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【完結】buddy ~絆の物語~  作者: AYANO
大学生編
44/111

43. 女子会

 2月も終わりに差し掛かった頃。

 各大学は春休みを迎え、6人は新曲のレコーディングや振り付け、レッスンと、忙しい毎日を過ごしていた。


 世間にはまだ姿を見せていないbuddyだが、いずれはお披露目をする予定なので、リリースした全曲に振り付けがされている。

 それを忘れないためにも、レッスンで定期的に踊り、確認をしていた。


 久しぶりに丸1日休みとなっている日曜日の夕方から、深尋と誠の彼女の美里が、明日香の家に来ることになっている。

 そのため明日香は朝から掃除、洗濯と、家事に追われていた。


「まぁ、こんなもんかな」


 リビングダイニングの床をウェットシートで拭き上げ、ソファーでひと段落する。ガラステーブルの下にふと目線が行くと、大学で配られた「海外留学」のパンフレットを見つけ、明日香はそれを書類が置いている棚に片付けた。


 夕方5時前。玄関のチャイムが鳴り、インターフォンのモニターに、深尋と美里が立っていた。


「お邪魔しまーす」

「明日香さん、今日は誘って頂いてありがとうございます」


 2人は夕飯の材料を買い出しに行ってくれてたようで、スーパーの袋からガサガサと音を出している。


「もう、明日香さんじゃなくて、呼び捨てでいいよ。美里とも長い付き合いなんだし」

「そうだよー美里ちゃん。この調子だと、もっと長い付き合いになるかもだしー」


 イヒヒ・・・と、深尋がからかうように言うと、美里はポッと赤くなる。


「ほら深尋。美里がかわいいからってイジメると、誠から仕返しされるよ」

「いいなぁ美里ちゃんは。守ってくれる人がいてさー」


 パスタを茹でるために袋をバリッと開けながら、深尋がボヤく。


「え、でも、深尋ちゃんも明日香も、彼氏は・・・」

「2人ともいないよー」

「そんな・・・ほんとに?」

「こんな情けない嘘つかないよ」


 明日香はポテトサラダのジャガイモの皮をむきながら、苦笑いをする。


「2人ともこんなに可愛くて、美人なのになんで・・・」

「ねー? 見る目のない男ばっかりだよねーっ」


 深尋は誰かに向かって言ってやった。


 今日のメニューは、トマトクリームパスタと、ポテトサラダ、コンソメスープに、デザートがたくさんというメニューだ。


「美里、誠とケンカとかしないの?」

「した記憶がないかな。誠くん優しいし、大体のことは受け入れてくれるから、ケンカにならないというか・・・・・・」

「あの誠が、美里ちゃんの前だとそうなんだねー」

「なんか、美里の前で彼氏をしている誠があまり想像できないな」

「明日香と深尋ちゃんは、誠くんのこと小学生の頃から知ってるんだよね? 誠くんって、どんな子だったの?」


 美里にそう言われて、2人とも小学生の頃の誠を思い出す。


「色黒で、スポーツマンだったよー」

「そうそう! 河川敷で日光浴とか言って、日に焼けてたね。中学になると、だんだん薄くなっていったけど」

「そして、私たちの中で一番ダンスが上手い!」

「え、あ、誠くんが一番上手なの?」


 美里はbuddyの曲はよく聞いているが、振り付けを一緒にしているのは見たことがない。なので2人の話に俄然興味が湧いてきた。


「そだよー。誠から見せてもらったことない?」

「あの、デビューする前は何回か見せてもらったんだけど、デビューしてからは見たことがなくて・・・」

「えー? そうなのー? なんでだろ・・・」

「美里が見たいって言ったら、見せてくれるんじゃないかな? 私たち振り付けの確認のために、みんなで動画を共有しているから、誠も持っているはずだよ」


 ジャガイモの茹で具合を確認しながら、明日香が言う。


「じゃあ、今度言ってみる」

「うん。言ってみて」

「美里ちゃん、ますます惚れ直しちゃうかもよー?」


 イヒヒとまた深尋が揶揄うように笑った。


 パスタとポテトサラダ、スープが出来上がり、女子3人でソファのガラステーブルを囲む。


「いただきまーす」


 簡単な料理ではあるが、なかなか上手くできた。


「明日香、このポテトサラダおいしいー」

「ほんと、おいしい。あとでレシピを教えてほしい」

「2人ともありがと。私もお母さんから習ったんだ」


 料理上手な明日香は、そのほとんどを母親から習っていた。母親が作る料理はどれも好きだが、中でもポテトサラダが好きで、よくこうして作っている。


「隼斗もそのポテトサラダが好きだから、残った分は隼斗にあげようかな」


 明日のメニューを考えながら、何気なく言う。すると、


「ふふふっ」


 と、美里が口を押えて小さく笑った。


「なに? なんか、変なこと言った?」

