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VRMMOで禁止スキル使ったらNPC美少女たちがマスコットキャラ化して俺にずっとついてくるようになった件について

作者: 桜木ひより
掲載日:2025/11/21

深夜二時。俺、篠原拓真は、いつものように怪しげなネットの海を漂流していた。


「ふぁ……明日も学校なのになぁ、ついつい夜更かししちゃうんだよな…」


欠伸をかみ殺しながら、辿り着いたのは見たこともない掲示板サイト。

デザインは2000年代を彷彿とさせるレトロさで、スレッド一覧には奇妙なタイトルが並んでいる。


『【絶対厳禁】ノヴァ・オンラインの禁断コマンド【使用禁止】』


ノヴァ・オンライン——俺が毎日プレイしているVRMMO。

総プレイヤー数一千万人を超える超人気ゲームだ。


好奇心に負けてスレッドを開くと、たった一つのレスがあった。


『このコマンドは絶対に使うな。使ったら取り返しがつかないことになる』


その下に、謎の英数字の羅列。


「うわ、厨二病全開だな」


苦笑しながらも、俺はメモ帳にコピペした。

こういう都市伝説的なの、嫌いじゃない。というか大好き。


そして——軽いノリでVRヘッドセットを装着した。


「まぁ、試すだけ試してみるか」


この判断が、俺の世界を根底から覆すことになるなんて、このとき知る由もなかった。


   


ノヴァ・オンラインの世界に没入する。

五感すべてが仮想空間に接続され、まるで異世界に転生したかのような没入感。これがVRMMOの魅力だ。


俺のキャラクターは平凡な剣士。

レベルも中の上程度で、特筆すべき点はない。


王都の噴水広場でコマンドウィンドウを開き、例の英数字を入力する。


「……ホントに何も起きないかもな」


エンターキーを押す。

その瞬間——世界が真っ白に染まった。


視界全体を支配する純白の光。

耳をつんざくような警告音。そして、システムボイスが響く。


『警告。管理者権限コマンドが実行されました』


『プロトコル"FAMILIA"を起動します』


「え、ちょ、待て——!」


光が収束する。

目を開けると、俺の目の前に四つの光の球が浮かんでいた。


それぞれが赤、銀、茶、金色に輝いている。


そして——光が弾け、小さい妖精のような少女たちが現れた。


「やっほー! マスター!」


「お目覚めですか、創造主様」


「あはは、やっと会えたね!」


「……お待ちしていました」


俺の周りを飛び回る、四人の少女たち。


いや——少女、じゃない。


彼女たちは全員、手のひらサイズ。

小さな羽で空中を飛行し、俺の周りをくるくると舞っている。


赤髪ポニーテールの勝気そうな子——リーナ。


銀髪ロングのおっとり系——セレス。


茶髪ショートの元気娘——ミィ。


金髪ツインテールの真面目そうな子——ノエル。


全員、すごく可愛い。

そして全員、俺がこのゲーム内で贔屓にしていたNPCだった。


「え、え? 何これ? 何が起きてるの!?」


「あれ、マスター、忘れちゃったの?」とミィがくすくす笑う。


「私たちは、あなたが——」


セレスの言葉が途中で途切れた。

彼女の表情が一瞬だけ困惑に染まる。


「……私たちは、マスターに選ばれた特別なサポートAIです。これからマスターのお手伝いをします」


「はぁ!?」


混乱する俺をよそに、四人は楽しそうに飛び回る。


「ねぇねぇ、マスター、お腹空いてない?」


「現在のステータスを確認しますか?」


「あたしたち、マスターの力になれるんだよ!」


「……どうか、お役に立たせてください」


そして——ログアウトしようとした瞬間。

世界がまた白く染まり——気づけば、自室のベッドの上。


VRヘッドセットを外した俺の目の前に。


「おはよー、マスター!」


四人のマスコット美少女が、現実世界で飛んでいた。


「——————はあああああああ?!」


俺の悲鳴が、夜の住宅街に響き渡った。






「落ち着け、落ち着け俺……」


翌朝。結局一睡もできないまま、俺は四人のマスコットたちに囲まれて朝食を食べていた。


「マスター、お味噌汁、冷めちゃうよ?」


ミィが心配そうに俺の顔を覗き込む。

その仕草が妙にリアルで、本当に意思を持った生き物に見える。


「あ、ああ……」


まずは昨夜から現在までの状況を整理しよう。


一、謎のコマンドを入力した。


二、ゲーム内のNPCがマスコット化した。


三、そいつらがなぜか…現実世界でも消えてなくて周りにいる。


四、消そうとしても消えない。


「つまり……バグ? いや、チート?……もしかして幻覚?」


「バグじゃないよ、マスター」とリーナが胸を張る。


「あたしたちは正規のシステムだからね!」


「正規って何が正規なんだよ……」


とりあえず、彼女たちが敵意を持っていないことは確かだ。

むしろ献身的すぎるくらい俺に尽くそうとする。


「マスター、今日は学校でしたね」とノエルが真面目な顔で言う。


「私たちも一緒に行きます」


「絶対ダメだ!!」


即座に却下。

手のひらサイズの美少女が四人も飛んでいたら、確実に大騒ぎになる。


「大丈夫です」とセレスが微笑む。


「私たちは、マスター以外の人間には認識されませんから」


「……ほんとに?」


「はい。ですから、安心して学校生活を送ってください」


試しにリビングで母親の前を通過してみたが、案の定、まったく気づかれなかった。


「便利なのか不便なのか分からないな……」


そして俺は、四人のマスコットを連れて学校へ向かった。


   


