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見切りをつけたのは、私

いつも誤字報告をありがとうございます。

大変助かっています(*^^*)


11/27 誤字(スペースの)報告ありがとうございます。

 大変助かりました(*^^*)

「あんな女、愛せるとは思えないよ。メロディと比べたらデブ過ぎる!」


「お前酷いな。そんな態度だと、婚約解消されるぞ」


「大丈夫だ。その辺はちゃんとしているから、気づかれてない」


「可哀想な婚約者」


「「「はははっ」」」




 聞いちゃった。

 これが婚約者の本音なのね。

 すっかり騙されていたわ。



 今私をデブだと笑っていた男は、私の婚約者のハーディー。アルベローニ侯爵家の次男で、同じ16歳だ。


 そして私はマイナリー。

 ロゼクローズ伯爵家の長女で、他に義理の妹が一人いる。



 アルベローニ侯爵家は子爵位と男爵位も保有しているが、伯爵位が継げるならと、ハーディーが家に婿入りする話が進んでいた。


 侯爵家は息子の爵位の為に、(うち)は侯爵家の事業に絡む為にと互いに利がある政略だった。




◇◇◇

 マイナリーの父サンダーは商才がなく、老舗の装飾店は彼女が幼き時より赤字経営であった。


 浮気性で甲斐性のない父に呆れ、母アメルダは実家の子爵家に戻った。


 体面を保つ為か離縁はしていないので、後妻を狙う女性が出てこないことだけが救いだ。




 ただし子は別。


 事実異母妹のメロディは、父の愛人シャディの子だ。


 父似のオレンジ髪と金眼の私とは違い、桃色の髪と黄緑の眼をした柔らかい印象の美しい彼女。 


 ただ残念なことに、父に一ミリも似ていない。

 母似だとしても限度があるだろうに。



 それでも父は、メロディを実子と信じていた。


 彼女の母同様、美しい彼女を。




「お母さんは流行り病で亡くなりました。葬儀は亡くなった人達合同で、既に終えています。……私一人では生きていけません。お父さん助けて!」




 涙ながらも悲痛に訴える彼女に、父は抗えない。


 家令ネルアンが、せめて調査をしてからと言うのも振り切り、養子として迎えてしまった。



「行くところがない子に、何て酷い。可哀想だと思わないのかお前達は!」


「ですが、サンダー様」


「ええい、煩い。これ以上言うならクビにするぞ!」



 お前達の中には、私、マイナリーも含まれているようだ。


 このことで使用人は、全員呆れ果てた。





 この国は福祉が充実しているし、孤児院もわりとちゃんとしている。そこを出た後の就職率も悪くない。


 教育がきちんとされているから、路頭に迷うこともないのだ。



 まずはそこに入り、血液検査等で調べてからでも遅くない筈なのだが、父は強引に養子にした。


 家長に逆らう者もおらず、私と同じ歳のメロディは伯爵家で暮らすことになった。



「お父さん、大好き。ありがとう、チュッ」


「ああ、可愛いね。私のメロディは」


「うふふっ」


「はははっ」


 私にも母にも向けなかったデレデレの笑顔を、この時は悲しく思ったものだ。今思えば嫉妬したのだと思う。


 この件があった6歳当時、既に母は生家の子爵家に戻り、時々私は面会に行っていた。


「ごめんなさいね、マイナリー。でも貴女が生き残る為にはこれが最善なのよ。至らぬ母を許してね」


 私を抱きしめて、時々泣き崩れる母。



「大丈夫ですよ、お母様。邸では不自由なく過ごしています。お母様も元気でいてくださいませ」


「ああ、私にもっと力があれば………」


 明るく返答すれば、余計に泣かれてしまった記憶が甦る。




◇◇◇

 (マイナリー)は伯爵家で迫害等されることなく、厳しい家庭教師ガヴァネスが付ききりで学びを与えてくれた。


 私はその指導の下、淑女として母の娘として相応しく成長していく。


