一
俺たちは静かに…いや、多少の無駄口はありつつも、真面目に授業を受けていたはずだ。
「ゆ、勇者様がこれほどにも…!?」
「我らの祈りが届いたのだ!!バンヤルーベン王国万歳──!!」
「あぁ神よ…!あなた様の恩寵に感謝いたします…!!」
それがどうして、鼓膜が破れそうなほどの大歓声に包まれることになるんだ?
※ ※ ※
俺らを囲む彼らの主張はざっとこんな感じ。
・我々はバンヤルーベン王国の者であり、貴殿らにとっては異世界の住人である
・今、魔王が人間の領土への侵攻をしており、人類は滅亡の危機に瀕している
・そこで、皆様には魔王を打ち倒してもらいたい
この辺でクラスメイトの一人が「命の危険があることに俺たちを巻き込む気か!?」と問い詰める。
それに丁寧な謝罪をしつつ、話を続けた。
・異世界から召喚された者は勇者と呼ばれ、勇者は唯一無二のスキルを持つ
・勇者スキルはとても強力で、魔王に対抗することができる
・もちろん戦わないという選択肢を取っても尊重する
・しかし、我が国は魔王の侵攻で領土が狭まり、貧窮している
・故に、戦わぬ者に対し支援をすることはできない
・これは誘拐した者への脅迫であり、許されざることとは理解しているが、どうか我が国に力を貸してほしい
「スキルは信頼できる者以外には秘匿するものですわ。勇者スキルの確認は、各々の部屋の中でしてくださいませ」
優雅なカーテシーと共に、説明は終了した。
その後はふかふかのベッドがある部屋に案内され、夕食時には豪勢な食事が出されるなど、すげぇもてなし方だった。だけど何か無理してる感は否めなかったな。王様や姫様らしき人は美人だったが、宝石とかの装飾品は微塵も着けてなかったし、騎士たちもどこか痩せてる。
一応警戒して何も口にしなかったんだが、これはガチのパターンか?気になる~。
てなわけで、魔王城に来てみた。






