表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】buddy ~絆の物語~  作者: AYANO
小学生編
3/111

2. 紡木小学校5年2組

 スカウトされた翌日。今日は1学期の終業式の日。

 明日から夏休みということもあり、子供たちは朝からそわそわ落ち着かない。


 風見市立紡木(つむぎ)小学校は1学年に3クラスほどの小学校で、6人は全員、紡木小学校に通う5年生だった。


 5年生になって初めて全員が同じクラスになり、班の活動で仲良くなったのをきっかけに放課後もつるんで遊ぶようになった。仲良くなった大きなきっかけを作ったのが双子の藤堂姉弟である。


 もともと男の子同士、女の子同士仲が良かったのが、藤堂姉弟のつながりでより仲が深まった。


 その藤堂姉弟は男女の双子であるが、これまでも1年生、3年生の時に同じクラスになっている。同じクラスになることで手間が省けることも多く、学校の先生方はわざわざ別のクラスにしようとは考えていないらしい。

 その5年2組の教室に藤堂明日香(とうどうあすか)隼斗(はやと)の双子の姉弟が登校してきた。なんだかんだと毎日一緒に登校してくるので、本人たちは認めないが仲はいい。


 2人が教室に入ると早速声を掛けられた。


「明日香ーおはよー。ついでに隼斗もー」


 明日香の親友の新井深尋(あらいみひろ)がそばに寄ってきた。


「ついでは余計だよ面食い女」


 隼斗が悪態をついても、2人はいつものこととばかりに気にしない。


「おはよう深尋。ねえねえ、昨日のこと誰かに話した?」


 明日香は席に着く前に、昨日からずっと気になっていたことを深尋に聞いた。

 すると深尋は明日香の袖を引っ張り、教室の隅のほうへと移動する。


「あのさ、パパとママに言って名刺を見せたら、ネットで調べてくれたの」

「うちもだよ。隼斗と一緒に話したら、びっくりしてた」

「それで、なんだっけ? じぇむすとーんっていう事務所が本当にあって、そこの社長が昨日のイケメンお兄さんと同じ苗字だったの」

「え、だったらやっぱりあのお兄さん・・・・・・」


 深尋が言いかけると、後ろから声を掛けられる。


「明日香、深尋」


 2人が振り向くと、そこにはいつの間にか隼斗と葉山僚(はやまりょう)が立っていた。


「あ、僚。おはよう」

「おはよー」

「おはよ。あのさ、昨日のこと家族以外に誰かに話した?」


 挨拶もそこそこに僚は2人に聞く。


「ううん。誰にも話してないよ」

「私もー。ねぇ、今日お兄さん河川敷に来てくれるかなー?」


 昨日の元木のことを思い浮かべながら、深尋が尋ねる。

 こいつ、相当あのお兄さんが気に入ったんだなと僚は思ったが、いちいち相手していると話が進まないので、無視することにした。


「いいか、昨日のことは内緒にすること。家族以外の誰にもしゃべったらだめだ」

「先生にも?」

「・・・それは親に任せよう。とにかく、今はまだ俺たちだけの秘密だ」

「それ竣亮と誠には言ったの?」


 明日香が教室をぐるりと見渡すと、ちょうど2人が入ってくるところだった。


「竣! 誠!」


 僚は教室に入ってきた2人に手招きをする。


「みんな、おはよう」


 へらっとはにかみながら国分竣亮(こくぶしゅんすけ)が挨拶をする。


「ういっす」


 片手をあげて挨拶するのは色黒のスポーツマン崎元誠(さきもとまこと)だ。それから僚は2人にも、


「昨日のことは俺たちだけの秘密だ」


 と話した。深尋が「なんでー?」と聞くと、僚は「また放課後に話すよ」とだけ告げた。5人は一番しっかり者の僚が言っているのだからそうしようとその話はそこで終わった。それくらい、5人から僚への信頼度は厚い。


 6人での秘密会議が終わると同時に始業ベルが鳴り、それぞれの席に着く。


 体育館での終業式後、教室に戻ると先生から通知表が配られた。


「うわ! 僚くんすご!」

「◎ばっか。さすがだな」


 竣亮と誠が僚の通知表を後ろの席からのぞき見る。


「お前ら、でかい声出すな」


 後ろを振り向き、キッと睨んだがもう遅い。席が離れている明日香のところまでばっちり聞こえていた。それを聞いて明日香はふと疑問に思う。


(僚って放課後いつも私たちと遊んでいるけど、いつ勉強してるんだろ?)