 それほど体型を重視していなかったのは、不徳のいたすところだが、父が勝手に決めた婚約者には食指が動かなかったことは致し方ない。


 それにそれほど太ってもいないと思う。

 寸胴で括くびれがないだけで。



 だけど婚約者のハーディーは、9歳の顔合わせの時から、(マイナリー)よりメロディを見ていた。


 そしてプレゼントだって、メロディの方が素敵な物が多かったのだ。


 例えば私には花束、メロディには翡翠のブローチ。

 私にはケーキセット、メロディにはダイヤのピアス。


 ある誕生日には私には経営本のセット、メロディにはハーディーの瞳色の、ラピスラズリのペンダントを。


 このことは家の経済状況が良くないので、お祝い事は内輪だけで行っていた為、多くの人に知られることはなかった。


 ただ使用人達はあからさまな違いに渋い顔をしたし、特に侍女のアイリスは、今にもハーディーを殴り出しそうにしていた。


 けれど私は彼女を止めた。


「怒らないで良いのよ、アイリス。私は大丈夫ですから」


「ですが、あまりにも………」


「良いの。ね、悲しい顔をしないで」


「………はい、お嬢様」



 私は親身になってくれるアイリスを姉のように慕っていた。だから悲しくなんてなかった。



「お姉様、見てください。ラピスラズリがキラキラ光っています。とっても綺麗」


 無邪気なのかわざとなのか、見せつけるようにマイナリーに近づくメロディ。

 プレゼントされ、その場で装着していた。


「ええ、とても素敵なプレゼントね。良かったわね、メロディ」


「はい、幸せですわ。将来は義理のお兄様になる方が、こんなに優しくて嬉しいです」


「そうね」


「はい」



 誰もが見惚れるような微笑みに、マイナリーも父サンダーも嬉しそうに頷いた。


 ただハーディーだけは「兄か…」と、独り言のように呟き、悲しげにメロディを見つめていた。



 美しい彼女に心を寄せる者は数多くいたが、似ていない庶子と言うことがネック(障害)で、縁談の数は多くなかった。

 けれど強く熱望する者も(わず)かにいた。




◇◇◇

 マイナリーは学園でも良く学び、少なからず友人もいる。


 その中に公爵家の三男、アルバートも交じっていた。


 彼は何故か、最初からマイナリーのことを知っていたようで、「妹さんとは仲が良いの?」と聞いてきた。


 幼い時は嫉妬心もあったが、今は何とも思っていない。私の周りには、母や使用人等の味方がいるからそれで良い。

 大事な人を守れるなら、多少のことは構わないと思える頃だった。



「仲は良くも悪くもないわ。そんな姉妹もいるでしょう?」


「確かに。君が虐げられていないなら、良いんだ」



 どうやら心配してくれたみたい。

 世間的には、いろいろな噂があるのだろう。



 友人達は男女含め家を継ぐ者達だったので、それに応じた分野を順位を競いながら身につけていく。

 爵位によっては幼い時から学んでも学びきれない為、自宅でも学びは欠かさず続く。


 それこそ爪先や髪のケア、ダイエット等にかける時間はないに等しい。成人前に修了することが、目標になる為だ。


 アルバートは三男だが、親が爵位を何個も保有する公爵家だ。学びに力を注ぐのは不思議ではない。


 マイナリー始め交流はあれど、みんな婚約者持ちなので特別な感情は持っていない。

 否、持たないように努めている。


 金髪碧眼の美形であることは誰もが認めるが、後継者組は仲間としか見ないし、他の生徒がこちらの話に交ざるような邪魔はしなかった。




◇◇◇

 メロディは勉強なんかそこそこに、見目の良い令息に声をかけていた。

 自分は伯爵家を継げないと分かっていたから。

 嫁入り先を探していたのだ。


(お父様は優しいけれど伯爵家を継ぐのはお姉様だし、いつまでもお家にいられないもの。なら、ハーディー様みたいに、素敵な人の奥さんになりたいわ)


