表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/182

2-15EP 錬金術師の養子縁組



「まんまと嵌められちまうとはお前らしくもない」

 侯爵邸の書斎に、リカルド元将軍の呆れ声が響く。

「面目次第もありません」

 元将軍の正面に座るヴィクトルは、怒られた子どものように素直に謝った。

(どうして私はここにいるのだろう)

 ドレス姿でヴィクトルの隣に座りながら思う。


 無事アリオスに、侯爵邸に帰ってきて、休憩もそこそこに着替えさせられ書斎に放り込まれた。

 中にいるのはリカルド元将軍と、ヴィクトルと、ノアの三人だけ。同席している自分が場違いに思えて仕方がない。

(それにしても、ずいぶん親しいなぁ)

 ヴィクトルとリカルド元将軍の間に流れる雰囲気は、遠慮も飾りもない。かなり長い付き合いなのだろうということが伝わってくる。


「で、こちらのお嬢さんがそうなのか」

 鋭い視線がノアに向けられる。思わず息を飲む。

「はい」

「このお嬢さんを養女にか……よしわかった。よろしくな、我が娘よ」

「えっ?」

 話についていけず、間の抜けた声が出る。

(養女? どういうこと?)


「なんだ、話してないのか。肝心なことを話さねぇのは親父そっくりだな」

 ヴィクトルを睨むが、後ろ暗いことが満載なのかこちらと視線を合わせようとしない。

 この男はノアが婚約者役を承諾する前から、貴族との養子縁組の話を進めていたということだ。

「まあ養女と言っても書面の上だけだ。安心しな」


 確かに侯爵の婚約者となれば、ある程度の身分は必要だ。身分を持たないなら貴族の養子にする、という段取りが必要になってくる。当然のことだ。理解できる。理屈では。

 それにしても順番が違うのではないか。

 以前なら、ここで立ち上がって部屋から出て行っていたところだが。


「お世話になります。お義父様」

 込み上げる感情をすべて飲み込み、頭を下げる。

 もう決めたことだ。

 帝都に行くことは、もう決めたこと。この時代、この国の中で、錬金術で何が行われているのか、知りたい。それに婚約者という立場なら、ヴィクトルのそばにいても自然だ。自然な近さで守ることができる。


「おう。なんだかくすぐってえな」

 リカルド元将軍は破顔する。迫力はあるがどこか愛嬌のある、安心できる雰囲気に、ノアもつられて微笑んだ。


 ――本当ならここで、本物の家族のことを思い出すべきなのだろうが。

 父の顔も、母の顔も、いまはもうほとんど思い出せない。

 この時代に来てまだほとんど時間が経っていないのに、薄情なものだと思う。

(そもそも思い出自体がなかったか……)

 王太子との婚約がなかったことになったとき。その時から両親は妹のことばかりで、ノアも錬金術のことばかりで。家族としての関わりなどなくなっていた。




「感謝いたします。将軍」

「もう将軍じゃねぇよ。ったくお前らときたら」

「私にとって将軍は将軍ですので」

 リカルド元将軍は苦い表情を浮かべ、頬をかく。

「まあ向こうは古参貴族とつるんでやがるから、お前は軍や新興貴族を味方につけるしかねぇんだがな」


 リカルド元将軍のその言葉でやっと気づいた。

 ヴィクトルは戦争をする気だと。

 直接武力をぶつけ合うのではなく、政敵と政争を起こすつもりだ。いや、おそらくずっと前から戦いは続いている。

 この養子縁組も。

 この婚約も。

 元将軍と縁を繋ぎ、軍との繋がりを周りに示すため。


(ちょっと待って……)

 ノアはただヴィクトルを危険から守りたいだけ。錬金術のことを知りたいだけ。

 なのに、どうしてこんな。帝国内の貴族の争いに巻き込まれようとしているのだろう。

(ううん、力をつけるのは普通のこと……潰されないために政治力や軍事力、経済力を高めるのは普通のこと……)

 自分に言い聞かせる。これが普通のことなのだと。

 しかし漂う雰囲気が物騒すぎる。


「俺の過去の名声とやらがまだ残ってるなら、好きに使え。どうせ俺の爵位は一代限り。血縁もいねぇし、誰にも迷惑はかからんしな。それにここで力を貸さなかったら、天国であいつに怒られる」

 厳しい声に、一瞬だけ優しさが混じる。愛しいものを思う声が。

「忘れるなよヴィクトル・フローゼン。軍も貴族も、民も、忠誠を捧げるのは皇帝陛下ただおひとりだ」

「もちろん心得ています。私が剣を捧げるのは、皇帝陛下ただおひとり」



 ――いますぐここから飛び出して、誰も知らない場所に引きこもりたい。




第二章完





こちらで第二章終了です。

読んでくださりありがとうございました!

第三章は3月中に開始予定です。もう少しだけお待ち下さい。


もし少しでも楽しんでいただけていたらブックマークや広告の下の評価ボタン(★★★★★)で応援いただけると嬉しいです。


よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


次にくるライトノベル大賞2023にノミネートされました!!
「捨てられた聖女はダンジョンで覚醒しました」に清き一票をよろしくお願いいたします!!
sute01tugirano.jpg



書籍発売中です
著者サイトで単行本小話配信中です!

horobi600a.jpg

どうぞよろしくお願いします



◆◆◆ コミカライズ配信中です ◆◆◆

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