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【完結】buddy ~絆の物語~  作者: AYANO
番外編
109/112

誠の溺愛と美里の不安

恋の始まり③ の直後のお話。

誠と美里が付き合い始めて、1週間が経ったある日。

この日は朝から大雨で、いつもは校庭のベンチでお昼を食べているのだが、今日は屋上へと続く階段で食べることにした。

誠としては教室でも良かったのだが、美里が恥ずかしいと言って、人目を避けてここに来た。


そして誠は今日、美里にある事実を告白しようと思っていた。

「あのさ、美里。前に俺が知ってほしいことがあるって言ったの、覚えてる?」

2個目のパンを食べ終わった誠が、美里に聞いてくる。

「あ...うん。覚えてるよ」

実は美里も、あれから何を言われるんだろうと、気になってしょうがなかった。だから、突然話を切り出されて、内心ドキドキしていた。


「GEMSTONEって会社知ってる?」

誠に言われて美里は少し考える。

なんか、テレビで聞いたことがあるような.....それくらいの記憶だった。

「聞いたことあるなーって、くらいかな。その会社がどうしたの?」

「そのGEMSTONEっていう会社、芸能事務所なんだけど、俺さ、小学校5年生の時からそこに練習生として所属しているんだ」

「え......」

美里は思ってもいない告白に、ただ驚くばかりだった。でもそれは、まだほんの序章に過ぎない。


「美里と同じクラスの隼斗も、同じGEMSTONEの練習生なんだ」

「え......藤堂くんも?」

「ああ。ついでに言うと、この間会った明日香もそうだ。俺、仲のいい幼馴染がいるって言っただろ?その6人とも練習生として所属している」

そこまで言われても、美里はいまいち何のことだかわかっていない。しかし、次の誠の言葉で一番の衝撃を受ける。


「それでさ、俺たち6人、今年の冬にCDデビューすることになったんだ。それを美里には伝えておかないといけないと思って.....」


CDデビュー。そう言われて、美里の頭は混乱する。

(え?まって、誰が?誠くんが?藤堂くんも?)

美里の頭は理解が追い付いていないのに、誠は次々と新しい情報を出してくる。

「それで、隼斗と明日香以外のメンバーも紹介したいし、今度時間作ってくれないか?みんなも美里に会いたいって、言ってたから.....」

そこまで言われて、美里は誠に待ったをかける。

「ちょ、ちょっと待って、誠くんっ。わたし、いま絶賛混乱中で、少し整理してもいい?」

美里にそう言われて、誠は焦りすぎたかなと反省する。


「え....と、誠くんは幼馴染のみんなと、芸能事務所に所属していて、今年の冬にCDデビューする。その幼馴染の中には、誠くん以外には藤堂くんと、藤堂くんのお姉さんと、あと3人いるっていうこと?」

「うん、そう」

美里は誠があまりにも簡単に肯定するので、冗談なのか、本気なのかわからなかったが、誠は冗談を言うタイプには見えなかったので、本気なんだろうと思った。


「動画もあるけど、見てみる?」

そう言われては見ないわけにはいかない。美里はすぐに、「見たいっ!」と即答した。

そうして見せられた動画は、後ろがガラス張りになっている部屋で、誠の言うとおり、誠以外にも藤堂姉弟の姿と、他にも男の子が2人、女の子が1人いた。そして、曲が鳴りだすと、一斉に同じ動作で振り付けが始まり、それを見て美里は素直に「かっこいい.....」と、思った。


誠ももちろんそうだが、クラスメイトの隼斗も、普段学校では見せない顔で踊っており、美里は一瞬ドキッとする。

この間紹介された明日香も、男の子たちに負けないくらい力強いダンスで、とてもきれいでかっこよかった。


全て見終わった後、美里は誠が言ったことが本当であることを実感すると同時に、自分が誠の彼女で本当にいいのかと不安になった。

「誠くん、動画ありがとう......」

「あ、うん。それでさ、美里......」

何か言おうとしている誠の言葉を遮って、美里は誠に言う。

「あのさ誠くん。本当にわたしと付き合っていいの?」

「え......どういうこと......?」

誠は嫌な予感がしながらも、美里に聞き返す。


「だ...って、誠くんはこれから芸能界にデビューして、華やかな世界に行くんだよ?いま動画で見せてもらった人たちも、みんなかっこよくて、かわいくて......それなのに、わたしがいていいの.....?」

美里がそう言って誠の顔を見ると、誠の顔は怒っているように見えた。

そして、誠が静かに言う。


「美里は、全然俺の気持ちをわかってない。俺は美里の頑張り屋なところとか、出来ないのに一生懸命なところが可愛くて、好きだって言ったのに.....他の誰でもなく、美里がいいって言ったのに、なんでわかってくれないんだ?それとも、俺がデビューするのをやめるって言ったら、これからも付き合ってくれるのか?」

そこで美里は気づいた。自分の一言のせいで、誠を傷つけたと。

デビューしないでなんて思ってないのに、それを誠に言わせてしまったこと。


「あ...のっ、誠くん....ごめんなさ....」

「謝るな。謝るのはいいから、これからはもっと俺のことを信じろ。俺の気持ちが本物だってわかるように、もっと努力する。だからあんなこと2度と言うな」

誠の真剣な思いに、美里もきちんと向き合おうと思った。

「美里、俺、もう隠すのやめる。じゃないと美里はいつまで経っても、変わらないだろうから」

その言葉通り、誠は美里との交際を隠すのをやめた。


その日の放課後、隣のクラスに行った誠は、隼斗ではなく美里を呼ぶ。

「美里、帰るぞ」

「え、あ、あのっ、誠くん.....」

「おい誠。俺は無視か?」

「悪い隼斗。火曜日と木曜日以外は美里と帰るから」

そう言って誠は美里の手を引っ張って、教室を出ていく。

そのあと隼斗は、誠と美里のことについて、クラスメイトから質問攻めにあう。今回の一番の被害者は、隼斗かもしれない。


その後も誠は、一緒に帰るだけでなく、教室で堂々とお昼を一緒に食べたり、休み時間ごとに会いに行った。

そうしてこの2人は、学校の有名カップルになっていく。

隼斗は、ただ、ただ、この2人が羨ましかった。

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