ヒトヒラノ雪
僕の愛が君を苦しめる。
そう分かっていたのに、僕はこの手を離す事が出来なかった。
例え誰に認められなくても、二人なら生きていけると思っていた。
君を失う事になるなんて知らずに―――。
神様――。
神よ、もしいるのなら僕の命を彼女に与えて下さい。
罪を犯したのは僕です。
彼女を惑わせたのも僕の罪です。
その咎はすべて僕が受けるから…だからどうか彼女を、助けて下さい――。
白い雪がヒラヒラと舞い落ちる。
全ての罪を隠すように、僕の哀しみを凍らせるように。
今、僕の腕に眠るように逝る君に降り積もって行く。
どうして涙は出ないのか、心は凍りつき目の前にあるのは白く染まった世界。
僕が望んだ世界じゃないのに、君が居ない世界なんてあったって仕方ないのに、
それでも、君は微笑むんだね。
―泣かないで…―
最期の言葉が耳に残る。
泣いていたのは君の方。残される痛みも、残して行く痛みも全てを受け止めて君はその小さな身体で僕を包んでくれた。
甘い刻を重ねて、僕らは一つになったけど…君は僕を置いて逝くんだね。
一片の雪が君の頬に落ちる。まるでもう流れる事のない君の涙のように…。
―愛してる…―
今はもう届かない君に、せめてものハナムケになればいい。
僕もすぐに逝くから――。
例えココではない世界に落ちても、君を一人にはしないから。
僕が咎を背負うから――…どうかもう一度、微笑んで…。