表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤髪のヨナ〜救いのない蜘蛛の息子〜  作者: ヨハン•G•ファウスト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/7

第六幕:クソッタレな名前

文字も書けたし、読めるように慣れた頃だ。

蜘蛛がオレを呼んでいると執事から言われた。

オレはどこに行けばいいか、執事に聞いた。

執事は何も言わずに、オレについてくるように手で示した。

オレも何も言わずについて行った。

もしかしたら、オレは消されるかもしれないーーそういう不安を感じさせた。

もう真夜中だし、蜘蛛はオレに奉仕させたことがないからだ。

質問せずに黙々と歩いた。

もちろん、びっこをひいてだ。

壊れた足はいう事を聞かない。

それでも、不都合を相手に感じさせない。哀れみなんか起こさせない。


初めて来た時の、あの居間に呼ばれた。

蜘蛛は安楽椅子に深く腰掛けていた。

長い指は相変わらずあやとりをしてた。

「君に名前をやろうと思ってねーー」と彼はオレの方を向かずに言った。

「名前?」

その時になって、オレは自分が名前なんて持たなかった事に気づいた。

愛された記憶なんて一切ない。

そして名前さえも、なかった。

ーーオレは不都合なんてない。

ーー誰も聞かないんだ。

ーー必要はない。

でも名前をくれる、その響きは誇らしく思えた。

「ヨナにしよう。聖書の名だ。

君、知っているかーー」と蜘蛛はニヤニヤした。

「知らないーー。読めと言われたら読みますーー」と話しながら、言葉を改めた。

「別に読まなくてもいいーー教養としては読むべきだがねーーヨナは神の命令を逆らった。そして、君も逆らった。あのクソッタレだーー覚えているね? ヨナーークソッタレだーー」


オレは唾を飲み込んだ。

彼の次の言葉を待った。

しばらくの沈黙が続いた。

蜘蛛は指の動きを止めて、安楽椅子から立ち上がった。

長い腕、長い足、さらに白さを増した肌、突き出た額、尖った鼻、そして白髪が揺れた。

ーー前に見た時よりも、人間からかけ離れていた。

蜘蛛は前みたいに、オレの前に近寄ってきた。身体がこわばる。こわばるんだ。止められない。

オレの視線は彼に向けられて、蜘蛛の目もオレを見ていた。あの落ち窪んだ目で。

彼はオレの肩をゆっくりと長い指で掴んだ。

「君の今の神は私だーーふふふ、もはや逆らうことは許されないーーヨナ。いい名前だろーー」


オレはこんな時、クソッタレから教わった言葉を使う事にしている。

「旦那さま、あなた様はーー神さまですーーどうかお気に召すままーー」


(こうして、第六幕はヨナの名で幕を閉じる。)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