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【完結】buddy ~絆の物語~  作者: AYANO
大学生編
45/111

44. 旅行計画

 2回のコールで隼斗が電話に出る。


「もしもし、隼斗?」

『んあ? どうした?』

「いまどこ?」

『部屋にいるけど・・・』

「今から私の部屋に来てほしいんだけど」

『え、だって今日お前、女子会って言ってなかったっけ』

「うん。ちょっと相談したいことがあるから」

『まあ、別にいいけど』

「あと、僚と竣亮と誠ってどうしてるかわかる?」

『誠と竣亮はさっきまで俺と一緒に飯食いに行ってて、一緒に帰ってきたから部屋にいると思う。僚はわかんね』

「そっか・・・できれば3人も連れてきてほしいんだけど」

『僚はいるかわからんけど、とりあえず部屋に行ってみるよ』

「うん。お願いね」


 そして通話は終了した。


 女子3人は男の子たちが来るというので、テーブルを片付けし始める。

 明日香が電話を切っておよそ15分。


「ねえ、遅くない?」

「同じマンションの同じ階なのにね」


 不思議に思っていると、玄関の向こう側でざわざわとうるさい声が聞こえてくる。


「あ、来た」


 深尋の声と同時にピンポーンとチャイムが鳴り、インターフォンのモニター画面を見ると、何やら騒がしい。

 その様子を見た明日香は、急いでドアを開けに行く。


「ちょっと、なに騒いで・・・」

「やっほ~明日香ちゃんっ。お待たせっ」


 なぜか楽しげにしている市木が入ってきた。


「市木くん⁉」


 明日香が驚いていると、後ろから僚が謝りながら顔を出す。


「ごめん明日香。こいつ今日うちに遊びに来てて・・・」

「明日香ちゃんのお部屋にまたご招待してくれてうれしいな~」

「おいっ市木! お前は呼んでねぇ!」

「やだな番犬くん。君と俺は心の友じゃないか」


 相変わらず揉める2人。明日香ははぁ・・・とため息を吐いて、


「とりあえずうるさいから、全員入って」


 と、予想外の男子5人を招き入れた。


 いくら広めの1LDKといっても、180㎝超え2人、178cm2人、175cm1人の男5人が入ると、だいぶ狭く感じる。

 ガラステーブルを囲むこともできないので、みんな好きなように床に座り込んでいた。


「明日香、相談って?」


 隼斗が切り出す。が、市木がいることは想定外なので、明日香はどうしようと考える。しかし天真爛漫の申し子である深尋が、あっさりと計画をバラした。


「3月の14日と15日って休みでしょ? みんなで旅行でもどうかなって話してたの」


 明日香もバラされたのは仕方ないと腹を括る。


「みんなで旅行って行ったことないから、どうかなって」

「確かに、みんなで旅行とか行ったことないね」

「しいて言えば、中3の夏に海水浴に行ったくらいか」

「海水浴⁉ 葉山お前、明日香ちゃんの水着姿を見たのか⁉」

「なんで俺だけに言うんだよ。竣も誠もいるだろ」

「でも、あの時の水着って、ほぼ服に近かったような・・・?」

「市木くーん。ビキニはね、私たちの鬼マネージャーにダメだって言われたのー。足も腕もお腹も出しちゃダメって言われてさー」

「さっすがbuddyのマネージャーだなっ。有能すぎる」

「市木、お前しれっと会話に参加してるけど、行く気か?」

「当たり前じゃん! なんで仲間外れにするの⁉」

「いつから仲間だよ・・・・・・」

「市木、その他大勢の女の子たちはいいのか?」

「ち、ちょっと、葉山っ! 俺は明日香ちゃん一筋っ! 変なこと言わないでくれるかな~」

「市木くん、無理なら別に・・・」

「明日香ちゃん、無理じゃないよ~。明日香ちゃんと一緒ならどこへでも行くし~」

「お前、まだ明日香のこと諦めてないんだな。たいがいしつこいぞ」

「失礼だな、番犬くん。一途だと言ってほしいね」

「その割にはこの間別の女の子と・・・・・・」

「だーーっもう! 俺の話はいいから、旅行の話! 葉山こそ予定はないのかよ」


 市木のその言葉に、一同しんっと静まる。


「え・・・あ、俺? 別に何も予定ないけど?」


 明日香はその言葉を聞いて、内心ホッとする。


「おいおい、モテ男がホワイトデーに何の予定もないの?」

「別にいいだろ。それより竣と隼斗は? 大丈夫なのか?」


 僚に尋ねられた2人も、あっけらかんと答える。


「僕も特にはないよ。逆に何しようか考えてたくらい」