 そう思っての行動だった。


 時には声をかけられることもあったメロディだが、断ることが多かった。


 彼女は美形好きなので、爵位が高くても美形でないと受け付けなかったから。


「ごめんなさい、私気になる人がいるの」


 考えることもなく固辞する彼女に令息達は傷つくが、そんな配慮が出来ないのだ。

 美しい顔で困ったような顔さえ、多くを魅了していた。


 だいたい爵位が上がるに連れ、幼き頃より婚約者は決まる。

 その(ほとん)どに政略が絡むのは、貴族であれば仕方のないことだ。


 もしここで彼女が顔を重視せずに誰かを選んでいれば、苦労せずに済んだかもしれない。




◇◇◇

「お姉様、これ素敵ですね。私の方が似合いますわ」


 養子になったメロディは、事あるごとにマイナリーの部屋へ押し掛けた。

 そしてドレスやアクセサリーを物色していく。


 マイナリーは、決してあげるとは言わない。

 全ては母からのプレゼントだから、大切な物ばかりだ。


「それは大事な物なの。今はお母様の物で、私は借りているだけだから」


 伯爵家は領地収入はそこそこあるが、装飾店の経営が芳しくない。

 赤字のこともあるのに、サンダーは女遊びに大金を散財していた。


 マイナリーの母アメルダがここにいた時から、いくら注意してもそれは改善されなかった。

 それどころか、夫人や娘の維持費まで使い込む始末だ。


 伯爵家の夫人や子供の維持費は、収入から毎年試算されるが、サンダーはそれを無視し自らの為に使用した。


 碌な維持費もなく、成長する娘にドレスも作れないことで、アメルダは別居し子爵家に戻った。


 本当はマイナリーも連れていきたいと言ったが、後継者を渡せないと断られたのだ。



 既に結婚した時にプレゼントされた装飾品や、結婚指輪もサンダーに売られてしまった。

 借金もあるのに、女性に良い顔をして貢ぎまくる男だから。


 アメルダの両親は持参金を返却してもらい、離縁するようサンダーに迫った。

 だがサンダーにはその資金は捻出できない。

 領地を売れば、将来マイナリーが継ぐ時に苦労すると言われれば、無理に回収できない。


 そこで離縁しない代わりに、弁護士から条件を提示した。


・今後、子爵家とアメルダは伯爵家の借金等は肩代わりしない。

 もし伯爵夫人だからと請求がアメルダに来ても、この念書を見せ対応しなくても良いことにできる。


・娘に必要な物、人材を伯爵家に送り利用させることができること。


・娘の物、者を奪わないこと。


・娘の物を奪った時は、その時点から返却するまで貸与金が発生する。勿論現物は返却が必須で、傷があれば新品か修繕をして戻すこと。


・娘が堪えられない環境だと、第三者が判断すれば親権はアメルダに移ること。


 以上が守れれば、別居状態で経過を見ると条件が出された。



「悪質な場合、即離縁が適応されます。

 その書類もお書きください、記名と印鑑もお願いします」


 アメルダの持参金は領地収入1年分に近く、今のサンダーには支払いできない。

 だが土地を売れば領地収入も途絶え、担保にすることもできなくなり詰んでしまう。


 ならばとサンダーは、この契約をしてしまった。



 公証人役場で手続きを行い、原本を2部作成し役場に保管される。

 両者複製を持ち、何かあればそれを使用することになった。



 そしてそれを知らないメロディは、マイナリーの物に手を出した。


「お姉様、これ貸してください。大丈夫ですわ、すぐ返しますから」


「それならそのブローチの写真を撮るわね。今日の日付と時間、貴女の名前をこの紙に記入して。そうしたら貸してあげるわ」


 メロディは頬を膨らませて不満そうにするが、それでも指示には応じる。


「何だか失礼ですね。ちゃんと返しますわ。でも、きっと私の方が似合いますわ」


 メロディは、へやを企んだような笑顔をマイナリーに見せた。

 きっと碌でもないことを考えていると、マイナリーも使用人にも分かった。


 そのくらいメロディの底は浅かったのだ。




◇◇◇

「まあ、マイナリー様。今回も成績が3位なんて、凄いですわ」


「ありがとう、ブルガリア様。たまたまでございますわ」


「1位は、アルバート様ね。さすが公爵家の方ですわね。剣術も優れていますし、経営学コースでもトップなんて」


「本当にな。あそこは皆優秀で、誰が後継者になってもおかしくないぞ」


「優秀な一族ですわね」


「素晴らしいわ」


 なんて声の中、面白くないのがマイナリーの婚約者ハーディー。彼だとて侯爵家の次男で高位貴族だ。


 でも彼の成績は芳しくない。

 30名いる経営学の上位10名が貼り出される成績表に、載ることがなかった。


 だが、別に馬鹿にされている訳ではない。

 上位に入れないことで、劣等感があっただけ。


 だから時々、成績が優れない者達で愚痴を言い合っていた。


 今日もただの愚痴の筈だった。


「あーあ、どうせならメロディが婚約者なら良かったのに。可愛いんだ、あの子」


「確かに、可愛いよね。でもあの子は庶子だったろ? 

 今は養子になったけど、血縁かどうか怪しいみたいだぞ」


「まさか、噂だろ? 養子にする前に調べる筈だ」


「それもそうか」


「普通はそうだ」


「血縁なくて引き取ったら、愛人みたいじゃないか。

 彼女の母親はすごい美人だったって、親父に聞いたことがある」


「娘として育ててるのに?」


「あくまでも妄想さ。そんな演劇もあるじゃん」


「自分の花嫁を育てる的なやつ」


「おえー、家族みたいに育てて結婚なんて。絶対無理」


「妄想なのに。お前の方がすごい妄想」


「うっせ、もう止めろ」



 なんて話があったのを、父に話すハーディー。

 そんな父が彼にアドバイスする。



「お前の婚約者はマイナリーだ。だからあまり関係ないだろうが、絶対メロディには深入りするなよ。

 サンダーはメロディに対してきちんと教育していない気がする。メロディはマイナリーより3か月だけ年下だが、あまりにお粗末な仕上がりだ。

 あれじゃあ、下位貴族に嫁ぐのも難しい。

 俺の予想だと、金持ちの商人にでも嫁がせるんじゃないかと思うぞ。

 サンダーが情けで子を引き取ると思えない。

 言い方は悪いが、高く売ろうとしているんじゃないかな? 