「ううん。みんな、隼斗くんのことをシスコンっていうけど、明日香も隼斗くんのこと大好きだよね」


 美里に図星を指された明日香は、一瞬で顔が赤くなる。


「美里ちゃーん。それいっちゃうー?」

「ごめんっ。ダメだった?」

「ダメじゃないよー。ただ、明日香に自覚がないだけだからー」

「深尋っ、美里も・・・」


 恥ずかしそうにしている明日香をみて、深尋はますます面白くなっていた。


「だって、そうじゃん。何かあれば一番頼りにするのは隼斗でしょ?」

「う・・・だって、一番何でも言いやすいから・・・」

「でも、双子ならではの以心伝心なんかも関係してるんじゃ?」

「以心伝心・・・・・・」


 そう言われて明日香は思い出す。


 小さい頃、どちらかが熱を出すと、決まってもう一方も熱を出したり、食べたいと思ったものが一緒だったり、逆に嫌いなものも全く一緒だったり。

 夏祭りで自分が迷子になったとき、大人よりも、誰よりも先に見つけてくれたのは隼斗だった。


「うん、そうかも。私、自分が思っているより、隼斗のことが好きだし、大切なのかも」


 なぜか急に素直に自分の気持ちが降りてきた。


「ひええええ・・・・・・」

「き、禁断の・・・・・・」

「違うっ! あくまでも姉弟として、弟としてだよっ」


 そこだけははっきりと主張する。


「でも、いまの明日香の言葉を隼斗くんが聞いたら、泣いて喜びそう」

「ダメダメ! そんなこと言ったら、ますます束縛がきつくなって、明日香がお嫁に行けなくなっちゃうよー」

「ははは、そんな大げさな」


 明日香はそんなことないと思っているが、深尋と美里は割と本気で明日香の嫁入りを心配していた。


 食事も済み、デザートのプリンやシュークリームを食べていると、深尋がため息を吐きながら言い出す。


「はーあ。旅行にでも行きたいなー」

「行きたいね。春休みに入った途端、いろいろスケジュールを入れられたから、少しは遊びたいよね」

「みんなで旅行って行ったことないの?」

「あるとしたら、小学校の修学旅行くらいかな」

「そだねー。中学からはバラバラだったし、プライベートではないよね」


 そして、3人は沈黙する。たぶん全員同じことを考えているのだろう。


「明日香、3月の予定って、どうなってたっけ?」


 明日香はスマホを取り出し、3月のスケジュールを確認する。


「14日、15日が休みだね・・・」

「ということは・・・・・・?」

「行っちゃう? 旅行」

「美里も入れて3人で」


 美里はえ? 自分も? とポカンとした顔で2人を見る。


「待って、深尋。その日はホワイトデーだよ。美里を連れて行ったら、誠に怒られる」

「うーん・・・」


 明日香と深尋が頭を悩ませている中、美里はどうしたらいいかわからず、オロオロしていた。


「美里ちゃん。誠って、車の免許持ってたよね?」

「あ、うん。持ってるけど・・・・・・」


 誠だけでなく深尋以外の全員が、高校卒業と同時に教習所に通い、運転免許証を取得していた。しかし明日香は、免許取得以降ほとんど運転していない、いわゆるペーパードライバーだ。


 男子4人はマイカーは持っていないものの、カーシェアリングで出掛けたりしていたので、普通に運転はできる。


「誠に運転してもらって、4人でっていうのは?」

「ないないっ! 深尋、それじゃあ完全に私たちはお邪魔虫でしょっ!」

「ダメかー・・・・・・」


 深尋がしょぼんとすると、美里から意外な提案がされた。


「あ、あの・・・みんなで行くっていうのはどうかな?」

「みんなって・・・・・・」

「ここの女子3人と、男子4人で。だって、プライベートで旅行したことないって言ってたし、もし、世間に顔を出すようになったら、ますます行けなくなると思うから。思い出作りにいいかなって・・・」


 明日香と深尋は、美里からの提案に一気に胸が踊る。


「美里、いいの? 誠と2人っきりじゃなくても」

「うん、いいよ。ホワイトデーは来年もあるし、今年はみんなで過ごしたら楽しいと思う。逆に私がいて申し訳ないけど・・・」

「そんなことないっ。美里ちゃんがいた方が、もっと楽しいよ!」


 そうして美里も旅行に参加することに決まった。


「でも、私たちはいいとしても、男の子たちはどうなんだろう?」

「まず、誠は大丈夫。美里をこっちに引き込んだから。問題は隼斗と僚と竣亮か・・・・・・」

「もし、彼女さんとかがいれば、無理なんじゃ・・・?」


 美里が心配するのもわかる。実際、いてもおかしくないからだ。それを考えると明日香の胸は痛むが、気持ちを伝えないと決めた時にはそういう覚悟をしていたので、そこは気丈に振舞った。


「そんなこと聞かなきゃわからないから、直接聞いてみよう」


 そうと決まったら話は早い。明日香は早速、隼斗に電話を掛けた。

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