね」

 座ったれん君にもたれかかる。

「ああ」

 アイスを一口食べる。

「おいしい」

 その時夜空に大きな華が咲いた。

 当たり一面を煌々と照らす、輝かしい明かりが。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「おい、危ないから走るなって!」

「いいから付いて来て!」

 チユと別れたからすぐにコウは見つかった。

もういつ花火が打ちあがるかわからない、少しでも早くその場所についておきたい。

 薄暗く気に覆われた道が途絶えた。その先にあったのは、チユの入っていた通りの小さな広場。ただ開けているだけで何もなかった。

「いきなりこんな所に連れてきて何なんだよ」

「あの、それはね」

 言うんだ絶好の雰囲気じゃないか。

 すーはー。

 深呼吸を一度して、決心を貫く。

「あたしはね、コウのことが好きなの!」

 辺り一面に轟く無数の爆音。

 何が起きたの? と辺りを見たら上に輝きを見つけた。打ち上げ花火か。

 コウに視線を送る、あたしのことは見ていないで、花火を見上げていた。

「綺麗だな」

 見上げながら呟く。

「ばか」

 小さく俯いて。

 ふるった勇気が花火の音に打ち消されて、コウの元まで届いてくれなかった。

「何下見てるんだ? 花火綺麗だぞ」

「うん、そうだね」

 声を震わせないように、頑張って普通の声を絞り出した。

 正直に言ってこの後のことはあまり覚えていない。

 美しかっただろう花火も、喜んで見ていただろうコウの顔も、全部頭の中には残っていなかった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「どうだ、今日は楽しかったか」

「うん、楽しかったよ。この子をゲットできたし、花火も見られたし、よかったよ」

「それならよかった」

 祭りが終了し、家に帰ってきてお茶を飲んで寛いでいる。

「なんかあったんじゃないか?」

 気になることが一つだけあった。

「何もないけど」

 首をかしげて何のことなのかわからない、と。

「みんなが集まる前、何か考えてただろ、それのことだ」

 その時の顔が忘れられなくて、何かを堪えている様な表情が。

 思いすごし、気にしすぎかもしれないけれど、どうしても訊いておきたかった。

「いいの、こうきは気にしなくていいことだから」

「気になるんだよ、何か重要なことなんだろ、聴かせてくれよ」

「危ない目にあうかもよ」

「それでも構わん」

 どんな目に会おうと友達を放っておくことの方が僕には辛い。

「…じゃあ、言うね」

「ああ」

 唾を飲み込んで言葉を待つ。

「迎えがきているみたいなの」

「え、どういうことだよ?」

「ゆうあにもよくわからないの、さっきイノから捜索魂共全動機ハンターシンパシーらしきものを補足したって連絡が届いたの」

「まずそのハンターシンパシーてのはなんだ?」

「国が一回だけ遣わしてくれる脱走者を捕まえるための魂共全動機シンパシーのことなの。これは基本的に無人機なの」

「でも、ゆうあの時代でもまだタイムマシンはないって言っていなかったか?」

「そのはずなんだけど、魂共全動機が普及し始めたのが私のいた頃から百年程前らしいけれど、それだとまだこの時代には存在していない」

「じゃあやっぱりタイムマシンできているんじゃないか」

「その可能性もなくはないの、悪魔でも都市伝説的なレベルだけれど、時空間移動のできる魂共全動機が存在するって噂が広まったことがあったの、だからもしかしたらそれが来たのかもしれない」

「どうにかならないのか? イノにレーザービームと付いていないのか?」

「ううん、イノにはそういう武器の類は一切付いていないの、だから武力行使で返させるのは難しいかも、それにまだ治っていないし」

「その、ハンターシンパシーって物の特徴とかってわからないのか?」

「本当に時空間移動ができるなら、スペックの大半がそれに持っていかれていると思うから結構穴のある機体かもしれない。イノの連絡でも移動は非常に遅いってきてたから」

「そうか、よし、わかった。僕がどうにかして見せる」

「無理だよ! そんなの絶対に無理だって」

「じゃあ、ゆうあは帰りたいのか?」

「ううん、そんなことはない、ずっとここにいたいよ、けど、これはどうしようもないと思うの」

「しないこうどうなら、する悪足掻きだ。きっとどうにかなるさ」

「そうだといいね」

 半分以上諦めた目をしている。

「とりあえず今日はもう寝よう。明日はバーベキューをするんだからさ」

 視察もできそうだし。

「うん、わかった。お休みこうき」

「ああ、お休み」

 さて僕ももう寝ますか、明日の準備を済ませておいてから。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 祭りの日から一晩明けて12日日曜日、天気は快晴絶好のバーベキュー日和と相成った。