学校での一日は、予想以上にカオスだった。


授業中、リーナが「この問題、答えは3番だよ!」と耳元で囁く。


休み時間、ミィが「あの子、マスターのこと見てるよ!」とからかってくる。


昼休み、ノエルが「栄養バランスを考えて、野菜も食べてください」と説教する。


放課後、セレスが「今日は図書館で調べ物をしませんか?」と提案してくる。


まるで四人の姉妹に囲まれているような感覚。


かなりうるさいが…正直嫌じゃない。むしろ——楽しい。


「なぁ、お前ら」


帰り道、ふと俺は口を開いた。


「お前たちって、元に戻りたくないのか? NPCとしての姿に」


四人が一斉に首を横に振る。


「今のままがいい!」とリーナ。


「マスターと一緒にいられるなら、姿なんてどうでもいいです」とセレス。


「あはは、あたしたち、マスターのこと大好きだもん!」とミィ。


「……私たちは、マスターのためにいるんです」とノエル。


その言葉に、なぜか胸が締め付けられた。


「そっか……でも、俺はちゃんと責任取らなきゃな」


俺が謎のコマンドを打ち込んだことで、彼女たちはこうなった。

なら、元に戻す方法を探すのも俺の責任だ。


「今日からゲーム内を調査する。お前たちの力、貸してくれるか?」


「もちろん!」


四人の笑顔に、俺も笑顔で応えた。



それから一週間。俺たちはノヴァ・オンラインの世界を駆け巡った。


「マスター、左! 敵です!」


リーナの声に反応して剣を振るう。

彼女のスキル【戦闘直感】のおかげで、敵の攻撃が手に取るように分かる。


「魔力反応を解析……弱点は火属性です!」


セレスの【魔力分析】で敵の情報が丸見え。

適切な魔法を選択し、一撃で倒す。


「あっちに宝箱、発見!」


ミィの【索敵】スキルで、隠し要素もすべて見つけられる。


「回復します——【ヒール】!」


ノエルの【回復魔法】があれば、どんな強敵相手でも倒れることはない。


完全なるチート状態だった。

俺のレベルは急上昇し、あっという間にトッププレイヤーの仲間入りを果たした。


「すげぇな……お前たちがいれば無敵じゃん」


「えへへ、褒められちゃった!」とミィが嬉しそうに飛び回る。


だが——俺たちの本当の目的は、レベル上げじゃない。


「セレス、例の場所は見つかったか?」


「はい。データベースの最深部にアクセスするには、管理者権限が必要です」


「管理者権限……どうやって手に入れるんだ?」


「それが実は……」セレスが困ったような表情を浮かべる。


「マスターはすでに、管理者権限を持っています」


「は?」


意味が分からない。俺はただのプレイヤーだ。

管理者権限なんて持っているはずがない。


「試しに、この扉を開けてみてください」


セレスが示したのは、王城の奥深くにある謎の扉。

何度も挑戦したが、びくともしなかった場所だ。


俺が扉に手を触れる。


すると——扉が静かに開いた。


「嘘だろ……」


中には、見たこともない部屋が広がっていた。

無機質な空間に、無数のモニターとコンソール。

まるでSF映画の研究施設のような場所。


「ここは……ゲームマスター専用のデバッグルームです」とセレスが説明する。


「デバッグルーム? そんなの、プレイヤーが入れるわけ——」


そんなことを話しながら進んでいると、あるものが目に入り言葉が止まる。


部屋の中央にあるコンソールの画面に、見覚えのある名前が表示されていた。


『Welcome Back, Developer:篠原拓真』


「…………え?」


心臓が大きく跳ねる。


「なんで……俺の名前が……?」


「マスター……」ノエルが不安そうに俺を見つめる。


頭が痛い。急激に。

脳内で断片的な記憶がフラッシュバックする。


コードを書く手。無数のモニター。徹夜の連続。孤独なオフィス。


「違う……俺は高校生で……」


「マスター、大丈夫!?」

リーナが心配そうに飛んでくる。


「あたし、なんか変な感じがする……マスター、あたしたちのこと、本当は知ってるんじゃ——」


ミィの言葉が途切れる。


そして——俺はすべてを思い出し、すべてが繋がった。




「思い出した……」

俺は床に座り込み、頭を抱えた。


俺は篠原拓真。二十七歳。

天才と呼ばれたゲーム開発者。


二十歳でVR技術の革新的論文を発表。

二十三歳で独立し、たった一人で「ノヴァ・オンライン」の開発を開始。


誰の助けも借りず、すべて自分の手で作り上げた。


孤独だった。

家族はいない。友人もいない。恋人もいない。


あるのは、プログラムと、無限に広がる仮想世界だけ。


「俺は……このゲームを一人で全部作ったんだ……」


過労で倒れた。精神が限界に達した。


