表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/71

第六十二話「さらば! 正義の志士」


          挿絵(By みてみん)



 マグマの高熱で、オクマーマがついに発火しそうになったその時――サイボーグテツに異変が! 


「ウッ⁉ こっ、こんなところで、また体がっ! やっ、やめろーっ!」


 ここで再び本来の善良テツが、サイボーグテツの悪人格を必死に抑えて表に出現したのである! 


「おっ、お前だけは! 最後まで、希望を捨てるなっ!」


 善良テツの人格はそう叫びながら、発火寸前だったオクマーマの体を火口外へ大きく投げ上げるのであった。


「ああっ、所長ちゃんっ!」


 空中へ高々と投げられたオクマーマからは、本来のやさしい微笑みで火口のマグマの中へ落下していくテツが――どんどん小さくなっていくのが見えるのであった。


「パパーーーッ!」

「これでいい……。悪に改造された俺を、倒してくれてありがとう……」


 正義の志士であった、本来の大和テツ。

 最後にやれるだけのことをやり切ると、そのまま悪人格に飲み込まれるのであった。


「ど、どうして俺の中に……あんなもう一つの人格があったんだっ! おっ、俺はっ、俺はザラス団の指揮官・天才科学者サイボーグテツだあっ! 俺はっ、世の中の自己中で欲まみれな愚民どもをっ、愚民どもをっ……うっ、うわああああああーーーーーーっ!」


 サイボーグテツの体は、マグマの中へと静かに消えていくのであった――。





 そして高く投げ出されたオクマーマは、火口の外に飛び出して倒れ落ちていた。


「ウウウッ……。所長ちゃんは……パパは……悪人に改造されていても、善良な心が最後は打ち勝ったっちゅ……。パパ……」


 必死に起き上がるオクマーマだが、体はボロボロで煙も立ち込めたままである。念波の供給源である鉱石はすでになく、もう一切の回復が出来ない。そして体内に残った念波エネルギーも、あと数時間で尽きてしまうのだ。


「せっかく助けてもらった、残り数時間の命っちゅ。この体からリンク切れした魂が解放されて、オクマーマの自我が完全消滅しちゃう前に……。マユミおねーちゃんに会いたいっちゅ……」


 オクマーマは、その辺に落ちていた木の棒を杖にして立ち上がった。そして『せめてマユミに一目だけでも会ってから死にたい』という思いだけで、ヨロヨロと必死に歩み始めるのであった。


「マユミおねーちゃんは……。今日、植物散策に行ってるはずっちゅ。あそこなら、ここから歩いても夕方までにはギリギリ間に合う距離っちゅ。日が暮れる前までに着けば、まだそこにいるかもしれまちぇん……」


 ボロボロのオクマーマは杖をつきつき、そこにまだマユミがいて会えることだけを信じて――最後の力を振り絞り、必死に歩いて行くのであった。




 それから数時間後。

 歩み続けたボロボロのオクマーマは、なんとか日暮れ前に現地へ到達していた。


 すると、まだ帰宅せず大木の前で植物採取をしていたマユミの姿が! 


(あっ! マ、マユミおねーちゃん!)


 しかし満身創痍で、念波エネルギーも残り僅かなオクマーマ。

 大声で叫ぶことも出来ず、もはやマトモに動けない状態となってしまうのであった。


(もう日暮れが近いし、そろそろ帰らないとマズイかな~。 ……ん? こんな誰もいない場所なのに、なんだか焚火のような匂いが……)


 なんとなく焦げたような匂いを後方に感じ、ふと振り返ったマユミの目には――木の枝を杖にして、震えながら必死に立っているオクマーマの姿が!


「あああっ⁉ オ、オクマちゃんっ! どうしてここにっ⁉ そ、それにっ、酷いケガ!」


 ヨロヨロのオクマーマの元へ、すぐさま駆け寄るマユミ。


「マ、マユミおねーちゃん……」


 オクマーマはマユミがそばへ駆け寄ると同時に、その場にバタリと倒れるのであった……。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