 自分が嫁を貰った時のように。

 一応俺は、忠告したからな」



 そう言われると、しっくり来た。

 ああ、そうか。


 メロディに教養を付ければ、あの美しさなら引く手数多だったろう。


 だが肝心の学習を身に付けられず、価値はそこまで上がらなかった。

 それならば、金持ちに嫁にやることは想像に難くない。

 ロゼクローズ伯爵家は、かなりの借金があるらしいから。



 俺が伯爵家に婿に入れば、侯爵家から借金を清算することを条件に、当主を交代させてしまう計画だ。


 その後にサンダーが、メロディを嫁に出すかもしれない。

 きっとメロディに選択権はなく、断ることもできなくなるだろう。


「不幸にはしたくないな」


 思わず呟く、ハーディーだった。




◇◇◇

「これ素敵でしょう? お父様に買って貰ったのよ」


 礼儀作法が身に付いていないメロディは、高位貴族には相手にされていなかった。

 その為伯爵家に逆らえない、下位貴族の令嬢を標的に自慢をしていた。


「素敵ですね、翡翠はメロディ様の瞳の色ですね」

「薄ピンクと白いドレスに映えますわ」


「愛されているのですね」

「お姉様もセンスが良いですわ。きっと血筋ですね」


「ありがとうございます。嬉しいです」



 それはマイナリーの部屋から持ち出したアクセサリーだった。

 借り物なのに父からだと嘘をついてまで周りにアピールすれば、マイナリーが使用した時にメロディの物を借りたと思うだろう。


 そうでなくとも、自分の方が似合っていたと思わせたいのだ。


 くだらない見栄だった。


 だけどメロディには何もなかったから、マイナリーに目を向けて欲しかったのだ。


 結局それを見たマイナリーは何も言わない。


“ 妹さんの素敵ね”と言われても、“ 本当、似合うわ”と返すだけだった。




 何をやっても相手にされないメロディは、寂しさに押し潰されそうだった。

 最初こそちやほやしてくれた父サンダーは、今はもう女性宅に入り浸ったり酒を呑んだりで出歩き、たまにしか戻ってこない。


 姉はいつも勉強していて構ってくれない。

 使用人も姉の味方。


 ハーディーは優しいが、姉の婚約者である。



 自分も婚約者を作ろうとしても、うまくいかない。

 美形の男子は婚約者がいる。


 自分で出来ることはやり尽くしていた。


「せめてもう少し勉強ができたらと思うけれど、お姉様のように先生もいないし、学園の勉強は難し過ぎるよ」


 ブローチを借りてニヤリとしたことがせいぜいで、他に悪事など思いつかないメロディだった。




◇◇◇

 メロディは学園から帰る途中で、孤児院に目を向けた。父がいなければ、ここに自分も入ったのだと思って。


「次、お前鬼ね」


「よーし、10数えるぞ」


「逃げろー」


「「「「わー」」」」


 楽しそうな声が聞こえる。


 着ている物は贅沢ではないが、綺麗に洗濯されている。子供達の声も明るい。


 気になり中へ入ると、勉強をしている子もいた。

 そしてつい、シスターに聞いてしまう。


「私の勉強も見て貰えますか?」と。

 シスターは笑顔で頷き、了承してくれた。


「じゃあそこに座って」

「はい! ありがとうございます」


 メロディは子供に交じり、教えを受けた。


 子供達に見られ恥ずかしかったけれど、勉強しているうちに緊張も解れた。

 理解していくうちに、楽しくなっていった。


 気がつけば、学園を終えるといつもここに来ていた。

 子供達ともため口で話し、一緒に掃除をすることもあった。


 本当は此処にいたいけれど、怒られるのを恐れて伯爵家に戻った。

 夕食に間に合えば、何も言われない。


 否、お父様がいなければ、誰も小言など言わないだろう。お姉様だって、きっと…………。




 その夜メロディは、ブローチをマイナリーに返却した。


「お姉様、ごめんなさい。私はブローチを貰ったと言いふらしました。次の夜会があれば、嘘だったと訂正します。本当にごめんなさい」


 心から謝罪するメロディに、マイナリー達は驚いて目を瞬かせた。

 こんなことをするとは思っていなかったから。


「……訂正はしなくて良いわ。これは貴女にあげる」

「そんな…………駄目です。嘘つきには似合わないわ」


「謝ってくれたのが嬉しいのよ。だから貰ってちょうだい」

「…………ありがとうございます、お姉様」



 涙がポロポロと落ちるメロディの背を優しく撫でるマイナリーは、彼女に告げた。


「この家は、お父様の散財で倒れそうなのよ。

 私が懸命に学んでいるのは、卒業後に爵位を継承して立て直す為なの。

 貴女に構うことができなくて、申し訳ないと思ってはいたの。たった一人の妹なのにね。

 …………でもそれほど余裕もなくて。

 私のお母様は別居しているけど、子爵家の商売を手伝った利益で、父の借金を買い取っているわ。

 勿論別人名義でね。

 今は商会を二つ運営する程力を持った。

 ここまで、10年かかったわ。

 私はお母様の努力を無にしたくないの。

 お母様が守ってきた領民を、今度は私が守りたいのよ」


 言ってからメロディを見ると、何故だか眩しそうに(マイナリー)を見つめている。




「…………すごいです、お姉様。私なんて、ただいじけていただけなのに。みんなのことを考えて。

やっぱり私とは違うな」


「…………違うの、そんなんじゃないのよ。私はお父様に可愛がられる貴女に嫉妬して、ハーディーに贔屓されている貴女に悔しがっている心の狭い女なの。

