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【完結】buddy ~絆の物語~  作者: AYANO
大学生編
41/111

40. 新生活スタート

大学生編が始まります。大人に近づいていく6人を見守ってください。

登場人物も増えます(^^ゞ

 buddyがデビューして3年。6人は大学生になっていた。

 僚はそのまま付属の大学へ進学。明日香は私立の外国語大学へ。竣亮は難関の国立大学へ進学した。隼斗、誠、深尋は学部は違うが、3人とも同じ私立大学へ進学した。


 大学入学後も顔を隠しての歌手活動を継続しており、世間ではすっかりそれが認知されている。

 その活動も順調で、映画・ドラマ・CMなどでタイアップしており、そのほとんどがヒットした。


 曲調も様々で、ロック調の激しいものからバラードまでと幅広く、歌詞に共感する若者が増えたこともヒットした理由だろう。

 これには6人の努力もそうだが、元木のサポートと、Evanのプロデュース力が合わさることによって生まれた当然の結果だった。


 そして大学入学後に一番変化したことは、6人とも実家を出てマンション暮らしをしているということだ。


 高校生までは決められた曜日に行われていたレッスンも、大学生になるとそれが難しくなってしまった。レッスンが出来る日も、時間もバラバラ。


 そこで事務所が考えたのは、事務所近くの5階建てマンションの最上階にある6部屋を全て借り上げて、6人を住まわせるというものであった。いわゆる宿舎と同じ扱いだ。


 事務所からも近い場所に借りることで、レッスン時間が遅くなっても帰宅時間が短時間で済むし、6人全員が同じ建物にいるので、何かと対応がしやすい。


 6人にとっても、部屋は1人1部屋ずつ与えられるので、1人暮らしと変わらない生活ができることが良かった。


 部屋は1LDKで、玄関を入るとすぐ手前にお手洗いがあり、その奥に洗面所とバスルームがある。廊下を挟んで向かい側に寝室、廊下を進んだ先のドアを開けると、カウンターキッチンとつながったリビングダイニングという、初めての1人暮らしには少々贅沢な物件であった。

 オートロック完備で、尚且つ5階には6人しか住んでいないため、防犯面でも優れている。


 それもこれも、buddyのCD売り上げや配信サービスでのダウンロード数が当初予想していたよりも好調で、いまとなってはGEMSTONEの中でもトップクラスの稼ぎ頭になっていたことがこの高待遇に結びついていた。


 そうして大学入学後の7月から、6人は同じマンションでの生活をスタートさせていた。


 年の瀬迫る12月中旬。

 竣亮は大学の図書室でレポートの作成に追われていた。


 やっとの思いで書き上げたその時、竣亮の隣を2つほど開けて、年上と思われる女性が座る。

 女性はスマホを操作し、自分の耳にワイヤレスイヤホンを差して本を読み始めた。


 竣亮は自分のレポート作成が終わり、帰り支度をしていると、何とはなしにその女性のスマホが目に入る。


 するとそのスマホには『buddy』のロゴステッカーが一面に貼られていて、竣亮は思わずそれを凝視してしまった。


(僕らのステッカーを貼ってくれている人がいる・・・・・・!)


 それだけで、単純に嬉しいと思う。自分たちは顔を出していないのに、応援してくれている人がいる。それを改めて実感させられた。


 あまりにも凝視していたのだろう、竣亮が自分のスマホを見ていることに気づいた女性が不信に思い、左耳のイヤホンをはずし、


「なにか?」


 と聞いてきた。竣亮は慌てて、


「あ、ごめんなさいっ」


 と謝罪し、荷物をまとめて図書室を出ていく。


(聴いていた音楽も僕らの曲かな? そうだったらいいな)


