エピローグ
残暑がまだまだ色濃く残る9月下旬。
6人は何年振りかに、風見川の河川敷にやってきた。
時刻は平日の13時をまわった頃。河川敷で遊ぶ子供たちはまだおらず、6人は貸し切り状態の河川敷に、久しぶりにテンションが上がっていた。
「うわぁ!なんにも変わらないなここは!」
「あれ?こんなに狭かったっけ?もっと広かったような.....」
「俺らがデカくなったんだよ」
「ねーねーせっかくだから、下りてみようよー」
「あそこにボールが落ちてるよ」
「久しぶりに勝負するか?」
6人はまるで20年前に戻ったように、河川敷へと続く階段を駆け下りる。
風見川の川幅は変わっていないはずなのに、どうしてもあの頃よりも狭くなったように感じる。
右手に見える大鳥橋も、もっと長いと思ったが、今見るととても短い。
「なんだろう.....懐かしい場所なのに、違うところのように感じる」
「あの頃とは見る視線も変わっているしな。思い出の中の河川敷は、多少美化されたり、大きく見せたりするのかもな」
そんなことを話しながら、6人は大鳥橋の下までやってきた。
「ここは覚えてるよー。みんなでシャーベット食べたところ!」
「誠の結婚式で写真を出されるまでは、忘れてたんだけどな」
「元木さん、よくあんなの残してたよね」
「あの写真以外にもいろいろあったけど、あれが一番良かったんだよ」
「誠、あれ以外にも見せてもらったの⁉」
「ああ。まだ持ってるはずだから、今度見せてもらえば?」
「それはそれで、コワイ......」
「パンドラの箱は開けないに越したことはないよ」
誠以外の5人は、パンドラの箱を開けずに、そっとすることにした。
元木が仕事の電話を終えて土手に上がると、河川敷に落ちていたゴムボールでドッジボールをしている6人が目に入った。
「あいつら......」
30歳になったのによくやるよと思いながらふと、6人をスカウトした時のことを思い出す。
あの時は、父親の命で「原石を探してこい」なんて、無茶なことを言われて途方に暮れていたけど、ここであの6人を見つけたのは奇跡のようなものだ。
デビューしてからずっと走り続けてきたが、ここからあの6人の姿を見ると、まだまだ、磨かれていない部分があるんじゃないかと思わされる。
それくらい、いま見てもあの6人は輝いていた。
「うわーっ!竣!まーたどこ投げてんだよー!」
「ごめーん!僚くんっ」
僚は一生懸命走ってボールを返す。
「ヤバイっ、体力が続かないっ」
「おら、へばってるヒマねえぞ隼斗っ」
「うわぁ!タンマッ!」
「隼斗、長年の恨みよっ」
「なんだよ明日香っ!恨みって!」
「隼斗わたしもー!」
「はぁ⁉なんだよお前らっ!ズルいぞっ」
気が付けばドッジボールは、5対1の構図で隼斗1人を狙っていた。
それでも6人は楽しそうに遊んでいる。
まるで5年生に戻ったような感覚だ。
その様子を土手の上から見ていた元木は、ひとり思う。
「原石は磨けば磨くほど光るんだ。あいつらはもっと光るぞ」
元木の目には、キラキラ光っている6人が、これからもより一層光る未来しか見えていない。
それはダイヤモンド以上の輝きを放つ、この世に1つしかないbuddyという名の宝石だ。
~完~
※あとがき※
ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。
このあとは番外編を投稿しますので、そちらをお楽しみください。
番外編の最初の5話は、他サイトの特典で書いたものになっています。過去の話になっていますので、混乱しないようご注意ください。
さて、6人の20年の物語ということで、もの凄い長編になりましたが、最後まで書けて、とりあえずホッとしております。
次回作の構想も立ててはいるんですが、少しお休みをしてから出していきたいと思っております。
ちなみに、現世の恋愛ものです。登場人物は、buddyほど多くないと思います......あと、こんなに長くならないと思います(;^_^A
次回作もよろしくお願いいたします。
AYANO




