第六十七話「テツの心と信じたい」
九死に一生を得たオクマーマであるが、一つわからないことがあった。
「でも~。どうしてオクマーマが死ぬ寸前のタイミングで、この人工鉱石が発動したんでちょうか? シンパチおじいちゃん」
「そうじゃのう。この親機に念波が届かなくなったら、数時間後にこの予備の人工鉱石が自動発動するようになっていたのじゃろうか……。そうではなく、単になんらかの偶発的なトラブルで、たまたま奇跡的にそのタイミングで発動しただけじゃろうか。色々な可能性がありますじゃの」
「そうっちゅか」
「もしくは……。悪の所長が、自分が死んででも道連れにテロを敢行しようと、時間差で念波兵器を再発動させるつもりだったんじゃろうか……。死の直前に、発動タイマーのスイッチを『悪の執念』で入れたのかもしれませんじゃ」
「もしそうだったら、オクマーマが助かったのは……皮肉っちゅ。でもシンパチおじいちゃんが子機を回収してくれたおかげで、時間差テロはどっちにしろ防げていたっちゅ」
「ワシも最後まで諦めなかったことが、もしかしたら効いたかもしれんの。自分がやれるだけのことをやったのは、決して無駄じゃなかったんじゃな」
「ありがとうっちゅ、シンパチおじいちゃん!」
「あと、その説とは逆に……。本来の善良所長の人格が表に出ていた時、オクマーマちゃんを助けるつもりで発動スイッチを入れた可能性もありえますじゃよ。オクマーマちゃんを火口の外に投げ出した時、最後の力を振り絞って……」
「でも、それでオクマーマを助けても……念波兵器まで一緒に再発させちゃうようなことを、本来のパパなら絶対しないはずっちゅ」
「確かにその通りじゃ。じゃが、もしもじゃよ。一度チャージして不発した子機は、その後また念波を再チャージしても殺人念波を放てない『使い捨て仕様』になってたとしたら、どうじゃ? 例えば、念波兵器の開発中に……所長の善人格が悪人格の隙をついてバレないように表に出て、兵器に細工を加えていたとか……」
「なるほどっちゅ」
「じゃが、それで細工したのが悪人格の方にバレてしまうと、悪人格がまた兵器を作り直して意味がないからの。バレるような大改造では、悪人格に戻った時すぐバレてしまうはずじゃし。そもそも善人格が表に出ていられるのは、かなりの短時間しか無理じゃろうて」
「じゃあ、もし善良パパがそんなふうに表に出られた時があったら~。その短時間で、せめて自分のやれるだけのことを必死にやった可能性があるかもしれないっちゅね?」
「そうじゃの。悪人格が人工鉱石の開発に成功してしまい、それを親機の中に予備として入れたことは善人格の所長も知ってたじゃろうから……」
「もし、そうだったら~。最初の一発さえなんとか不発に出来れば、兵器はその時点で無力化しまちゅ。悪人格パパが万が一の失敗に備えて、親機の中に予備の人工鉱石を用意しておいたところで意味がなくなることを……善良パパだけが知っていたことになるっちゅね⁉」
「じゃがまあそれは、あくまで多数考えられる仮説の中の一例に過ぎませんじゃ。結局、所長が亡くなってしまった以上……人工鉱石の発動理由は、誰にもわからない謎のままじゃ」
「現実は、シビアっちゅ。悪人格パパによる悪意の発動だったり、単なる偶然で発動しちゃっただけなのかもしれないっちゅ……。でも、オクマーマは……。一緒に火口へ落ちていく時、善良パパが『もうこの兵器は念波が復活しても発動しない』と知っていて、最後にオクマーマだけでもなんとか助かることにかけてくれたという、その説を……。例え、実際はそうじゃなかったとしても……そう、信じたいっちゅ」
「ところでオクマーマちゃん。もうこの人工念波鉱石は、オクマーマちゃんの体の中に入れておくのが色んな意味で一番良いと思うんじゃが。どうじゃな?」
「オクマーマの、体内にっちゅか?」
「そうじゃ。所長の作った念波関連のものは、すでに解体されたり無力化したり行方不明になったりしてしまいましたじゃ。それに、所長以外ですぐ念波機器を新しく作れる者も存在しないからのう。もはや現時点でこの念波を利用しているのは、実質的にオクマーマちゃんだけしかおらぬのじゃ」
「そうっちゅか。わかったっちゅ、シンパチおじいちゃん!」
「よ~し! じゃあ、どうやって体内に入れようかのう……」
「こうすれば、簡単っちゅ」
オクマーマは斉田博士に、オクマーマミサイルのハッチを開いてみせた。そこにはミサイルの発射口とは別の、小物を入れられるような収納箇所も付けられていた。これはアニメ版のカタイナーにはない超合金カタイナー独特の仕様であったが、オクマーマにとっては逆に都合の良い存在となるのであった。
「おお~っ! さすがは、融合度の訓練を欠かさない努力家のオクマーマちゃんじゃ。それじゃ、ここに人工鉱石を入れておくからの」
早速、オクマーマに人工鉱石をはめ込む斉田博士。
「これで~。オクマーマのポンポンに、人工鉱石が入ったっちゅ。安心っちゅ」
「この人工鉱石は、良かれ悪しかれ……少なくとも、所長が運命的にオクマーマちゃんに残した命とも言えるものじゃな」
「この鉱石は、パパの温もりだと思って大事にしまちゅ。ありがとうっちゅ……パパ!」




