十
悲鳴がそこかしこで上がっていた。いつしか悲鳴は止んだ。
炎がパチパチと弾ける音以外、シンと静まり返った王国。人っ子一人いない国は、もはや国ではなくなった。
「いやぁ、革命とかじゃなしに国が滅ぶってあるんだねぇ。ガッツリ片棒担いだし、貴重な体験だなぁ」
「…」
「あ、ハハ、見てエリーちゃん。原型とどめてる死体ある。珍し~。でも顔はぐちゃぐちゃだ。なーんだ、じゃあいいや」
「…」
「配下くんたちから連絡は来てない感じ?マァ、攻略法があるからってすぐ片付くもんじゃないか」
「…まだ連絡は来ていない。戦闘中に気が散るのも良くないから、私からも何も言ってない」
お、やっと喋ってくれた。話聞いてないのかと。
「…なぁ、ユウキ」
「なぁに?エリーちゃん」
「私たちは…やったんだな」
目的語がないなぁ。マァ分かるけど。なんてったって、俺たちは親友だからね!
「うん、やったよ。やり遂げた」
「あぁ、ははっ、そうか、そうか…!」
悲願が叶ったとばかりにエリーちゃんは笑い出す。
「あぁ、見ておりますか、父上、兄上…!」
空を見上げたエリーちゃんの横顔は、最初見たあのときの瞳と同じくらいきれいだった。
「ねぇ、エリーちゃん」
「何だ」
「強い君も最高だけど、ここには俺と君しかいないからさ」
頭を撫でて、うつむかせる。身内に泣き顔は見られたくないもんね。
「頑張ったね、エリーちゃん」
「──うぁ、あぁ…!!」
感極まって泣き出してしまった。しょうがないなぁ、エリーちゃんは。特別に胸を貸してあげよう。身体を震わせて泣くエリーちゃんを抱き締めると、そっと手を回してきた。全く、かわいいんだから。
「…ユウキ、ありがとう」
「んー?」
「ありがとう、本当に、ありがとう。私の味方になってくれて!お前がいなければ、きっとなし得なかった!ありがとう…!!」
「あはは、どういたしまして」
感謝の言葉を惜しまないエリーちゃんは素敵な人だ。
きれいで、かわいくて、素敵なエリーちゃん。
君の一番が見たいなぁ。
ね、良いでしょ?エリーちゃん。
「──ぁ…?」
腹に大穴が空いて、膝から崩れ落ちたエリーちゃんの身体を支えず、離して上から眺める。
「が、ぁ?あ…」
お、動いてる。すごいね、この状態でまだ生きれるんだ。
「ゆぅ…き……」
「…ふふっ」
エリーちゃん、その顔すっごいかわいいね。
「ど…して…?」
最初に言ったじゃん。
「俺、絶望顔が一番大好きなんだよ♡」