「俺もなーい。明日香が買い物行きたいって言ったら、車を出そうかと思ってたくらいだなぁ」


 それを聞いた市木は、急に悲しそうな顔で男たちを見る。


「なんか・・・君たち、こんなに売れてるのにそんなに地味でいいの? 芸能人とかってさ、もっとこう、パーっと華やかで、煌びやかでってイメージなんだけど、全然だね」


 そう言われても、6人はピンとこない。顔を出していないから普通の生活が送れているのは確かだが、自分たちの全てを公表した後のことは全く想像が出来ないでいた。


「そしたら全員OKってことで・・・・・・」

「おい、明日香。なんで俺には聞かないんだ?」


 これまでずっと黙っていた誠が初めて口を開いた。


「え、なんでって、美里が行くなら誠も行くでしょ?」

「そうだよー。だいたいこれを言い出したのは美里ちゃんだしー」

「ほんとか? 美里」


 誠に尋ねられると、美里はうん、と頷く。


「だって、もし誠くんたちが顔を公表したりしたら、みんなで旅行に行くなんてなかなか出来ないだろうし、せっかくだからみんなで思い出作りにどうかなって思って・・・ダメかな?」


 美里が上目遣いで誠にお願いをする。


「・・・わかった。美里が言うならいいよ」


 今日も美里の圧勝だった。

 それを見て明日香と深尋は思った。


(美里って猛獣遣いの女王様だね・・・)と。


「旅行って言っても、1泊2日だからそんなに遠くはいけないね」


 全員が行くとなれば、今度は旅行先を決めなければならない。それが総勢8人となれば、決めるのにも時間が掛かる。と、思われたが。


「なんかー、ずっとレッスンとかお仕事続きだから、温泉に入ってゆっくりしたーい」

「温泉か~。それもいいね~」

「ねぇ、こういうのはどう?」


 明日香がスマホを見せてくる。


「えぇっ、テントの中なのに、ちゃんとベッドもある」

「へぇ、おもしろそうだね」

「これ知ってる。グランピングってやつでしょ?」

「深尋、ここ温泉もあるみたいだぞ」

「そうなの⁉ スゴイっ」

「プラネタリウムもあるって書いてる」

「ロマンチックだねー美里ちゃんっ」

「う、うんっ」

「ご飯はみんなでバーベキューか・・・いいね」

「じゃあ、グランピングでいい?」


 いとも簡単に、揉めることもなくグランピングに行くことに決まった。


「ここなら車で3時間くらいだし、距離的にもちょうどいいな」


 僚が場所を確認しながら言う。


「でも8人だと、車は2台借りた方がいいかもな」

「うん。それは僚たちに任せてもいい? 私はペーパーだし・・・」

「明日香ちゃん、任せて。俺もいるから!」


 意気揚々と市木が胸を張る。


「あ、市木くんも、免許取ったんだ?」

「当たり前じゃんっ。だから今度2人でドライブに・・・」

「ねーねー車に乗るグループ決めよー」

「深尋ちゃん・・・・・・」


 市木のアタックを見事に潰す深尋。隼斗と僚は心の中で「いいぞ! 深尋!」と、初めて心から深尋を応援した。


「車は2台借りるから4人ずつとして、まず、誠と美里でしょ」


 明日香がノートに名前を書きだしていく。


「あと、運転できるのは・・・」

「明日香、僕は誠の所に入るよ」


 竣亮が名乗りを上げる。


「うんわかった。そしたら・・・」

「俺は明日香ちゃんと一緒がいいっ」

「お前っ! だったら俺も明日香と同じ車だっ」

「番犬くんはまこっちゃんのとこいきなよ~」

「まこっちゃん?」


 そう。と言って、市木が誠を指さす。


「誠のことをそういう風に呼ぶ奴、小学校以来だな」

「お前医大生のくせに、頭は小学生なんだな」

「おいっ、葉山も番犬くんもひどいよっ」

「明日香ー。私も美里ちゃんと同じ車に乗るー」

「え? 深尋・・・」

「だって、市木くんをコントロールするのは僚と隼斗がいなきゃでしょ? 私じゃ無理だもん。それに、こっちの方が落ち着いているしねー」


 明日香は確かに・・・と思った。絶対、誠と竣亮の運転する車の方が、快適に過ごせる、と。


「じゃあ、それで決まりだね~」


 市木が勝手に決定を出す。話し合いの結果、誠、美里、竣亮、深尋のグループと、僚、明日香、隼斗、市木のグループに分かれることになった。


 旅行まで約2週間。楽しみなような、気が重いような、そんな矛盾した感情でその日を迎えることになる。


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