花奉げ後の帰り道
粘り気のあるどろっとしている液体があたり一面を覆っている中、
紅い道が中央の絵画へと続く。
母たる彼女が永遠の眠りについた時の絵画。
いまだ汚染されていない唯一の場所。
その前に跪き、彼女は祈った。
そして、花々を捧げた。
はてさて、彼女は何をささげたか。
悲しき思い出の黄色い彼岸花か?
否。
呪いを表す黒百合か?
否!!
彼女が奉げた花は、
いずれ遠き未来に訪れる再会を楽しみに想う優しき白き彼岸花と、
その心の高貴さを表す力強き白百合。
それらの花弁が床一面にあった液体に触れた瞬間、
教会が本来の姿を取り戻した。
残るのは等身大になった禍々しいソレのみ。
その傍らには、
二匹の蝙蝠。
紅い影は教会の屋根から優雅に降り立ち、
扉から出てきた彼女の目の前に行き、
瞳を愉快そうに細めながら、優しい笑顔を浮かべ、
『良いのか?このチャンスを逃すと次はないかもしれないぞ?』
と、言った。
その問いかけに彼女は答えず、
瞳を一瞬さまよわせた後、
まるで後ろから軽く押された様に一歩を踏み出し、
帰路へと急いだ。
ふわり、と。
吹いた風と共にかすかに聞こえたのは
《行きなさい。》《行け。》
という言葉。
『いやはや残念だ。』
彼女の後姿を見ながら、
まるで残念そうでない口調で影は言う。
二匹の蝙蝠をなでながら。
『だがまあ……人は何時までも加護の中に居るわけではない。
今回のあれは気まぐれゆえの奇跡。
それに……』
一瞬の揺らぎ、刹那の後悔。
それらを見逃す影ではない。
『なあに、また次があるさ。
なにせ人は欲深い生き物なのだから。
なあ?
今回の出来事で逢うことができたんだ。
同じ条件を達成したら逢えるかもって考えるのが普通だよなあ?』
美しき笑みを浮かべ、ソレらはまるで蝋燭の火のように掻き消えた。
このお話を読んだ皆々様方。
あなた方の住むところに風習はございますかな?
もしもあるのでしたら破らぬことをお勧めいたします。
なにせ一度魅入られたら……
なかなか飽きてくださいませんから、ねぇ?
こちらで終わりとさせていただきます。
皆々様方、
お後がよろしいようで……←書いてみたかっただけ。
感想お待ちしております!(ぺこり)
(ちなみにギフトは
英語で贈り物
ドイツ語では毒
という意味なんですよ)