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勇者たちがパッと消えた。


「はーい、どうも~。俺のこと覚えてる?忘れてるか、あは」


「──ッ!」


一瞬の動揺、しかし手練れの王国兵はその動揺を殺し、すぐさま侵入者へスキルを放つ。


「『スパーク』ッ!」


「『バリア』からの~、『ファイアボム』『ウィンドインパクト』!」


風で炎が煽られて一石二鳥だぜ。


クラスメイトたちは呆然としてるね。無理もないか。まだ異世界来て数週間だし。数週間で王国襲撃してるのか俺ら。すげぇな。


「忘れたみんなへ説明ね。俺は前園優希、教室の隅っこでずっと本読んでた陰キャだよ」


反応が悪い。太田くんを殺す。


「──ぁ?」


現実認識中って感じかな。五十嵐ちゃんを殺す。


「は、」


「あ、え、は?」


「──」


「嫌ァアアアあああああああああッッ!!!!?!?!!?」


ようやく発狂してくれた!


「あは、」


「趣味が悪いぞ、ユウキ」


「知ってるでしょ?会ったときから」


「あぁ、そうだな」


甘ちゃんなとこがあるから心配してたけど、勇者が殺されるのを見ても眉一つ動かしてない。こういうとこは魔王様って感じ。


「最後の警告だ。王国民よ、降伏せよ。さすれば命までは取らん」


…やっぱ甘いなぁ。


「私のことを甘いと思っただろう」


お、バレた。心読むスキルとか使ったんかな。


「スキルなど使わんでもお見通しだ」


エリーちゃんはいたずらっ子の笑みを浮かべた。


「実はな、一人たりとも降伏してくれるなと思っている」


「かぁっこいいー、魔王様!」


素敵。好きになっちゃった。


魔王であるエリーちゃんと仲良く話している姿を見て、運良くまだ生きてる王国兵やお姫様の顔が青ざめた。勇者が敵に回った脅威を理解してんだろね。自国側の勇者が完成する前だからなおさら。


「ま、前園…なんで…」


震えた声で加藤くんが話し掛けてくる。勇気あるねぇ、君みたいなのを勇者って言うんだと思うよ。


「なんでって何が?」


「お前っ、こんなことするようなやつじゃなかっただろ!!?」


「覚えててくれたの!?嬉しいっ!」


俺印象薄い方なのに良く覚えてられたね!?


あぁ、でも、そういえば。


「加藤亮司くん、君は人の顔と名前を覚えるのがとても得意だったね。同級生どころか、先輩も後輩も先生も!色んな人に話し掛けて、仲良くなって、まさにコミュ強って感じだった」


そんな加藤くんの死に顔は、驚愕と苦痛と、それに…ふふっ、絶望に溢れた物だった。


反撃されると面倒だし、サクサク行っちゃおう。


「阿久津ももちゃん」


君はアニメ好きだったね。オタク友達とどのシーンが良かっただとか、誰と誰が推しカプだとか話し合ってるのが聞こえてた。修学旅行の班決め直前の席替えで隣になったから、班に誘ってくれたよね。あのときバスで語り合った好きな作品談義、めちゃくちゃ楽しかったよ。


「池田麗央くん」


君は将来ネイリストになりたいって言ってたね。授業中もネイルデザインのことばっかり考えてた。クラスメイト全員の爪を塗り始めたときは驚いたよ。塗られたくないって人にはわざわざネイルチップまで配ってさ。先生に見付かってみんなで怒られた。懐かしいなぁ。


「植村菫ちゃん」


君は良くも悪くも明け透けな人だったね。愚痴っぽいかもしれないけど、本当の意味で人を傷付けることはなかった。不満を溜め込む方が不健康って言ってたのを聞いて、確かにって納得したよ。


「大塚愛桜ちゃん」


君はお洒落好きだったね。髪を巻いたりメイクしたりしては校則違反で怒られてたけど、池田くんと一緒になって反対してた。結局、校則は変えられたんだっけ?全校集会の話聞いとけば良かったなぁ。


「木村理華ちゃん」


君はいつも本を読んでいたね。席が近かったとき、君が読んでる本のジャンルがあんまりにもバラバラだったものだから、特別好きなジャンルがあるのかどうか気になってたよ。本の貸し借りとか、してみたかったな。


「島崎友梨ちゃん」


君は運動が得意だったね。体育祭でリーダーシップを発揮して、クラスをまとめてた。出場した競技でも大活躍だったね。運動ができない俺みたいなのにも優しくて、体力尽きて咳き込んでた俺の背中をさすってくれたの、あれ嬉しかったよ。


「鈴木太一くん」


君はお調子者だったね。みんなにいじられて、みんなをいじって、クラスをほどよい空気感にしていた。ノリを無理強いする人じゃなかったから、あまり話したことはなかったね。明るく振る舞えていれば、あの輪に入れたのかな。


「鈴木由香ちゃん」


君は真面目な人だったね。でも堅物じゃなくて、みんな、特に女子に慕われてた委員長だった。頼られてばかりだったけど、異世界に来て君が頼れる人は見付かった?見付かってると良いな。


「高松亜美ちゃん」


君はアイドルが好きだったね。俺はあんま詳しくないけど、推しに顔が似てるって話し掛けてくれたことがあったっけ。写真も見せてくれたけど、そんなに似てたかなぁ?ちょっと気になってきた。もう一回見たいし、今度調べてみようかな。


マァ、そんなわけでさ。


「俺はクラスで陰キャの空気やってたけど、みんなに興味がなかったわけじゃないんだぜ」


結構ペース良く殺せてるな。エリーちゃんに教わったスキルのおかげだ。


さーて、こっからは巻きで行くぞ~。


「田中くん、坪内くん、手越ちゃん、仲山くん、成田くん、野原ちゃん、日高くん、福島くん、富士くん、堀ちゃん、間宮くん、三上ちゃん、弥生くん、横溝ちゃん」


以上、俺除く二年一組39名!全員欠席です!


いやぁ、死体の山!壮観だね!


「ほら、見ろよエリーちゃん!希望の星だった勇者が全員死んじゃって絶望する王国の人たちをさぁ!!」


「ハハ、あぁ、貴様の悪趣味も今ばかりは理解できる。愉快だなぁ、ユウキ」


でしょ?やっぱりエリーちゃんは最高だ。


「さ、エリーちゃん。立ち止まってらんないよ。王国民を皆殺しに行かなきゃ」


「うんっ!」

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