第五十七話「宿命の対決! サイボーグテツ対オクマーマ」
昼夜休まず空を飛びながら、自分のレーダーを頼りに鉱石の場所へだんだん近寄ってゆくオクマーマ。飛行可能になったとはいえ、スピードはゆっくりの巡航速度であり速くは飛べないのだ。場所が頻繁に移動する鉱石の場所にかなり接近した時は、タイムリミット当日の早朝であった――。
「今日が、テロの実行予定日っちゅ。でもさっき、鉱石の動きが急に一つの場所で止まったっちゅ。これで、場所はもう完全にわかりまちた! チャージが完了するのは昼頃っちゅから、それまでに防がないといけまちぇん。急ぎまちょう!」
オクマーマが特定した鉱石の場所は、とある火山の火口付近であった。そこはもちろん、ザラス団によって念波兵器の親機が埋設された火山である。そこに指揮官のサイボーグテツが、朝からすでに出向いていたのだ。
「フッフッフ。ついに、この天才の俺が作った念波兵器を大発動させる日が到来した! 昼頃になればちょうど丸一週間、そこで念波エネルギーのチャージも完了するであろう」
体内に鉱石を持っているサイボーグテツは、兵器発動の際に親機の至近距離にいる必要がある。そして万が一のイレギュラーが起こらないよう、監視も兼ねて現場の火口に来ていたのである。彼だけは念波兵器に対するバリアも持っており、殺人念波の発動時に外へ出ていても問題がないのだ。
そんなサイボーグテツの待つ火山火口へ、ついに到着するオクマーマ。
「ここが、鉱石のある場所で間違いないっちゅ。火山のようっちゅが……。あっ! あそこに誰かいまちゅ! レーダーでは、あの人が鉱石を持ってまちゅ!」
火口付近に立っているサイボーグテツの元に、降下して飛来するオクマーマ!
「うんっ? この俺の念波探知機能に反応がっ! だっ、誰だっ!?」
オクマーマの接近に気が付き、振り向くサイボーグテツ!
「あっ! テロを予告してきた、所長ちゃんに似ている指揮官っちゅ!」
振り返ったサイボーグテツと数メートル離れた位置に、空中浮遊したまま静止するオクマーマ。
「おっ、お前はっ⁉ まさか……念波ロボだとっ! 念波ロボは、現状この世に一体も存在していなかったはず……。それが、どうして念波ロボが存在しているのだっ⁉」
「そうっちゅ! 念波ロボ・オクマーマっちゅ! ザラス団の、テロを予告してきた指揮官っちゅねっ⁉ まっ、まさか本当に、大和テツ所長ちゃん本人なんでちゅかっ⁉」
「なに~っ、大和テツだと⁉ 昔の名前はそんな名前だったらしいが、そんなものはとっくに捨てたわ! 今の俺はザラス団の指揮官、念波の天才・サイボーグテツ様だあああ!」
(じゃ、じゃあ……やっぱり、この指揮官は……ザラス団によって改造された、所長ちゃん本人だったんっちゅかっ! ウウウッ……)
ザラス団の手先になっていたのは、やはりテツ本人が改造された姿だったと知り悲しむオクマーマであった。
「所長ちゃんっ! 本当の所長ちゃんは、こんなことをするザラス団とは正反対の正義漢だったはずっちゅ! やめてくだちゃいっ!」
必死に訴えるオクマーマ。
その姿を見たサイボーグテツは――なぜか、どこかで見たような記憶がなんとなくフラッシュバックするのであった。
(そ、そういえば……。こ、この……青いリボンの付いたクマの姿は……。どこかで……。ウウッ、またあのボロ屋のイメージが浮かぶっ! 女と赤子の、明るい笑顔に……こっ、このクマの姿も一緒に……。どうしたんだ俺は……。ウウウウウッ! 頭が痛いっ……)
自分でもわからないが、オクマーマの姿がなぜか記憶の底にあるような感覚を覚えたサイボーグテツ。激しく苛立つものの、それを振り払うかのように言い放つ。
「ええいっ、うるさいっ! お前がなんと言おうが、人々の命はもう風前の灯だ! 手始めにこの国を壊滅させ、ここを拠点に全世界も壊滅だ! 世界は、ザラス団のものだあああ!」
「所長ちゃんっ! これほど言っても聞いてくれないっちゅかっ! なら、例え所長ちゃんが相手でも……罪もない人々を救うため、オクマーマが力づくでも止めまちゅっ!」
「それにしても、まさかお前のような念波ロボが存在するとはな。おそらく鉱石の位置探ってここに来たのだろうが、お前の存在だけが俺の誤算だった。だがお前が来たところで、この俺を止めることなど不可能だっ! 無駄な抵抗はやめろ!」
「無駄じゃないっちゅ! オクマーマ・レーダー!」
オクマーマの輪郭が発光する。
(鉱石は、所長ちゃんの胸の奥にハメ込んでありまちゅ。ここから鉱石だけ取り出して奪うのは、まず無理っちゅ……。それでもまず、諦めずに奪回からチャレンジしてみるっちゅ!)
サイボーグテツに向かって、飛び込んでいくオクマーマ!




