第六十五話「暗闇からの贈り物」
誰もいない、静かな日暮れ前。
草花に囲まれた静寂の中、マユミの泣き声だけが虚しく響く。
「うわあああああああああん!!」
その時である。
火口付近の浅い土中には『念波兵器の親機』が、そのまま埋められたままであった。もはやエネルギーを送る先の子機も存在せず、念波自体の供給もなくなり動作も停止している。すでに兵器としては完全に無力化され、親機単体では存在した所で意味のない『単なる無用の長物』と化しているはずであった。
そんな土中の暗闇に包まれた親機の中で今、一つの物体が発光を開始する――。
ほとんどツルツルな肌触りになっていたオクマーマの体に、ギュッと顔を埋めたまま泣いていたマユミは――なぜか突然、オクマーマのモフモフとした肌触りが蘇ってきたような感触を受け始めたのだ!
「…………⁉」
驚いたマユミが、思わず顔を上げると……。ほぼノッペラボウ人形の姿になりかかっていた状態から、みるみると元のオクマーマの姿へと戻ってきているではないか!
「ああっ! オ、オクマちゃんがっ!」
そしてついに、元々の綺麗な姿にまで完全復元されるオクマーマ!
「…………⁉ あっ……。マ、マユミおねーちゃん……。オクマーマは……なぜか、死ななかったっちゅ……。どうしてでちょう……」
「オ、オクマちゃんっ! 良かったぁぁぁーーーっ!」
瞳にあふれていた涙が嬉し涙の笑顔となり、回復したオクマーマの顔を頬におもいっきり擦りつけて大歓喜するマユミ。
「もう二度と、こんな悲しい思いはさせないでっ、オクマちゃんっ! もう離さないんだからあっ!」
「マ、マユミおねーちゃん……。そんなに顔を押しつけたら、またオクマーマの顔が細長くなっちゃいまちゅよ。ふふう~っ」
細長い顔になりながら、とても嬉しそうな声で答えるオクマーマ。マユミの温かさを再び肌で感じ取ることが出来て、心から安堵するのであった。
間違いなく死ぬ寸前だったはずのオクマーマが突然蘇った、その理由とは――。
「オクマーマがどうして死ななかったか、完全回復出来た今やっとわかりまちた。念波鉱石は、完全に壊れたはずっちゅ。なのに、なぜかまた違う感じの……別な鉱石反応が蘇ってるのを感じまちゅ。多分、そのおかげで助かったっちゅ」
「そっ、そうなのっ⁉ でも、もし別の鉱石がもう一つあったとして、そこからまた念波が出され始めたのたら……オクマちゃんは助かっても、テロ兵器もまた発動しちゃわない⁉」
「全国に配置されていた子機が、すでに除去されてまちゅから……。とりあえず、大危機は防がれてまちゅ」
「あっ、そうだったわね!」
「研究所の副所長だった、シンパチおじいちゃんのおかげっちゅ」
「じゃあ……大規模テロを防げた上に、オクマちゃんも奇跡的に助かったのねっ! 運命の神様、ありがとう!」
「でも~。とりあえず、すぐに新しい鉱石っぽい物のある場所へ確認に行ってみまちゅ。オクマーマはこの通り、もう完全に大丈夫っちゅ! マユミおねーちゃんは、先に施設へ戻っていてくだちゃい」
「わかったわ、オクマちゃん。でも、さっきまで本当に死ぬ寸前だったんだからぁ……無理しないで。気をつけてね!」
「わかったっちゅ。オクマーマ・レーダー! ……あっ! 新しい鉱石反応は、オクマーマが昼頃までいた火口付近に感じまちゅ。やっぱりあそこに、なにかあったみたいっちゅ!」
復活したオクマーマはマユミの腕から空へ飛び立ち、再び火山へ向かうのであった――。
そして、すでに暗くなった火山へ再び到着したオクマーマ。
「レーダーでは、この辺りに埋まってるようっちゅ。オクマーマ・ドリル!」
頭からドリルを出したオクマーマは、自分の体をスピンさせてなんとか地面を掘り始める。するとすぐに、浅い深度でドリルの先端がカツンと物体にブチ当たっていた。
「あっ! なにか、鉄箱のような物が埋めてありまちゅ。掘り出しまちょう。い~っちょっ、い~ちょっ……」
オクマーマは、必死に念波兵器の親機を掘り出すのであった。
「意外と小さい箱っちゅ。この中に、壊したのとは別な念波鉱石の反応がありまちゅ……。とりあえず、シンパチおじいちゃんに見てもらいまちゅ」
オクマーマにとっては、図らずも自分の命を救う『暗闇からの贈り物』になってしまった念波兵器の親機。それを懐に抱え、斉田博士の元へ飛んで行くのであった。




