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【完結】buddy ~絆の物語~  作者: AYANO
中学生編
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12. 変わったもの、変わらないもの

 子どもたちがGEMSTONEに練習生として入所して4年が経ち、小学校5年生だった子どもたちは中学3年生になった。この4年の間に、いろいろな変化や出来事があった。


 まず、僚と竣亮は中学受験をし、それぞれ別々の私立中学校へ進学。

 深尋は両親が隣市に家を購入したため引っ越すことに。そのため、学校の区域が変わり、隣市の中学校へ通うことになった。


 結局、同じ中学校へ通うことになったのは、誠、隼斗、明日香の3人だけになってしまった。明日香は小学校の卒業式から中学校の入学後しばらくの間は寂しくて仕方なかったが、新しい友だちが出来始め、中学校生活にも慣れてくると、だんだんと寂しさは薄れていった。


 そして1番の変化は、男の子たちの身長が格段に伸びたことだ。

 小学校のときは6人全員、同じくらいの身長だったが、中学2年生になる頃には僚、隼斗、誠は170cmを超えており、竣亮も3人に追いつく勢いだった。

 その頃から4人とも変声期を迎え、ボイトレのメニューが変わったりもしていた。


 女の子たちも、深尋は身長も伸びたが、髪の毛もボブからセミロングに伸ばし、可愛らしい子がすでに美人さんへとなっていた。

 明日香はもともと背中の真ん中まで適当に伸ばしたロングヘアだったが、最近は気を使って自宅でヘアパックなどをし、つやつやのロングヘアを保っている。そのおかげか、ますます高嶺の花となってしまっているらしいが、本人はそれに気づいていない。


 そして、体つきも女性らしい体つきになっていることを、男子4人はちゃんと見ていた。


 こうして学校はバラバラになった6人だが、GEMSTONEでのレッスンは欠かさず通っている。毎週日曜日には、そこでみんなと会えるのだ。


 梅雨のジメッとした日が続いている6月、明日香は1人電車でレッスンに行くため駅へ向かっていた。

 中学生になり、みんな部活動を始めたため、住んでいる家は近くても別々にレッスンへ行くことが多い。


 同じ中学の隼斗と誠はバスケット部に入部し、今日は部活が終わり次第、事務所へ直行する事になっていた。

 明日香は中学生になって英語の楽しさに目覚めたのをきっかけに、部活は英会話クラブに入部。部員はわずか5人の弱小クラブではあったが、それなりに楽しんでいた。今日は部活がないため、早めに家を出ることにしたのだ。


 駅に着き、カバンからICカードを出して改札に向かおうとすると、僚が背中を向けて立っていた。


「りょ・・・」


 明日香がいつも通り声をかけようとすると、僚の前に小柄で華奢な女の子が俯いて立っていることに気がつく。


(うわ、ヤバ。どうしよう・・・)


 明らかに雰囲気が気まずい。このまま無視するべきか、どうしようか悩んだ末、明日香は女の子の後ろ側を通り、僚から見える位置に立った。そして僚と目が合うと、声を出さず口だけを動かし、


「さ・き・に・い・く・ね」


 と言って改札を通った。


(ふぅ、やれやれ。モテる男は大変だねぇ)


 明日香は巻き込まれ事故を回避することができて一安心・・・と思っていた矢先、ガシっと後ろから左肩を掴まれた。驚いて右側を向くと、僚が明日香の肩を抱いてきた。


「なっ、なにすっ・・・」

「頼む、後ろ振り向かないで、そのまま前見て歩いて」


 中学になり、低くなった声で僚が明日香の耳元で囁く。

 わけがわからない明日香は「え・・・・・・? あ、うん」と言うしかなかった。


「ありがと、助かる」


 僚に肩を抱かれたまま、2人は駅のホームへと続く階段を登る。

 階段の真ん中あたりまで来ると、僚がちらっと後ろを確認し「ごめん明日香。びっくりさせて」と、やっと開放してくれた。

 ホームに着いた明日香は、僚に一連の行動の理由を聞く。


「さっきの子、大丈夫なの?」

「あぁ、なんていうかその・・・」

「?」

「前から付き合ってほしいって言われてて・・・何度も無理って断ったんだけど、なぜか今日は駅で待ちぶせされてて、ごめん明日香を使う形になって・・・」


(そういうことか)


 明日香はすぐに納得した。僚が意味もなくあんなことをするはずないと思っていたからだ。申し訳無さそうにしている僚を見て明日香は言う。


「別に友達だし、それはいいんだけどさ。ほんとにちゃんと断ったの? 曖昧にしてない?」

「してないよ。今は誰とも付き合う気はないって言ってるし・・・」


 僚は基本的に真面目でしっかり者で優しい。そんな僚が「今は」なんていい方をすると、期待し続ける女の子がいてもおかしくないなと思った。


「まぁ、頑張って?」

「なにをだよ」


 いつもの調子で話しながら、2人は事務所へと向かった。


 3階のダンスレッスン室を開けると、そこにはすでに深尋と竣亮がいた。


「明日香、僚、めずらしいね2人が一緒なんて」

「駅でたまたま会ったから」

「僚くん今日部活は?」

「今日は午前中だけだった。竣は?」

「僕のとこは今日は休み」


 レッスンの始まる前はこうしてみんなで近況報告をしながらお喋りをするのが日課となっている。

 ちなみに僚はサッカー部、竣亮は吹奏楽部、深尋は野球部のマネージャーをしている。みんなそれぞれ、中学校生活を充実させていた。


 ただし、こうしてGEMSTONEの練習生としてレッスンをしていることは、学校の他の友だちには言っていない。それを話していろいろ言われるのもめんどくさいし、この先自分たちがどうするのか、どうしたいのかまだ何も決まっていないからだ。

 いまこうしてレッスンを続けているのは、バラバラになったみんなと会える場所だからということ以外他ならない。


 レッスン開始時間ギリギリになって、バタバタと隼斗と誠がレッスン室に入ってくる。


「セーーフっ」

「ダン先生は!?」

「まだ来てないよ」


 深尋がペットボトルの水を飲みかけながら答える。

 ダン先生は時間に厳しいため、正当な理由のない遅刻にはとてもうるさかった。それは、6人のサポートをしている元木もそうだった。


「2人とも、今日は部活が終わっても余裕があるって言ってたじゃない」

「いやーそれがさ、バスケ部の連中が遊びに行こうってうるさくて、断るのに時間が掛かってさー」

「2人でどこ行くんだって、詰め寄られた」


 それを聞いた明日香は、思わず口を滑らせてしまった。


「ふーん、あんたたちも大変だったんだね」

「俺達・・・も?」


 明日香はしまったと思ったが、もう遅い。その様子を隼斗が見逃すわけがなかった。


「他に誰が大変だったのかな? 明日香チャン」

「さぁ? 知らない。その喋り方キモい」

「何を隠している! 白状しろっ」

「ただの言葉の綾にいちいちうるさい」


 つーんと明日香はそっぽを向く。そんな明日香に隼斗はまだ食い下がっている。一方僚は、なんとも言えない気持ちで2人を見ていた。


 6人にいろいろな変化はあったものの、この双子だけは4年経っても全く変わらなかった。

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