 なんてことを思いながら、マンションへ帰る。


 マンションが見えてくると、竣亮の前を手を繋いで歩く誠と美里の姿が見えた。


「誠っ! 立花さーん」


 竣亮が2人を呼ぶと、2人同時にこちらを振り返る。


「おう。いま帰りか?」

「国分くん、久しぶり」


 手を繋いでいるのを見られたのが恥ずかしいのか、美里は少し赤くなっていた。


「2人とも相変わらず仲がいいね」

「まあな」


 美里は6人の歌手活動を知る唯一の同級生で、高校1年のデビュー前から誠と交際している。

 誠の溺愛ぶりは相変わらずで、それが自然と表れているからか、全く嫌な感じがしない。ちなみに美里も、誠と同じ大学だ。


 3人でマンションのエントランスを抜け、エレベーターに乗り、5階のボタンを押す。


「国分くん、ご飯食べた?」

「ううん、まだ。自分でテキトーに作ろっかなって」

「そしたら一緒に食べない? 私が作るんで、味の保証はしないケド・・・」

「そんなことない。美里のご飯はいつも美味しい」


 そう、こういう感じで自然にイチャつく。


「え、でもお邪魔しちゃ悪いし・・・」

「みんなで食べた方が楽しいし、ね? 誠くん」

「美里がそういうなら、竣亮も一緒に・・・」


 なんだかんだ美里に激弱の誠が折れた。


「じゃあ、ごちそうになろうかな。着替えてから誠の部屋に行くね」


 そう言って、誠と竣亮は部屋の前で一旦別れた。


 ちなみに6人の部屋割りは完全にくじ引きで決めた。

 エレベーターを降りてすぐの角部屋から、誠、深尋、竣亮、僚、明日香、隼斗の並びだ。角部屋争奪戦を制したのが、誠と隼斗だった。


 その頃、マンション近くのスーパーで、大学帰りの明日香は夕飯の買い物をしていた。


(今日は肉じゃがと、卵焼きと、もう1品ないと、隼斗は足りないかな)


 夕飯のメニューを考えながら、スーパーの中を歩く。

 隼斗はほぼ毎日、明日香の部屋でご飯を食べている。なので、2人分作ることが当たり前になっていた。その分、隼斗からきっちり食費を貰っているが。


(もう1品・・・考えるのめんどくさくなってきたな)


 そう思い、明日香は総菜コーナーへ向かう。こういう時、スーパーのお惣菜は助かる。


 総菜コーナーに着くと、夕飯時というのもあって、主婦や会社帰りのサラリーマンで賑わっていた。もう1品を何にするか悩んでいると、人込みの中に僚の姿を見つけた明日香は、僚に声を掛ける。


「僚、お疲れ」

「あ、明日香・・・お疲れ」


 僚はなぜか気まずそうに目を泳がす。

 どうしたんだろうと思った明日香は、僚が持っている買い物かごの中を見てひとこと言ってしまう。


「あのさ、お母さんみたいなことを言うようだけど、揚げ物ばっかりじゃ体壊すよ?」


 僚の買い物かごの中は揚げ物のオンパレードだった。


「うっ・・・わかってるけど、今日やっと課題が終わって、早く休みたかったんだ・・・」


 それを聞いた明日香は少し考える。


「なら、私の家に食べに来ない?」

「え・・・? でも、大変だろ?」

「別に大変じゃないよ。隼斗も来るし、2人分も3人分も変わらないよ」


 そう言いながら、明日香は僚が持っていた揚げ物を元に戻す。


「・・・・・・じゃあ、お邪魔します。明日香、かご持つよ」

「ありがと」


 そうして2人でマンションへ帰ることにした。


 明日香はまだ僚のことを完全に吹っ切れたわけではない。

 今でも好きな気持ちには変わりないし、僚に優しくされると悲しくて、苦しくて、ツラいこともたくさんある。

 本当は、夕飯に誘うべきではなかったのかもしれない。けれど、やっぱり心配になるのだ。


 今はまだ、僚に恋人がいる様子はない。だけどそれも時間の問題だ。僚が本当に好きになった人と恋をして、その相手と一緒にいる姿を想像するだけで、胸が張り裂けそうになる。