 もう少しちゃんとしていれば、手を差しのべることもできたのに。逃げていたのよ。

…………ごめんなさい」


 互いに気持ちを吐露し、抱き合う二人は本当の姉妹になった。


 使用人達も、大人に近づいたマイナリーの意見を受け入れ、メロディに援助していくことになったのだ。




◇◇◇

 サンダーは、メロディに教育させるという概念がなかった。

 そもそもマイナリーに、家庭教師(ガヴァネス)がいることにも気がついていない(手配はアメルダがしていたので、たぶん微塵も知らないはずだ)。


 この家に彼女が来てから数年は気にかけていたが、それも長くは続かなかった。

 快楽を求めるサンダーは、(ほとん)ど家に帰らず遊び回っていたから。



 ここに来て10年近くを、害されることもないが味方のいない場所でメロディは生きてきた。


 市井よりは立派な建物で食事も着るものも上等だったが、貴族になった自分が下町の友人や知人に会いに行くこともできず、いつも孤独だった。



 幼い時は勉強を苦しそうにする姉を大変だと思っていたが、年齢が上がるに連れ学ぶことが当たり前のことなのだと気づいた。

 しかし先生(家庭教師)は、姉の母が個人的に派遣していることを知れば、愛人の子である自分には何も言えなかったのだ。


 (サンダー)には金がなく、借金をして遊んでいることを知ったのもこの頃だ。

 そんな(サンダー)へ、先生(家庭教師)に学びたい等とは言い出せなかった。



 マイナリーとメロディが和解した後も、メロディはシスターから勉強を学ぶことにした。

 教会に行くことが最早習慣になったと言うメロディは、本当に嬉しそうだった。


 アメルダはメロディに家庭教師(ガヴァネス)が付いていないことを知り驚いていた。

 私達(アメルダとマイナリー)には見せない笑顔で接しているから、可愛がっていると思っていたのに。

 まさかの放置とは…………。


 使用人はアメルダとマイナリーの味方だが、余計なことは言わない。

 なのでメロディの置かれている状況に、母子が気づくことはなかったのだ(自分のことで精一杯だったせいで)。


「もっと把握しておくべきだったわ。可哀想なことをしてしまった」


 アメルダは改めてメロディの状況を知り、後悔していたのだ。




◇◇◇

 そんなメロディには、したいことがあった。


 その願いは小さいもので、厨房を借りればすぐに叶ってしまうことだ。


 彼女の願いは、自分の出来ることで感謝を伝えることだったのだ。



◇◇◇

 今日は休日。


 メロディは早くから起きて、厨房でたくさんの小麦粉をこねていた。


 クッキーを作るためだ。



 失敗作は使用人に配ったが、軒並み好評だった。

 元々市井で暮らしていたので、料理は得意なのだ。


 マイナリーの嫌いな物や食べられない物を調べ、それ以外の物を混ぜていろんな種類を作った。


 オレンジピールや干しりんご、レーズンも入れて。


 ただアーモンドやナッツ、ハチミツはアレルギーの人も多いので止めた。


 念のために、プレーンクッキーをたくさん作った。


 本当に果物が大丈夫な人だけに、干し果物の入った物を渡せるように聞いて回った。



 家令と共に執務を熟すマイナリーに、干し果物とプレーンクッキーを渡す。ついでに家令にも渡す。


「良かったら食べてください」

「ありがとう、メロディ。これを楽しみに一頑張りするわ。3時が楽しみね」


「私にまで。ありがとうございます、メロディ様」

「そんなにうまくないですから」


 正面からお礼されると、照れて戸惑うメロディ。

 それを見て微笑むマイナリー達。



 そして彼女は外出する。

 次に渡すのは孤児院の人達にだ。


「こんにちは。いつもお世話になっているので、今日はクッキーを焼いてきました。アレルギーがない子と食べてください」


「まあ、メロディちゃん、いらっしゃい。お料理上手なのね。みんなアレルギーはないから、分けて頂くわね」


「お前、料理なんてできんのかよ」

「美味しいよ、食べてみて。ほい」


 ガキ大将の口に入れると、モグモグして「ウマイ!」と声をあげた。


「ずるい、マークだけ」

「あらあら、泣いちゃ駄目よ。じゃあ、今日のおやつは今頂きましょうか。みんな手を洗ってきてね」


「「「「「はーい!!!」」」」」



「美味しい、お姉ちゃん。ありがとうね」

「おう、うめえ。いつも狂暴なのに、女らしいところもあるんだな。これなら嫁にしても良いぞ」


「何言ってるの。大好きな癖に」

「ちげえよ、普通だもん」


「ふふーん、そうなの? じゃあ僕が立候補する!」

「馬鹿っ、ダメだ」


「「「何でー!」」」


「うるせっ、バカチビ達め」

「「「はははっ」」」


 賑やかな孤児院の隣は、小さな教会だ。


 だからいつも、シスターも神父も行き来して寂しくないようにしているらしい。


 それでも親がいないのは寂しいしやるせない。

 それを乗り越えて、彼らは巣だっていくのだ。


 メロディはその点、少しだけ恵まれていた。

 母と暮らせたし、父の顔も知っている。

 関わりは少ないが、姉もいるのだから。


 親の顔を知らず、自分が何者か分からない不安だけはなかった。

 恵まれている孤児院だって、孤児がいるのは変わりないのだ。

 親と死別や捨てられて来た者だって、たくさんいる。


 メロディもここに来る予定だった。

 けれど今は、恵まれた環境にあることが自覚できた。


(自分の殻に籠らないで、もっと早く周囲を見ることが出来ていればなぁ)