 開催地は二葉が怪我をしたあの森の中、その中に小川が流れており、地面は小石の転がる砂利道なので環境的にも打ってつけだ。

 光輝の情報によると今日は天体観測する上でも打ってつけの日だそうだ。その理由は後で教えるとのことなのでそれ以上は言及しないで、楽しみに待つことにする。

 そして今、そのバーベキューを行う場所へと移動中である。今回は自転車ではなくて、自動車でだ。

 俺たちはまだ免許の取れる年齢ではないので運転しているのはもちろん俺たちじゃない。智癒のお父さんだ。

 何と気さくなことに、バーベキューに必要なものも一通り貸してくれた。

 なので俺たちが用意したものは、食料と炭、後は遊ぶ用の花火くらいだ。

 面倒だった移動も今やトラックの荷台に乗せてもらって優雅に移動中だ。

 揺られ続けてしばらく経ってから目的地に着いたのか、トラックが止まる。

 積荷を降ろして、智癒のお父さんにお礼を告げる。

 帰る時に連絡を入れろよ、と言い残して走り去っていく。

「さて、ここからが本番だな」

 光輝のいうとおりだ。

 ここからが山場、重たい焼き場やら、何やらを持って移動しなくてはいけないわけだ。

「ゆうあがこれ持つ」

 そう言って手に取ったのは一番重たいであろう、焼き場。

「いいってそれは僕と廉哉で交代で持っていくから」

「ああ重たいからやめといた方がいいぞ」

 後期の言った通り、俺たちで運ぶつもりだった。

「大丈夫だよ、ゆうあ力持ちだから、ほら」

 そう言ってひょい、と持ち上げる」

「無理するなよ、疲れたら僕が代わるからな」

 子供を心配する保護者のようにも見える光景だった。

「うん、わかった」

 残ったもので特に重たいものといえば鉄板と、食料の飲み物系くらいだったのでそれを俺と光輝で手分けして持ち、残りを智癒と二葉に渡す。

 森の中に入って20分近く歩いた所で目的の場所に着いた。

 その間驚くことにゆうあさんはずっと一人で焼き場を持って歩いていた。

 俺と光輝も息切れ切れになっているのに、元気そうにぴんぴんしていた。

「ちょっと休憩―」

「俺もー」

 岩場で寝転ぶ。

 けれど石が固くて、ゆっくりと休むこともできそうにない。

「ほら、男どもさっさと準備しなさい」

 元気な二葉の御命令。

「「へーい」」

 悪の手下のように、従順に働かされる。

 そして一通りの準備が終わる。

「川で遊ぼー」

「遊ぼう!」

 光輝がいつものように言いだしてからそれをゆうあさんが復唱する。最近のパターンになってきていることだ。

「ということで水着に着替えて遊びたいなと思います」

「思います!」

「んじゃあ着替えます」

 そう言って光輝が上を脱ぐ。

「着替えます!」

 ゆうあさんも脱ごうとする。

「「待って!」」

 女子二人が全力で止めに掛る。

「何してるの!」

 二葉が驚きの表情で訊く。

 そりゃそうだろう、俺も驚いた。まさかここで脱ぎ始めようとするとは思わなかった。

「着替えようとしたの」

「ユウアはこっちに来てあたし達と一緒に着替える。わかった?」

「うん」

 着替えを取って連行されていく。

「いつもあんな感じなのか? ゆうあさん」

「ああ、割かし。何度注意しても中々直らないんだよ」

「じゃあさ、はだ――」

 顔の横をひゅん、と音を立てて通り抜けていき、その後ポチャンという音が二つ聴こえた。

 通り抜けていったのはおそらく石、飛んできた方向には投てき後のフォームの二人がいる。

「「早く着替えたらどう」」

 恐怖のスマイルが二つ。

「「はい」」

 この話題にはこれ以上触れることなく着替えを始める。

「光輝、お前やたらと荷物多くないか」

 水着を取りだした鞄の大きさが俺のものより、一回りほど大きい。

「そうか、こんなものじゃないのか?」

 至って普通だろ、といったリアクション。そんなものかねぇとその後は気に掛けなかった。

「一番乗り!」

 光輝が叫びながら川に浸かる。

「あ~極楽、極楽」

「温泉じゃねえだろ」

「いいんだよ、気持ちよければ一緒だ」

「まあ確かに冷たくて気持ちいな」

 男二人、湯船につかるかに様に川に浸る。

「あーもう先に入ってる」

「ゆうあも入るー」

「転ばないようにね」

 女子三人もいらしたようだ。

「つめたっ」

 おっかなびっくりといった感じでつま先からゆっくりと入るゆうあさん。

「ジャンプ」

 言葉通り飛び跳ねてはいる二葉。ちなみに飛沫が顔に飛んできた。

「気持ちいね」

 大きな岩に座って脚だけ水に浸す智癒。

 そんな緩い感じで川遊びは始まった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



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