表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】buddy ~絆の物語~  作者: AYANO
小学生編
8/111

7. ダンスレッスン

 元木に案内されたレッスン室には、練習生と呼ばれる生徒が20人ほど集まっていて、年齢で言うと中学生から高校生が中心となっており、小学生と思われる子どもも4、5人在籍しているようだ。


「君たちは今日は見学だけだから、なにも心配しなくても大丈夫だよ」


 初めての場所で緊張しているだろうと、元木はこまめに声を掛けてくる。

 練習生たちはその様子を、レッスン前の柔軟運動をしながら横目でチラチラと見ていた。


「元木さんが連れてきたみたいだよ」

「小学生の割に、みんな整った顔してるね」

「なんか6人でずっとしゃべっているけど、友達なのかな?」

「えぇ・・・友達同士で、あそこまで顔が整っているのってなくない?」


 など、珍しい見学者に練習生たちは興味津々だ。


 そして6人はレッスンの邪魔にならないよう、ガラス面に沿うように置かれた椅子に座って見学することになった。後ろのガラス越しに親たちがいるのがよく見える。

 そこへ元木が一人の男性を連れてきた。


「みんな、紹介するね。うちのダンス専任講師のダン先生です。練習生からデビュー前の子たちまで彼が中心となって指導しているんだよ」

「初めましてダンです。よろしく。ダンスのダンで覚えやすいでしょ。・・・・・・あれ? もしかして緊張してる?」


 ダン先生と紹介された先生は、物腰が柔らかく優しそうな先生だった。元木とはまた違ったタイプのイケメンだ。そしてイケメンに目がない深尋は、さっきまで萎縮していたくせにダン先生を見るなり、


「最初は緊張してたけど、今は大丈夫だよー。私は新井深尋です。小学校5年生です!」


 と急に元気に、聞かれてもいないのに自己紹介をし始めた。その上さらに、


「はい次、明日香の番だよ」


 などと、まんまと深尋の策に嵌った5人は、ダン先生に自己紹介をする羽目になった。

 一番に深尋から指名された明日香は、目の前にいるダン先生の顔を見上げる。


「藤堂明日香です。小学校5年生です」

「藤堂隼斗です。5年生です」


 明日香に続いて隼斗が名前を告げると、ダン先生がなにかに気づく。


「え? 同じ5年生ってことは双子?」


 ダン先生は男女の双子を初めて見たようで、へぇーっと声を上げながら聞いてきた。


「はい。私が姉で、隼斗が弟です」

「隼斗はねー明日香が大好きなんだよー」

「深尋っ、てめー・・・!」


 初対面のダン先生を前にして、いつもの深尋と隼斗の口ゲンカが始まった。

 これには、間に挟まれた明日香だけでなく、僚、竣亮、誠も呆れ返る。


「いい加減にして!」


 明日香が2人を一喝して、ようやく静かになった。


「葉山僚です。同じく5年生です」

「国分竣亮です。5年生です」

「崎元誠。5年生」


 その後、6人全員がダン先生への自己紹介が終わると、その後ろで元木は6人の名前だけでなく、名字までもちゃっかりメモしていた。


「みんな5年生で同級生なんだね」

「うん。クラスも一緒だよー」

「えぇ、クラスも一緒なんだ。ほんとに仲がいいんだね」


 ダン先生は、この短い時間の中で6人の仲の良さを目の当たりにして、思わず聞いてしまう。

 しかし、5年生になってからこれが当たり前だった6人は、なんでそんなこと聞くんだろう? と不思議だった。


「じゃあ、そろそろレッスンが始まるから、そこで見ていて」


 ダン先生は6人に手を振り、練習生が柔軟運動をしている鏡の前の方へ行ってしまった。

 それから、練習生が3列に並び、それまでざわついていたレッスン室がシーンと静かになって緊張感が走る。


 ドンっという音で音楽が始まると、そこにいた20人がバッと同じ動きを始めた。それはまるで機械で操っているかの如く一糸乱れぬ動きで、20人の手足の動き、ステップの音、頭の振り方など、ロック調の激しい音楽らしくそのパフォーマンスも激しく、それでいて指先は繊細な動きをしていた。その場で動くだけではなく、隊形を変えたりもしている。それを中高校生に交じって、自分たちと同じくらいの子が対等に踊っているのを見て、6人は圧倒されてまった。


(なんだこれ、なんだこれ・・・ドキドキする)

(すごいかっこいい・・・!)


 6人全員、一瞬で釘付けになった。

 あんなに興味がないと言っていた誠でさえも、20人のダンスに見入っていた。その様子を見た元木は、


(感触がよさそうでよかった・・・)


 と、ひとまず安心する。内心、何を見ても興味を示してくれなかったらどうしようかと不安だった。


 長いようで短かったダンスが終わると、練習生たちはハアハアと息が上がっがっている。ここからは音楽なしで、細かい指導をしていくようだ。ダン先生がパンパンパンパンと手を叩き、大きな声を出して指導していた。


 元木は誠のそばに腰かけており、そこから覗き込むように6人の顔を見てみる。すると、2日前に名刺を渡した時と全然違う、元木が声を掛けるきっかけになったあのキラキラとした6人の顔になっていた。


(やっぱり、間違いない。この子たちは俺が見つけた原石だ)


 元木は自分自身の中で確信する。

 この子たちを、この事務所で、自分の手で育て上げたい。

 元木は昨日よりも強くそう思い、その実現のためには何でもしようと心に誓う。


 そのあと30分ほど見学をして、6人はダンスレッスン室を後にした。

 レッスン室を出た6人は、先ほど見た練習生のダンスする様子が脳裏にこびりついて離れない。


 いつか自分たちも、あのように踊れるようになるのかな・・・。そんな考えが頭の中に浮かんでいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