 メロディは少しずつ変われた。

 きっかけは、自分を受け入れてくれたシスターだった。


 肉親でないのは残念だけれど、今は姉の気持ちも少し理解できた。


 それに、優しいと思っていた父のことも。

 ついでに優しいと思っていたハーディーのことも。


 何も見えていなかった。

 人を見る目がなかった。

 上辺だけでは真実は解らない。


 きちんといろいろなことを調べる必要があるのだと、この年で初めて学んだ。


 そしてそれは、長い人生でとても大切なことだ。


 大人になる前に知れて良かったと、メロディは目を瞑り微笑んだ。



 クッキーを食べた後は、またシスターに勉強を見て貰い伯爵家に帰っていく。

 彼女には、メイドが一人付くことになった。

 令嬢の一人歩きは危険だからだ。


「お姉ちゃん、ありがとう」

「また明日ね」


「いつでもおやつ待ってるぜ」

「おやつはお休みの日にね」


「「「「「やったー!!!」」」」」


 みんな笑顔で送り出してくれた。

 メロディは嬉しくて、泣きたくなるのを堪えた。




◇◇◇

 メロディはシスターに基礎教育を学び、学園の授業に追いつけるようになった。

 そして伯爵家の侍女に礼儀作法を学び、淑女としての振る舞いを身に付けた。


 だからもう、美形を追いかけることもなくなった。


 時々学園でもマイナリーと昼食を食べ、時々孤児院にも共に訪問している。


 マイナリーが 「いつも妹がお世話になっています」と、シスターにお礼を伝え、少ないですがと寄付を施した。


「なにぶん、貧乏伯爵家なので、期待しないでくださいね」と、付け加えて。


 シスターは微笑んで 「ありがたく使わせていただいます」と、心から感謝してくれた。


 マイナリーもメロディも

「こちらこそ、いつも感謝しています」と伝えた。



 姉妹の絆が揺らぐことはなく、日々が過ぎて行った。




◇◇◇

 メロディは普通クラスだったが、成績が5位になったことに始まり、その後も10位以内をキープするようになった。


 そうすると人の目も変わるようで、庶子と馬鹿にしていた者も彼女を意識しだした。

 時々サンダーに、婚約打診をする親も現れ出したのは予想外だった。


 卒業までにはまだ1年もあると、即答をさけて一番の金持ちを待ち、嫁がせようとするのはサンダーらしい。

 そのお陰でマイナリーとアメルダが手を回し、悪い噂(女癖とかギャンブルとか)の令息達に、断りを入れることができた。


「既にメロディには婚約者ができました」と伝えて。


 サンダーではなく、商会を切り盛りする夫人が出てきては強く出られない。

 それにボディーガードにごつい男性が二人もついてきているから、物理で脅すのも無理だったろう。


「マイナリーの大事な妹に、変な男は付けられないからね」と言って。


 それでも愛人の娘には(わだかま)りもあったろうに、娘の言葉を信じて協力したのだ。


 結局はメロディの頼みで、悪い噂のない令息の打診にも全員断りを入れたアメルダ。


 メロディは卒業後、シスターとして働きたいと言うからだ。


 サンダーに知られると面倒なので、内緒にしておいた一同。




◇◇◇

「どう言うことだ。何故、全員の婚約打診を断っているんだ。誰だこんなことをしたのは?」


 マイナリーとメロディが卒業を迎え、一番結納金が高い男爵令息に嫁がせようとしたが、既に断られたので違う者と婚約を結んだと聞かされ、愕然としたサンダー。


「卒業まで待つと言ったのに、何でだ?」


 その後全ての家を回るも、そちらから断ったのに失礼だと罵倒される始末。


 呆然として家に帰れば、別居中の妻アメルダが現れた。


「貴方の散財で、全ての物が抵当に入りました。

 娘達もこの環境では暮らせないと、私に保護を求めました。従って私とは離縁、マイナリーの婚約も解消になります。

 これまで侯爵家から受けた資金援助は、貴方の責任なのでご自分でお返しください。

 ここに居られるのは7日間だそうですから、資金調達なり愛人に(すが)るなりしてください。


 あ、そうそう。私の持参金の返却と、マイナリーのアクセサリーも持ち出したのでしょう? どんどん加算金つきますから、早くお返しくださいね。

 どうせ愛人のところでしょう? 

