五
朝一番、
「イヤァアアアアーーーーーーーーーっっ!?!!!?」
四肢がバラバラになった俺を見た魔王ちゃんのかわいい悲鳴が、城内に響き渡った。
「お、おおおおおま、お前っ!は、死んで、」
「死んでないよ~」
「うわぁ!な、はぁっ!?貴様っ!騙したな!?」
「魔王ちゃんが勝手に勘違いしたんじゃん」
騙すならもっと徹底的にやるよ。
「くっ…まぁ、良い。それより、それは…どうなっているのだ?」
「部分的に『転移』できるようになったんだよ」
「はぁ?」
「今は俺の手足だけを別の場所に『転移』させてるって感覚かな。これで何人かの勇者たちは無力化するのも簡単になったね」
「そうか、すごいな…。………いや、いやいやいやいや!!何も真っ先に自分の体で試すことはないだろう!!?」
「なに?配下貸してくれんの?死ぬかもしれないのに魔王ちゃんったらひどーい」
「そうではないっ!!…いや待て、死ぬ危険性は認識できているのか?貴様」
「当たり前じゃん。めちゃくちゃバカだと思われてる?」
「死ぬかもしれないと分かっていながら!なぜやった!!馬鹿者っっ!!!」
「はいはい、魔王ちゃんからしたら貴重な戦力だもんな、俺は」
「そうではないと言っておろうが!!私は、貴様の身を案じて…っ!!」
この反応…へぇ?ふーん。
「たった数日でここまでデレるたぁ、魔王ちゃんチョロいね」
「"でれる"も"ちょろい"も分からんが、バカにされてることくらい分かるぞ」
「かわいいなって思ってるんだよ♡」
「か、かわっ!?け、軽薄な…!」
押すのはもう良いか。
「と、ともかく!貴様、自分の命を軽々しく扱うのは止めろ」
「まーまー大丈夫、今回はちゃんと片腕からちょっとずつやったから、最悪欠損だけで済んだよ」
「貴様…本当に…」
続く言葉は「イカれてるな」かな。照れるね。
「マァ、魔王ちゃんが言うなら次からは木とかで練習するよ」
「気を付けろ。ドライアドの宿る木を傷付けないようにな」
「分かった。ちゃんと声掛けてからやるね」
「いつもそのくらい素直なら良いのに…」
はは、たまに素直になるからイイんだろ?