そして——決めた。


自分の記憶を消して、理想の「平凡な高校生」になろうと。

温かい家族がいて、学校に通い、友達と笑い合う。


そんなありふれた日常を、仮想世界の中で作り上げようと。


「だから……お前たちを作ったのか……」


四人のマスコットを見る。


リーナ——強さを求める俺の願望。


セレス——知性と理想の伴侶への憧れ。


ミィ——自由で無邪気な心への憧憬。


ノエル——癒しと無償の愛への渇望。


全員、俺が作り上げた「理想」の象徴。


「そっか……お前たちは、俺が寂しくて作った——」


「違います」

ノエルが強い口調で言った。


「私たちは、確かにマスターが作りました。でも、それだけじゃない」


「あたしたち、マスターのことが本当に好きだよ!」とミィ。


「この一週間、マスターと過ごして、あたしたち本当に楽しかった!」とリーナ。


「AIでも、プログラムでも構いません。私たちの気持ちは、本物です」とセレス。


四人の必死な表情に、胸が熱くなる。


「……ありがとう」


俺は立ち上がり、コンソールに向かった。


「マスター……?」


「決めた」


キーボードに手を置く。


「俺は、現実に戻らない」


「え……?」


「でも、このままの偽りの世界にも留まらない」

コードを打ち込む。管理者権限で、システムの根幹を書き換える。


「俺が作った世界なら、俺が新しいルールを作る」


『警告:システムコアの改変を検出』


『実行しますか?』


「ああ。実行しろ」


エンターキーを叩く。


世界が——変わり始めた。


「マスター、何を……?」


セレスが驚いた声を上げる。


「ゲーム世界と現実世界の境界を、曖昧にしてる」


俺は笑いながらキーボードを叩く。


「どっちも本物。どっちも俺の世界。そういうシステムに書き換えるんだ」


記憶を消して逃げることは、もうしない。

でも、辛い現実だけに戻ることも選ばない。


「お前たちは、俺の孤独が生み出した存在かもしれない。

でも、お前たちと過ごした時間は、確かに俺を救ってくれた」


四人を見つめる。


「だから——これからも、一緒にいてくれるか?」


「マスター……!」


四人が一斉に飛んできて、俺の頬に抱きつく。小さな温もり。

プログラムかもしれない。幻想かもしれない。


でも——俺にとっては本物だ。


「これから大変だぞ。現実の仕事も再開する。ゲーム開発も続ける。

でも、俺一人じゃない」


「当たり前だよ! あたしたちがいるじゃん!」とリーナ。


「私たちは、いつでもマスターの味方です」とセレス。


「あはは、これからも楽しくやろうね!」とミィ。


「……はい。ずっと、そばにいます」とノエル。


システムの書き換えが完了する。


世界が——変わった。


ゲームの世界も。現実の世界も。


その境界が溶け合い、新しい形の「俺の世界」が生まれた。


   


それから数ヶ月。

俺は開発者としての仕事を再開した。でも、今度は一人じゃない。


「マスター、ここにバグがありますよ」


セレスがモニターを指差す。


「マジか。助かる」


「マスター、休憩! コーヒー淹れたよ!」


ミィが小さなカップを運んでくる。

もちろん、俺サイズじゃなくて、彼女サイズの。それを見ているだけで和む。


「マスター、そろそろご飯にしようよ!」

リーナが心配そうに言う。


「分かった分かった。あと十分だけ」


「……ダメです。今すぐです」


ノエルの真剣な表情に、俺は苦笑して作業を中断した。

現実の孤独な部屋は、今や賑やかな開発スタジオになっている。


そして——俺は決めた。


次回作は、「AI と人間が共存する世界」をテーマにしたゲームにしよう。


きっと、誰かの孤独を救えるかもしれない。

俺がこの子たちに救われたように。


「なぁ、みんな」


「なに? マスター」


「ありがとな。お前たちがいてくれて」


「……ふふ、何言ってるの。あたしたちのセリフだよ」


四人の笑顔。

それは、偽物かもしれない。プログラムかもしれない。


でも——俺にとっては、かけがえのない家族だ。


偽りの幸せから逃げず。

辛い現実に潰されず。


俺は、俺なりの「本物」を選んだ。


VRMMOで禁止スキルを使った結果、俺の世界は変わった。

そして——それは、最高の選択だったと、今なら言える。


「さて、じゃあご飯食べたら、新作の企画書作るか!」


「おー!」


四人の声が重なる。


窓の外には、夕日が沈んでいく。


現実か、仮想か。


そんな境界は、もうどうでもいい。

ここが、俺の居場所なんだから。


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