 公証人が関わっておりますから、違反すれば憲兵が動きますわよ。

 では、よろしくお願いしますね」



 アメルダは渾身の笑みで、カーテシーをした。


 既にマイナリーとメロディは、アメルダの自宅で保護されている。


 馬鹿な考えをおこして、娘を売りさばくのを防ぐ為に。

 ないと思いたいけれど、ゼロ%じゃないから用心したのだ。


「な、メロディは私の子だ。何処にやった。戻せ!」

「嫌ですわ、元旦那様。念書には娘と書いてあったでしょ? メロディも私の娘ですわ」


「そんなの屁理屈だ。愛人の娘なんて受け入れられないだろう?」

「いいえ、そんな。あんなに良い子は誰もが好きになりますわよ。残念でした」



 悔しがるサンダーに、心であかんべーをするアメルダ。

 伝えることは伝えたので、馬車に乗り込み護衛と共に去っていく。


 サンダーは、取り敢えず愛人宅に転がり込んだ。

 そしてアクセサリーのことを聞けば、売却したと言う。


「なんでそんなことを」

「私の勝手でしょ? 何よケチ臭い男ね」


「なんだと!」

「キャー、助けて」


 頬を叩こうとして愛人があげた悲鳴で、わらわらと人が集まってきた。


「この人、暴力を振るおうとしたのよ。助けて!」

「確かに危ない顔してるな。憲兵に置いてこよう」


 サンダーは知らない男に殴られ、吹っ飛んだ。


「グワッ。痛い! いきなり何するんだ!」


「いやーん、素敵。ありがとうニッケル」

「いや、良いってこった」


 なんて恋が生まれそうな男女と、のされた男。


 一晩牢に入り、翌日釈放された。




◇◇◇

 ロゼクローズ伯爵家は、今までもアメルダが負債を返済していたので、借金はない状態である。

 ただ今までの借金は、サンダーに宛てて借用書を作ってある。無利息無期限である。


 因みに愛人が売却したアクセサリーも、アメルダが買い取り済みである。


「せっかくの娘へのプレゼントだもの。形だけでも残したいわ」


 そう呟くと、宝石店で綺麗に研磨して貰う為に走るのだ。


 公証人へは、アクセサリーの部分は削除して良いと伝える。

 どの道もうこれ以上は、払いようもないからだ。

 細やかな温情である。


 それ以外で、メロディの結納金を目当てにした借金は、範疇外である。




◇◇◇

 牢から出たサンダーは今、アメルダの商会の伝手(つて)で漁船に乗っている。

 周囲のアドバイスによる賜物である。


「追い詰められたら、何するか分からんぞ。なるべく離れた方が良い」と言われたからだ。


 事実、今までのへらんとしていたのに、愛人に暴行しそうになったり、攻撃性が見えた。


「じゃあ、お願い」と、サンダーを漁船に託したのだ。


 目が覚めたら海の上、豪華客船以外乗ったこと皆無のサンダーは、大きく揺れる船舶で嘔吐しまくった。


「なんだここは? お前ら何者だ?」


 威勢良く叫んだつもりでも、足元も揺れてガクガクしているし、気分は悪いしで普通の声になっていた。


 周囲を見渡せば、全員マッチョの筋肉男ばかり。

 現代とは違い安全装置なんてないし、落ちれば海の藻屑と化す。


 そこを教育する為に、海の穏やかな日に網の引きをやらせるが、なかなかへっぴり腰は直らない。

 本当なら落ちるの覚悟でやらせるのだが、アメルダの頼みとあっては裏切れない。

 普段から魚を高く買い取ってくれる、上客だからだ。


「ほら、借金返すんだろ。腰入れろ、落ちるぞ!」

「だって、怖い。怖いよ」


「大丈夫だ。俺も最初はお前みたいだった。1年頑張れば慣れるから、頑張れ」

「う、うん。やってみるよ」


 大きな網で魚を掬い、氷結の魔道具コンテナに入れる作業だ。


 荒海の波は時に船舶よりも高く上がり、入ってきた海水をバケツで必死に掻いて捨てるを繰り返す。


 風も水も全ての生き物を冷たく鋭く刺す極寒の海は、体を芯まで冷やす。


 凍えるような雨を浴びながら、揺れる甲板の上を転がりながらも必死に作業を続けるサンダー。


 蟹もマグロも鰹も一緒くたで、コンテナに一杯になれば陸にあがる。


「うわー、ぎゃー、落ちる!!!」

「落ちないから、踏ん張れ」


「ぎゃー、死ぬー!!!」

「死んだら、魚の餌だ。生きろー」


「うぎゃー、イジワルー!!!」


 サンダーは死なずに、生き延びている。


 漁船に乗る前はアメルダに殺意を抱いていたが、今は霧散していた。

 逆に船長から話を聞き、アメルダの恩義に泣いていた。済まないと言って。



 給料の一割は、毎回天引きされアメルダに渡る。

 思った以上に稼いでおり、10年頑張れば完済の勢いである。


「信じてたわ、サンダー」


 なんて呟きが、聞こえたり聞こえなかったりする昨今。



 あんなに苦労したのに(10年も)、まだこんなこと言っている母には姉妹で遠い目になった。


((うえーっ、駄目だなこの人。懲りてないの? 

あんな痛い目にあって、子供にもとばっちり受けたのに。目を離せないわ!))