 うーん・・・・・・と考えていると、近くにいたクラスメイトの女の子たちがきゃあきゃあと話しているのが聞こえてきた。


「葉山くんすごいね。頭もいいし、スポーツ万能だし、なんたってかっこいい!」

「ね! 1組と3組の女子に、2組の女子がうらやましいって言われたよ!」

「私も! あと、いつも一緒にいる藤堂くんもかっこいいしね」


(隼斗がかっこいい? そうなの?)


 いつも一緒にいる姉としては謎だった。僚がモテるのは知っていたが、隼斗までとは思わない。それに加え、竣亮は中性的でかわいらしい顔をしており、誠は日に焼けたスポーツマンで、実はこの2人にも隠れファンが多いことを知っていた。


 それを知っているからこそ、明日香は放課後6人で遊んでいることを他のクラスメイトには言わずにいた。余計な妬み嫉みをぶつけられるのは勘弁してほしいというのが本音だ。


(やっぱり、あの男子4人と毎日遊んでいるのは内緒にしよう)


 明日香は隼斗を除く3人の男子を特別意識したこともないし、なにより6人で遊んでいるのが楽しかった。

 変に気を使うこともないし、逆に気を使われることもない。一緒にいて楽で、居心地のいい友達なのだ。そんな関係を壊したくはなかった。


「明日香ー帰ろー」


 ホームルームが終わると、明日香の席に深尋が寄ってくる。

 今日は終業式のため給食はなく、昼前には学校が終わった。


「深尋、今日家の人は?」

「ママは昼勤で、パパは今日から出張でいないの」

「じゃあ、うちで一緒にお昼ご飯食べる? どうせ河川敷に行くんだし」

「ほんと? いいの?」

「いいよ。うちのお母さんも喜ぶし」

「やった! おばさんのご飯好きなのー」


 2人でそんな話をしながら靴箱に行くと、僚と隼斗も上履きから靴に履き替えているところだった。


「あ、明日香。今からお前んちにお邪魔するな」


 僚が靴に履き替え、向き直りながら明日香に言う。


「え、あぁうん。別にいいけど。深尋も今からうちに来るし」

「げぇ、深尋も来るのかよ」


 隼斗が嫌そうな顔をする。


「私は隼斗の家に行くんじゃないの。明日香の家に行くんだよ」

「うるせー屁理屈言うな! 明日香の家は俺の家でもあるんだからな」

「はいはい、私に明日香を取られたからって焼かないのー」

「~~・・・・・・! お前、俺をシスコン扱いするなって言ってるだろ!!」

「隼斗がいくら否定しても、シスコンなのはバレバレだよー」


 へへーんと深尋が隼斗を挑発する。

 そんな2人の言い合いを、僚と明日香はあきれながら見ていた。


「もうほっといて行こうか」

「そうだな、どうせ目的地は同じだし。ケンカしながら帰ってくるだろ」


 僚はぷいっとそっぽを向くと玄関を出て、正門に向かって歩き出した。


「深尋、隼斗、先行ってるよ」


 明日香も2人に言うと僚に続いて歩き出す。


「あー! 待ってよ明日香ー」

「おまっ、深尋! 俺より先にうちに入るのは許さんからな!」


 ぎゃーぎゃー2人で言い合いながらも、後ろから追いかけてきた。

 こうして口喧嘩をしても本気になることはなく、言うだけ言った後はあっけらかんとしている。この6人はそういう関係なのだ。


 明日から夏休み。今年はいったいどんな夏になるのだろう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