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つむぎのカレー

作者: WAIai
掲載日:2026/03/07

「ーお母さん、今日はあたしが料理を作る!!」

12歳の木村つむぎは、母親の木村翔子に宣言した。今は日曜日の朝。まだ早い時間帯なのだが、もうエプロンを着用している。

「え? つーちゃんが作るの?」

洗濯物を干す手を止め、翔子が驚いたように言う。彼女は30代で、優しくて綺麗な人だった。

「うん!! あたしに任せて!!」

とん、と胸を叩き、つむぎは自慢そうに言う。

「どうしたの、急に?」

「別に。作ってみたくなったの。…駄目かな?」

「いいけど…楽しみだな。お母さんも見ていい?」

「うん!! もちろん!!」

つむぎは手招きすると、翔子は洗濯物干しを中断し、彼女について行く。キッチンはガスコンロであり、冷蔵庫からもう材料は出したようだった。

「何を作るの?」

「あのね…えへへ。カレー」

「カレー!? まあ、美味しそう!!」

翔子が手を合わせ、嬉しそうにすると、つむぎがにこりと笑った。

「でもね、お母さんの作り方と違うの。それでもいい?」

「いいわよ。何、カレー?」

「ヘルシーカレー」

「ヘルシー? 興味あるなあ」

翔子のうきうきした言葉に、つむぎはVサインをする。

「まずは材料を切って…」

つむぎは子ども用の包丁を持ち、まな板に向かう。

「人参は皮をむかずに使って…」

「え? つーちゃん、皮をむかないの?」

「あのね、学校の先生が教えてくれたの。別に切らなくていいって。皮に栄養があるからって」

「そうなの? お母さん、初めて聞いたわ」

「じゃあ、あたしはお母さんにいいことをしたことになるね」

嬉しそうに言い、人参を切っていく。翔子は手を切らないかと心配そうに見ていたが、大丈夫そうだった。綺麗にいちょう切りにし、ボウルへ入れておく。

「次は玉ねぎ。これをスライスして…」

目がしみたが、我慢して切ると、人参と同じボウルに入れておく。

「あとは解凍したコーン」

冷凍庫から出しておいたので、解凍していた。つむぎのうちでは、夏に冷凍保存しておくのだった。

「それからじゃがいも。これは皮を切って…」

「手を切らないようにね」

「うん!! 大丈夫!!」

ちょっと皮が厚く切れたが、何とかじゃがいもを切っていく。

「これでどうするの?」

「あのね…お母さんは炒めるでしょう?」

「うん、そうね。普通は炒めるわね」

「そうじゃなくて、全部入れてゆでるの」

「え!! ゆでるの? …でも、それもありか」

翔子が指をパチンと弾いた。ヘルシーカレー、なるほど、炒める油を使うとその分、カロリーが高くなるが、つむぎは使わないと言う。

「えへへ。楽しみでしょう?」

「うん!!」

「じゃあ鍋に材料を入れて…」

全部入れると、カレーのルーの箱に書いてある水の分量でひたす。火を点けると、つむぎは沸騰しやすいように、鍋に蓋をする。

「つーちゃん、お肉は?」

「あ、そうだ。お肉!!」

用意してあった豚の小間切れを鍋に入れ、再び蓋をする。待つこと5分くらいか、沸騰してきたので、蓋を開ける。

「あくを取らないと!!」 

ボウルに水を張り、お玉で茶色いあくをとる。あまり水を取ると、カレーが濃くなってしまうので、ほどほどにしておく。

「これで野菜が柔らかくなったら、終わり。あたし1人でもできるでしょう?」

「そうね。楽しみだわ」

翔子は言うと、外を指す。

「洗濯物、干してきてもいい?」

「いいよ!! あたしが見てるもん」

「じゃあー」

翔子が一旦、その場から姿を消す。つむぎはそれを見送り、鍋に再び目を戻す。

「そうだ!! 目玉焼き!!」

フライパンをガスコンロに置くと、オリーブオイルをひき、カレーのトッピングにするつもりだった。

「半熟がいいわよね」 

腰に手を当て、母親になった気分で言う。そろそろいいかなと思い、竹ぐしでカレーの野菜を刺してみる。

「ちょっとまだ固いな。…あ、目玉焼き!!」

フライパンの蓋を開き、中を覗くといい焼き具合だった。ガスの火を消し、置いておくと、翔子が戻ってくる。

「あ、お母さん!!」

「つーちゃん、何? 目玉焼きも作ったの?」

「うん!! そのほうがお腹いっぱいになるし!!」

「そう。…美味しくなれ、美味しくなれ」

翔子がカレーの鍋に向かって、おまじないをしてくれた。つむぎも真似し、竹ぐしをまた使ってみる。どうやら今度は柔らかくなっているようだった。

「…えっと、弱火にして…」

カレールーを人数分入れると、弱火でことこと煮ていく。スパイスの香りが部屋に広まっていく。

「あ! そうだ、隠し味!!」

「隠し味? 何を使うの?」

「あのね…えへへ」

冷凍庫に向かうと、ケチャップを取り出す。

「少しだけ入れるといいって、友達から教わったの」

「そうなの? いい友達ね。仲良くしなさい」

「はーい!!」

ケチャップを大さじ1から2入れ、ぐつぐつと沸騰したところで味見する。

「どう?」

「美味しい!! お母さん、食べるのが楽しみだよ!!」

「そうね。美味しそう」

「もってみるね」

つむぎはそう言うと、皿を取り出し、カレーをもっていく。最後に目玉焼きを乗せ、完成である。

「ーできた!! できたよ、お母さん!!」

「おめでとう!! 食べるのが楽しみ!!」

「今、食べる? それとも少し経ってから…」

「今、食べましょうよ。朝ご飯、まだだし。お父さん!!」

「あたしが呼んでくる。お父さん!! お父さん!! カレーを作ったよ!!」

つむぎは大声を発し、部屋にいる父親の涼を呼びに行ったのだった。

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