 マイナリーとメロディが、目で誓いあったのは言うまでもない。



 マイナリーに 「あんな男と結婚してごめんなさい」と謝っていたアメルダだが、悪い感じとつり目のワイルド感に一目惚れだったそう。


 だけどマイナリーには 「苦労したくないなら良い人を選んでね」と言う。


 頭では理解しているのよね、きっと。




 マイナリーは悩む。

「私の遺伝子達、母の駄目な部分は控えてね」と。


 思えばハーディーにデブだと罵倒されても、仕方ないと諦めて結婚しそうだったマイナリー。

 もしかしたら一目惚れよりも、しょうがないと諦めてしまう傾向があるのかもしれない。


 妥協で付き合ってはいけないなと、心に刻む彼女と心配する母と妹。


 伯爵家は存続しているので、サンダーに 「ハーディーとの婚約を解消した」と言ったのは嘘だ。


 けれど陰でデブと罵ったり、婚約者のマイナリーよりも妹のメロディにプレゼントを豪華にしていたことに、女3人が怒り、その事実を突きつけ解消を勝ち取ったのだ。

 侯爵家から受けた援助金も、耳を揃えてアメルダが返した。


「屑の加減が違うのよね。サンダーなら、借金しても全員に同じランクの物を用意したわよ」



 いやいや、借金は駄目でしょ。

 他に女いるのもダメでしょ。


 まあね。父サンダーは格好良い部類には入る顔だ。

 因みに血液検査で、メロディは異母妹と判明した。


 母アメルダが言うには、耳と唇が似ていると言う。


「分かんないわ」

「同じく」


 ふふふっと笑う姉妹は、今日も楽しげだ。




◇◇◇

 ハーディーはその後、父親にこってり叱られて呆れられて、何とか男爵位を貰って田舎に引っ込んだ。

 婿になると思って勉強していなかったので、文官試験も落ちて王都にいられなくなったのだ。


 田舎行きは嫌みたいで、婚約者はなかなか見つからないようだ。



 公爵家の三男アルバートはマイナリーが気になるようで、時々仲間と彼女を呼び出してお茶会をしている。

 マイナリーと付き合うなら、母と妹を突破する必要があるので困難が待ち受けそうだ。


 ……マイナリーは結婚できるのだろうか?


 わりと絆されやすいから、アルバートの涙とか土下座とか見るとチョロそうだ。

 腹黒なら気づくだろう。


 それもどうかと思うけどね。


 そして学生時代に、メロディが振った美形ではない彼マロンは、騎士団に所属する肉体派の次期伯爵である。


 あの当時は、彼も顔でメロディに求婚していた。


 しかしマロンの父が例の教会に寄付に行った際、子供達と遊ぶ彼女を見て微笑ましく思ったことを話すと、彼の気持ちが再燃した。


 今の伯爵家は借金もなく、マイナリーが女伯爵となり評判も良い。

 領地は以前からアメルダ夫人が援助していて、大地の実りも豊富だ。その二人と仲が良いとも聞く。


 そんなことを考えながら教会へ足を運ぶと、シスターになったメロディが子供達に勉強を真剣に教えていた。


 彼はもう顔だけではなく、その人柄に好意を寄せた。


 その後仕事の合間に、孤児に勉強を教えるボランティアをするようになったマロン。

 メロディとも会話する仲になったが、恋愛には発展していない。


 けれど、夕御飯に誘えば快諾してくれるので、少しくらいは気を許してくれていると思う(勿論二人きりではないが)。


 彼女は美人と言うだけで、競争率が高くなっていた。


 でも今のメロディは、父サンダーとハーディーの件で、美形に嫌気がさしている。


 彼女の中で、義母アメルダは恋愛の反面教師になっている。同じ轍は踏んではいけないと。



 なので武骨で正直なマロンは、わりと結婚の有力候補なのだった。



(※この世界は、神父もシスターも結婚できますよ)






6/6 9時 日間ヒューマンドラマ(短編) 15位でした。

ありがとうございます(*^^*) 

16時 10位でした。ありがとうございます(*^^*)♪


6/7 9時 日間ヒューマンドラマ(短編) 4位でした。

ありがとうございます(*´▽`*)♪♪ ヤッター♪

23時 なんと3位に。ありがとうございます( ´∀`)♪♪

嬉しいです( ≧∀≦)ノ♪♪♪


6/8 9時 日間ヒューマンドラマ (すべて) 2位でした。

たくさんの人が読んでくれて嬉しいです(*´▽`*)♪♪

ありがとうございます♪ 

日間総合 (すべて)でも、15位でした♪(*´▽`*)

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― 新着の感想 ―
[一言] 残念なサンダーさん。 でも借金してでも平等に同じものを渡す太っ腹さは、キャバでいういわゆる『それなりにモテる太客』だと思う。 主人公の元婚約者は『モテない太客』やね。 性格も頭も底辺では無…
[良い点] 優しい世界だと感じた [一言] サンダーはやれば出来る奴だったみたいだけど、そういう奴ほどやらないから出来ない奴なんだ。誰かがやらせなければならない。真っ当に元鞘に戻りそうだけどその後は安…
[良い点] メロディちゃんが、“自分で”自分を顧みて改心、と言うか改善したところ [一言] まぁつまりはアメ(雨)ルダとサンダー(雷)は、破れ鍋に綴じ蓋な関係と言うかなんというか……。
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