 まだそう思うほど、僚に片想いしていた。

 そんな中、明日香は一つの決断をしようとしていた。


「新井さん、今日ヒマ?」


 大学構内を歩いていると、深尋は同級生の・・・Aくんに声を掛けられる。

 Aくんなのは、深尋が彼の名前を覚える気がないからだ。


「ヒマではありません」

「明日は?」

「明日も、明後日も、ずーっとヒマではありません」


 言うだけ言うと、深尋はスタスタと歩き出す。しかし、Aくんも後ろからついてくる。


「新井さんさ、経済学部の藤堂と付き合ってるの?」

「は? なんであなたにそんなこと言わないといけないんですか」

「気になるから」

「隼斗とは付き合っていませんし、あなたが気にする必要はありません」


 それ以上話すことはないと、今度こそAくんを振り切って行く。

 深尋も深尋で、元木への思いを拗れに拗らせていた。もう半分、意地になっているようなものでもある。


(私も明日香もほんと、不毛すぎるよ・・・・・・)


 深尋と明日香は、たまに女子会と言って、2人でご飯を食べながら愚痴を言い合っている。その内容は主に、元木と僚のことだ。

 2人とも叶わない恋をしていることで、お互いに慰めあっていた。


(私も来年には20歳になるのに、いつまで経っても子ども扱いだし)


 元木のことを考えると、また愚痴りたくなる。

 元木も今年で36歳になったが、いまだに独身貴族だ。buddyがデビューして以来、仕事が忙しいこともあるが、元木の場合、女性に構っていられないのが本音だろう。


 とはいえいい大人なので、それなりにいろいろ経験はしているが、どれも大人のお付き合いでスマートに終わらせてきた。自分にはその方が性に合っていたし、結婚なんて考えてもいない。


 ましてや、自分が見つけ、育てた原石に手を出そうなんて、微塵も考えなかった。深尋の思いに気づいていても、受け入れるでもなく、拒否するわけでもなく、気にしていない素振りを見せるしかない。

 そんな元木と深尋がうまくいくことは、もはや不可能だった。


 駅からマンションに向かって歩いていると、後ろから隼斗が声を掛けてきた。


「おう、お前も同じ電車だったんだな」


 隼斗が深尋に近づいてくる。するとさっきAくんに言われたことを思い出し、深尋は隼斗の顔をじっと睨みつけた。


「なんだよお前、定期的に俺を睨むのが楽しいのか?」

「全然楽しくない」

「そんな顔、元木さんに見られると嫌われるゾ」


 隼斗がうっかり地雷を踏む。


「うるさい! バカ隼斗!」

「なんだよ、情緒不安定だなー」


 相変わらずギャーギャーと小競り合いの多い2人。

 そしてスーパーに近づくと、店内から僚と明日香が出てきた。


 言い合いをしていた2人は「あっ」となり、隼斗が声を掛けようとする。


「待って、隼斗っ」

「なんだよ」

「いいから、そっとしとこ?」


 深尋に止められ、隼斗もそこに立ち尽くす。

 そして隼斗は、僚と明日香が遠ざかっていくのを見ながら呟く。


「こうしてあの2人見ていると、普通にお似合いのカップルにしか見えないんだけどな」

「うん、明日香は早く忘れたいって思ってるけど、結局まだ・・・」

「というかさ、僚が鈍感すぎないか?」

「うーん・・・逆に近すぎて気づいてないパターンもあるかもね」

「お前もたいがい拗れてるけど、明日香も拗れてんな」


 僚と明日香の姿が見えなくなったのを確認して、隼斗と深尋も歩き出す。


「いいよねー隼斗は。拗れる相手がいなくて」

「はぁ? お前、俺がどんだけモテるか知らねーだろっ」

「知らなーい。興味ないもん」

「よーしわかった! 俺の武勇伝を聞かせてやる!」

「うわ、ダッサ。武勇伝とかサイアク・・・・・・」

「羨ましいんだろ! え? 深尋!」


 こうしてまた小競り合いをしながら、マンションへ帰っていく。


 そして6人は、20歳になる年を迎えようとしていた。

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